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第四章 ファイナル・イベント

飛空艇を手に入れる為、ミラ祭りのイベント“ジチ・フージンの七つ道具”を探すイベントに参加したクロンとセリア。途中、リオーナという少女のおかげで六つまで揃えた。最後の一つは、中央広場にあるという謎の男の言葉を信じ、クロン達は中央広場へと向かった。

第四章 ファイナル・イベント


 あの謎の男の言う通りに中央広場へ向かうと、クロン達はすぐさま違和感に気付いた。イベントの始めの時よりも、明らかに多くの人々が集まっているのである。イベントに参加していた人々もちらほらと見受けられる。

「どうやら‥嘘ではなかったようね」

 中央広場にまだ続々と人々が集まって行く様子を眺めながら、リオーナは冷静に呟いた。どうも、祭りが終わりに近づき、店閉まいした出店や商店街の人々も見物客として来ているらしい。

「とにかく、広場のイベント会場に行ってみよう」

 人々が行き交うのが困難になる程、会場は人でごった返しになっていた。何とか、人混みを掻き分け、イベント会場の少し手前に着いた時には、再びあの司会者が喋り出す時だった。

「えー!紳士、淑女の皆様。まずは、この度のミラ祭にお集まり頂き有難う御座います。今年度は例年に例を見ない程の集客になり、祭りも大盛況となりました。私フラム、町長としても感慨深いです」

 すでに空は夕暮れを通り過ぎ、夜の帳が静かに近づいており、街の明りが煌々と煌めいてきていた。イベント会場も光の魔晶石で作られたライトに照らされ、むしろ昼間よりも眩しいくらいになっていた。

「‥司会者のアイツって町長だった‥‥か?」

「さぁ‥普段、気にした事もないし‥‥」

 街に住み始めて、幾度の年を過ごしてきた筈のクロンとセリアだったが、初めて町長の存在を知り今までの生活の記憶を思い返したが思い当らず、お互いの頭に疑問が踊った。しかし、それに構わず町長と名乗った司会者は進行を続ける。

「さて、そろそろこの盛大な祭りのフィナーレ・イベントへ移ります。ここに集まった皆様はご存じでしょうか?本日の昼頃、この中央広場で“ジチ・フージン”が使っていたとされる“七つ道具”の宝探しイベントが行われていました。この街に住むなら誰しもが知っている、あの“ジチ・フージンの七つ道具”。“無量の水差し”、―」

 場を盛り上げる為に、司会者が昼のイベントを知らない観客にも分かるように説明を始めた頃、辺りを見回していたクロンは不意に声を上げた。

「セリア、リオーナ!アイツがいた」

「えっ!?どこ、どこ」

「会場のすぐ横だ。左の方の!」

 セリアに聞かれ、クロンは自分が見ている方向を指さす。会場の回りは大混雑しており顔までなかなか判別出来ないものの、セリアは指さされた方向へ目を向けるとあの謎の男の服装が目に止まった。

「“峰墾の斧”‥‥そして、最後に“不滅石”‥これらが七つ道具になりますが、最後の“不滅石”。これだけは謎の謂われがあったのをお忘れではないでしょうか?」

「ん‥?」

 男に近づこうとしていたクロン達であったが、司会者からの意外な発言を耳にし早足で進んでいた足の動きを止めた。

「‥謂われなんて‥‥あったか?」

「ううん、私知らない」

「‥‥‥」

 衝撃を受けたのはクロン達だけではないようだった。会場中にどよめきの声が上がっている。

「“‥全ての真実を知りし者、久遠の理を手に入れん‥”この一節を知っている方は恐らく、あまりいらっしゃらない事でしょう。学者でもない限り、知る機会もないですからね‥しかし、このミラ祭ではこの謂われに則り、最後の七つ道具である“不滅石”を栄えある優勝者に渡したいと考えております!」

 町長が盛り上げる為に後半部分の声量を上げると、それに応えて会場全体も沸いた。

「よって、七つ道具の内、六つまで集められた参加者の方はステージ脇まで来て下さい!これから最終イベントを始めます。半刻以内に、こちらのステージへお願いします。繰り返します‥」

「おい、やべぇぞ!急いで、ステージに行くぞ!」

 いきなりの招集にクロン達は慌てて人混みを掻き分け、ステージへと向かう。だが、その途中―

「おっと、悪い!こっちはステージに行かなきゃなんねーんだ!ちょっと退いてくれー」

「こっちも急いでんだ!道を開けてくれよ!」

 大混雑した中央広場の中で、クロンは誰かとぶつかり合った。相手の方を見ると、街では見かけない逆立った金髪の髪型の青年だった。金髪の青年もまじまじとクロンを見た。青年が七つ道具の内の幾つかを持っているのを見て、クロンは思わず訊ねた。

「ん?ひょっとして、アンタも参加者か?」

「ってぇ事はテメェもか‥なら、負けねー!ステージに行くのはオレ達だっ!」

 青年はそう言うなり、人だかりを蹴散らす様にステージへと突っ走って行ってしまった。

「‥一体、何だったの?」

 クロンと青年のやり取りを少し後ろから見ていたセリアは、半ば呆れたように呟いていると、傍らに眼鏡をかけた茶髪の青年がやって来た。

「いやー、すみません。どうやら、僕の連れが失礼したようで‥‥彼、いつもあんな調子なもので‥」

「おーい!さっさと来いよ、エモン!」

 茶髪の青年がクロン達に先程の金髪の青年の行為を詫びていると、その本人が眼鏡の彼を人混みの中から呼びかけた。エモンと呼ばれた青年は、ではと軽く会釈すると金髪の青年の跡を追っていった。

「ほら、クロン。私達も早く行かないと!」

「お、おう。そうだな」

 クロン達も彼らに続けて、中央広場へと向かう―




結局、“七つ道具”の内の六つを持ってきたのは、ここを教えた謎の男、金髪の青年と茶髪の青年の二人組、そして大層な顎鬚を生やした体格のいい老人の男性とクロン達だけだった。

各参加者には机と椅子が配られ、机の上には魔晶石が使われたベルが置かれている。

「さぁ!今、ここに!七つの内の六つを集めた、参加者が揃いましたー!盛り上げる為にも、参加者の方々には簡単な自己紹介をしてもらいましょう!」

 町長はそういうと、魔晶拡声器を取り出した。それを例の謎の男の方へと持っていき、男に手渡した。渡された男は乗り気じゃないといった様子だったが、少し溜め息を吐くと拡声器を構えた。

「おれは、バナード。見ての通り、各地を放浪している旅人さ‥以上」

 簡潔な自己紹介ではあったが、会場からは拍手やら歓迎の野次を飛ぶ。

「渋い、シブ過ぎる!バナード!歳相応のオーラが迸っております。続きましては‥こちらの二人!」

次に手渡されたのは、先程の青年の二人組であった。

「オレはフォン・ベル・ヴェート。こっちはエモン・レノ・アームス。立ち寄ったついでに、このイベントに参加した。参加する以上は、飛空艇はオレ達が頂く!」

 フォンと名乗った金髪の青年の啖呵にギャラリーは一際大きく歓声を上げる。

「‥‥へぇ‥」

「‥っ‥‥」

 だが、その中には僅かなどよめきや、はっと驚いたような表情の観客が幾人か見て取れた。ステージにもその観客達と同じように、一瞬顔を強張らせた者達がいた事をその場にいた人々は気付かなかった。

「若いだけあって、啖呵も立派なものですねぇ!お次も若い三人組だぁ!」

 そうして、クロン達の番が回ってきた。

「やっぱ、おれが喋るんだよな‥?」

ステージの周りを覆い尽くす観客。これ程の人数の前で喋るなど、滅多にない機会に柄にもなく緊張しているクロン。そんな彼を後押しするように、傍らの人物が背中を叩いた。

「胸張って、言うだけよ。頑張って」

 意外にも、背中を叩いた人物はリオーナだった。初めて見る優しげな眼差しに驚きつつも、その言葉が不安を拭い去ってゆくのを感じ、クロンは二人に頷いた。

「おれはクロン・レナード。こっちの二人はセリアとリオーナ。三人でやるからには、今回の飛空艇は何が何でも手に入れるつもりだ!」

 他の参加者に負けじと、クロンは意気揚々と宣言すると―

「いいぞおぉぉぉぉー!兄ちゃん!」

「負けんなよぉおおお!コラァ!!!」

「クロォォーーーン!女連れとはぁ羨ましいぞおぉぉ!!!この野郎!」

「頑張ってーー!」

 会場からは今までと同じ、いやそれ以上の大歓声が巻き起こる。

「こちらもなかなかいい啖呵だぁ!これはますます、盛り上がりそうだぁ」

 司会者である町長も場を盛り上げる為、会場の野次や歓声と共にマイクで声を張り上げる。その声と観客の声に紛れて、クロンは聞き覚えある声が聞こえた気がした。

「クロン‥今、アンタの店のマスターの声しなかった?」

「まぁ、確かに‥でも、放っておいても大丈夫だろ」

 セリアも聞こえたらしく、クロンに一応訊ねる。セリアに聞かれ、クロンは苦笑しながら面倒くさそうに首筋を掻きながら答える。その答え方にセリアも苦笑する。

「それも、そうね」

「さぁー、お次はいよいよ最後の参加者だぁー!どうぞー!」

 司会の町長は変わらずのテンションで最後の参加者にマイクを向ける。立派な顎鬚を生やした老人と言ってもいい男性はマイクを受け取るとのんびりとした口調で話し始めた。

「儂はブルグ・セラート。このエストリア国で軍人をしとる」

 男性の名がマイクで響き渡るのと同時に、観客達には今まで以上のざわめきが駆け抜けていった。観客の人達も互いに顔を合わせて話したり、目を瞠っていたりしている。

「おい、ブルグだってよ‥」

「ブルグで軍人て言ったら、ブルグ将軍しかいないじゃないっ!」

 老人はなにやらバツがわるそうに、頭を掻きながら続けてマイクで話した。

「あー、今回のイベントにはプライベートでの参加でな。孫がどうしても欲しい言うもんだから、参加してしまったわい。まぁ、そんな訳だから気を楽にしておいてくれ」

 ほれ、とブルグ将軍は町長にマイクを返した。しかし、町長は元の調子では話せなかった。

「ぶ、ブルグ将軍で在らせましたか‥!」

 声だけでなく、体も震えてしまっている。彼だけでない、クロン達も同じ心境だ。祭りの余興に自国の軍のトップが来訪するなど予想外であるのだから、無理もない。すると、

「何をしとる、町長。儂の事は一般人と同じ扱いでいいと言っとるだろ。態度も普通でなくては、祭りが儂のせいでシラケちまうじゃねーか」

 ブルグの将軍で町長はっと我に返ると、広場の周囲はざわめきが収まり始め、代わりに静けさが波紋のように広がり始めている。

「さ、さぁさぁーー!役者が揃った所で最終イベントの説明を始めますよー!」

 声が裏返りつつも、再び場を盛り上げるべく声を張り上げた。そんな中、

「‥‥何で、将軍がこんなとこに‥」

「ええ‥驚きすぎて、言葉が出てこない‥‥」

 クロンとセリアはブルグ将軍の登場に、二人とも言葉を失っているようだ。リオーナがそれを不思議に思い、二人に質問した。

「あのブルグ将軍って人‥そんなに偉い人なの?」

 リオーナの言葉に、セリアとクロンの二人は同時に畏れ多いと言った様子で首を激しく横に振り、

「偉いってもんじゃないわ!以前の幻魔騒乱の時に、この国の英雄と言われた程の人よ!?」

「幻魔騒乱の時に?」

 セリアの言葉を聞いても疑問が残っているような仕草をするリオーナに、クロンがさらに説明した。

「幻魔騒乱で突然、世界中に魔物が爆発的に増えたのは憶えてるだろ?その時、このミラを見捨てずに守ってくれた人なんだよ。だから、この街の人―いや、この国の人は皆、彼を英雄として慕っているのさ」

「そうなの‥あのお爺さんが‥」

 第一印象から何処となく堅気でない雰囲気が漂ってはいたが、こうして職種を聞いた直後に改めて見るとよく解る。一般人と同じ佇まいをしていようが、明らかに空気が違うのである。

 立ち振る舞いの時点で隙というものがない。穏やかな眼差しであろうとも、どこか鋭い光を宿している。そんな緊張感に満ちた空気を纏っていた。

「それでは、初めにもお話させて頂きましたが‥“全ての叡智を手にした者”のみが手にする事が出来ると言われた“不滅石”。それに基づき、ここの参加者には知識と智恵の比べ合いをして頂きます!」

 町長の言葉に会場中が騒然とする。ステージの周囲にいた観客だけでなく、ステージ上にいる参加者の多数は驚きが隠せなかったようだ。

「‥こいつはぁ、予想外だ‥‥」

「こりゃ、オレ等の勝ちは決まったようなもんだな!エモン!」

「ま、まさかのクイズ大会‥‥!?」

「うむむ‥‥」

 四者四様に驚いていた。町長は皆が少し落ち着くのを見計らうと、さらに話を続ける。

「ルールを説明しますと、ズバリ早押しクイズ!!‥手元にある、ベルを押して頂きます!問題途中であっても回答は可能。また複数人の参加の場合は押した人のみが回答できます。獲得した点数の最も高かった参加者を優勝とします!」

「こりゃぁ、優勝はオレらのもんかもなぁ。なぁ、エモン」

「分からないですよ、問題ではなくクイズですしね」

 フォンとエモンが意気揚々に話し合っている。どうやら、エモンという眼鏡をかけた青年は相当な知識があるらしい。辺りを見回すと、他の参加者―バナードとブルグ将軍も自信に満ちた顔をしている。

「私は歴史なら全般いけるけど‥クロンは?」

「おれは‥勉強がそこそこ‥」

「‥‥つまり、ダメってことね。そうゆう時はハッキリと言って。リオーナはどう?」

 二人に見つめられて、少し驚いたような顔をしたが直ぐにいつも冷静な表情になると、

「私は‥文化とかなら、少し‥」

「まぁ、アレだな。“やってみるまで、分からない”って事で行こうぜ」

 クロンがその場をまとめると、町長は各チームを見渡し準備が出来ている事を確認すると、会場に向かって、開始の合図を告げる。

「それではぁぁ‥ファイナル・イベント、スタァァ―――――トッ!!!」





すいません。。。大分、更新が遅れてしまいました‥!

ご不満の思った方もいらっしゃると思います。風邪で連載が遅れたのきっかけに出そう出そうと思い、日が過ぎてしまいました。ここからは、また前のペースで進めていきますので、これからもよろしくお願いします。

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