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カシューナッツはお好きでしょうか?  作者: ストレッサー将軍
第10章 『商店街の祭り② ~恋愛単細胞馬鹿~』
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97.カエデ


「…………」


 言葉を失った。少しだけ高いステージの上から私が見たのは、たくさんの人だかり。200……いや300人はいるだろうか? その人だかりを見た瞬間、アドレナリンがバッ! と出てきた。興奮した。昂った。それと同時に、感謝の気持ちが体中に溢れ、私は小さく震えた。


 無名の御当地新人アイドルのデビューライブに、こんなにもたくさんの人が集まるわけがない。きっと、ふけさんのおかげだ。私の知らないところで、ふけさんが必死に宣伝してくれたから、こんなにもたくさんの人が集まってくれたんだ。ふけさん、ありがとう。


「……それでは、暗黒豆腐のイメージキャラクター『暗黒豆腐少女』のライブをお楽しみください!」


 進行のアナウンサーが『暗黒豆腐少女』の説明を終えた。あとは曲が流れるのを待つだけ。ついに、私のアイドルとしてのデビューライブが始まる。そう思った私が、左手に握ったマイクを今一度強く握りなおしたその瞬間、


「ドーーーーーーーン!!! ドン、ドーーーーン!!」


 何事!!? と思うほどの爆音と光が頭上に広がった。 


 え? え?? え??? 何これ!? あ、あれ? 耳がキーンとなって、うまく聞こえない。どうしよう。音程がうまくとれないかもしれない……。どうしよう、どうしよう、どうしよう!!


「~♪♪♪♪♪~」


 イントロの音楽が流れたけれど、非常に聴きづらい。


「わーわー!! わーわー!!」


 さらに、花火で興奮した観客がわーわーわーわー叫んでいた。こんなにも本番のステージがうるさい環境だったなんて知らなかった。それに、夜だと地面も見にくい。自分の今いる位置もうまく把握できない。あぁ……どうしよう。こんな粗悪な環境の中、私はちゃんと歌えるだろうか? ちゃんと踊れるだろうか?


 私がそんな風に不安に思った時、観客席の前の方にいた豆腐屋『白角』の店長さんと目が合った。店長さんは「シテヤッタリ!」という顔で、大きくグッドサインを私に向かってしていた。


 まさか……“プレゼント”ってこれのことかぁあああ!!! てめぇ、また余計なことしやがってぇえええええ!!!! 私がそう思った瞬間、今度は別の“不穏な音”が聞こえてきた。


「ぎゅるるるるるるるるる!!!!????」


 この音は外部から聞こえる音ではない。内部から聞こえる不協和音。今になって、先ほど食べた『暗黒豆腐』がボディーブローの様に効いてきたのだ。


 う、うぅ……お腹痛い。でも、もうすぐい、イントロが終わる……。歌わなくちゃ……。


 耳が聞こえにくい。足もとも暗がりでおぼつかない。お腹が痛い…………最悪。でも、私はこのチャンス絶対に逃さない! 逃してなるものかぁああああああ!!


「私の心は真っ暗で まるで暗黒豆腐の様~♪」


 私は鬼気迫る表情で、必死にデビュー曲『地獄の愛は煮えたぎる』を歌い始めた。


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