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カシューナッツはお好きでしょうか?  作者: ストレッサー将軍
第10章 『商店街の祭り② ~恋愛単細胞馬鹿~』
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94.カエデ

『本日のメインイベント、『暗黒豆腐少女』のライブが10分後に始まります。みなさん、中央広場特設会場へ、ぜひいらしてください!』


 アナウンスが流れた。どれくらいの人が来てくれているのだろうか? 今いる舞台裏からでは確認できない。まぁ、そんなことはどうでもいいわ。たとえお客さんが一人でも、大丈夫。私が歌えば、みんな集まって来る。それはもう、電灯に群がる虫の様にワラワラと。私の熱気が祭りの熱気ごときに負けるはずがない! 残り10分……もう一度気合を入れなおそうかしら。

 

 私がそう思った時、声をかけられた。


「カエデちゃん!! デビューライブがんばってなぁ~!!」


 声の主は豆腐屋『白角』の店長さんだった。


「あ、店長さん。どうしたんですか?」


「応援に来たんだよぉ!! 今日のライブ、楽しみにしとるでねぇ」


「……ありがとうございます」


 私の心の支えは、ふけさんだけじゃなかった。店長さんもまた、私を支えてくれた。それを知れただけで、私の両足はどんな重圧にも耐えて、立派に私の体を支えることができる。けして、私の体重が重いという話では、ないのですよ。


「今日はカエデちゃんの記念すべき日だからね。プレゼントを用意したよ。奮発したからねぇ~」


「プレゼント?」


 ……嫌な予感がした。


「ほれ! 改良に改良を重ねた、特性『暗黒豆腐』だよ!! ライブの前にお食べ!! 元気になれるよ!!」


 嫌な予感は的中した。……どうしよう。正直、大切なライブの前に『暗黒豆腐』を食べてお腹を壊したら嫌だし。でも、あくまでも私は『暗黒豆腐』のPRのためにライブを行うわけで、ここで拒否するのも気が引けるなぁ……。


「ほれほれ! 大丈夫だっでぇ。今度こそ自信作だから! 一番にカエデちゃんに食べてもらいたくて、味見はしてないんだけどね」


 味見をしろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!


 私はそう叫びたかったが、一度店長さんを殴って反省しているので、我慢した。


「はぁ…………いただきま……しょう!!」


 私はやけくそになり、勢い良く『暗黒豆腐』を鷲掴み、そのまま口に放り投げた。


 手の中で飛び散る肉体。口に広がる黒い汁。そして、ほのかに香る生臭さ。


「まずい!! やり直し!!」


「うへぇ! また失敗したか……。ごめんなぁカエデちゃん。次こそはとびきりおいしい『暗黒豆腐』を作るからねぇ」


 もう諦めろ! 私はそう思いながらも、ひきつった笑顔で「楽しみにしています」と答えた。


「カエデさん! もう開演時間です! ステージへ急いでください!」


 気がつくとデビューライブ開始の時間になっていたらしく、スタッフの人が少し焦った様子で私を呼びに来た。


「あ、はい! それじゃ、私行きますね。店長さん、いろいろとありがとうございました」


 私は『暗黒豆腐』を食べさせられた分を差し引いても、店長さんに対する感謝の方が大きかったから、心の底から頭を下げて感謝した。


「おぉ! がんばって。”プレゼント”、楽しみにしていてね~」


 店長さんはそう言うと舞台裏から出て行った。プレゼント? はて? さっきの『暗黒豆腐』だけじゃなかったの? 


「カエデさん急いで!」


「あ、はい!」


 私は疑問に思ったが、時間がなかったので急いでステージへと向かった。


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