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カシューナッツはお好きでしょうか?  作者: ストレッサー将軍
第13章 『悪徳プロデューサーは許さない! ~チュウ、チュウチュウ!~』
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114.ふけさん

 ヒンヤリとした廃墟ビル。ほこりを被ったイスとテーブルを用意し、私は松原を待っていた。


「またせたな。俺はめんどうなのは嫌いなんでな、早速始めようか。ここに5000万用意した。これで、マミマミをよこせ」


 ご、5000万!! 正直、気持ちがぐらついた。5000万あれば、遊んで暮らせるぞ。私はチラッと、舞茸さんが隠れている所を見た。雑然と置かれた用具の隙間から見える舞茸さんの目は鋭く光っていて、怖かった。


「……嫌だ」


 私は何とか自分の欲を抑えて、予定通り金の申し出を断った。


「足りない、と言うことか? それなら、6000万でどうだ?」


「金の問題じゃない。もう、私の大切なアイドルを手放したくないんだ」


「ふふふ、そうか」


 松原は不気味に笑いだした。


「な、何がおかしい!」


「金でいいなりにならないヤツは久しぶりだ。くくく、素直に金を受け取っていれば、幸せだったものを……全く、残念だよ」


 そう言うと、松原は指を「パチン!」と鳴らした。すると、イカツイ顔したお兄さん2人が、部屋に入って来た。どうやら、扉の向こうで待機していたらしい。


「な、なんだお前たちは!?」


「こいつらは、俺の“お友達”だ。俺は欲しいものはどんな手を使っても必ず手に入れる。悪いが、少し痛い目を見てもらおうか。それじゃ、お二人さん、お願いしますね」


 松原がそう言うと、イカツイお兄さん二人が私に近づいて来た。


「な、何ですか!? 何する気で、うへぇ!」


 そして、全く躊躇することなく私の顔面を殴った。


「ぐへぇ!」


 腹を蹴られた。胃酸が逆流しそうになった。


「もへぇ!」


 もう一発顔を殴られた。口の中が切れた。鉄の味が広がった。


「いででででぇ!! 勘弁してくださいぃいい!!」


 指を思いっきり靴の踵で踏まれた。泣いた。死ぬほど痛かった。


「ひぃ、ひぃいい!」


 痛さよりも、怖さの方が辛かった。怖くて怖くて、体が震えた。


“舞茸さんはやく!”


 私は心の中でずっとそう思いながら、救いのない暴力に必死に耐えた。予定では、舞茸さんが写真を撮り終えたら、合図をくれることになっている。だが、なかなか舞茸さんから合図が来ない。




「チュウ~。チュウチュウ~」


「何だ? ネズミか?」


 ようやく舞茸さんからの合図があった。


「わ、わかった。マミマミはあげるから、だから、もうやめてください」


 私は直ぐに、懇願した。


「ふふふ、お二人さん、もういいですよ。ありがとうございました。これで、マミマミは俺のものだ。田中敬一、ありがとよ」


「くぅ……」


 私は痛みを必死に我慢しながら、松原を睨んだ。こいつだけは、絶対に許せない。


「例によって、お二人さんは先に帰ってもらえますか? 一緒にいるところを目撃されると困るのでね。また今度、たっぷり“謝礼”はさせてもらいます」


 松原はそう言うと、イカツイお兄さん二人を先に帰した。


「松原ぁあ! お前だけは絶対に許さない」


「許されなくて結構。俺は欲しいものが手に入ればそれで満足なんだよ。ぐははは!!」


 松原はふんぞり返って笑っていた。私はこの男のムカツク顔をぶん殴ってやりたかったが、体が痛くて動かなかった。もしかしたら、骨が折れているかもしれない。


「それじゃ、マミマミはいただいて行くぞ。じゃあな、田中敬一。ぐははは!」


 松原は笑いながら廃墟ビルから出て行こうとした。この時、私の心は悔しさでいっぱいだった。


「チュウ~!! 松原、お前の悪事はこの写真にしっかりと記録されている。お前はもう終わりだチュウ~!!」


 まだネズミ臭の消えない舞茸さんが出てきて、松原に向かって叫んだ。


「な!? お、おまえ、どこから出てきた!? ま、まさか写真に撮ったのか? 今までのやりとりを全て?? 舞茸、貴様裏切ったなぁあああ!!」


「チュウ~」


 松原は非常に困惑しているようだった。顔には大量の冷や汗が浮かんでいて、軽くテンパっていた。くくく、ざまぁーみろ!! お前はここで終わりなんだよ!! 私は心の中で松原に悪態を吐き、唾を吐き、完全に勝利宣言をした。その瞬間、


「チューウ!!」


 舞茸さんが松原に殴られた。


「チュウチュウ~!!」


 さらに、多少抵抗したのだが、健闘むなしくカメラを取られた。


「これさえなければ、お前たちはどうすることもできんのだろう? 残念だったな。あばよ!」


 そして、松原はカメラを持って、廃墟ビルから走って逃げ出した。



 ”舞茸さん!! 何してんの!!”


 私がそう思った時、


「プルルル! プルルル!」


 携帯が鳴った。こんなときに誰だ!? そう思った私が画面を確認すると、そこには愛おしい人の名前があった。思わず、私の時が止まった。



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