第4話 潰走Ⅱ
田中真央の視界の文字が更新される。
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【適応:反応速度上昇】
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身体が勝手に動く。
幹を蹴る。
斜面を滑る。
枝を避ける。
考えるより早く、体が反応する。
剣が木を抉る音が背後で響く。
乾いた音。
森にこだまする。
足音が聞こえる。
一定だ。
焦りがない。
距離が縮まっている。
振り返れない。
何も理解できない。
だけど。
これだけは分かる。
止まれば死ぬ。
逃げろ。
とにかく逃げろ。
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【適応:走力補正】
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筋肉が噛み合う。
関節が軽くなる。
呼吸が整う。
体の無駄が削がれていく。
逃げるためだけに、体が最適化されていく。
速い。
確かに速い。
だけど。
背後の気配が消えない。
追ってくる。
ずっと。
斜面に出る。
木の間隔が広がる。
落ち葉が厚く積もり、
地面から木の根が突き出していた。
速度は出る。
だが足場は悪い。
踏み外せば転ぶ。
それでも止まれない。
斜面を駆け下りる。
足音が乱れる。
その瞬間。
視界が揺れた。
剣先が脇腹を貫く。
空気が抜ける。
膝が折れる。
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【適応:痛覚遮断】
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痛みは消える。
立てる気がする。
だけど。
足に力が入らない。
血が土に染みる。
立てない。
死にたくない。
頭の中でそれだけが回る。
死にたくない。
死にたくない。
男が近づく。
足音は静かだ。
剣を握る手に迷いはない。
田中は口を開く。
何か言おうとする。
声が出ない。
剣が振られる。
森が静かになる。
風が葉を揺らす。
血の匂いだけが残った。




