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魔力徴収。それは世界の循環構造を崩壊させる力だった。  作者: 唯野丈


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8/10

8

 サラが約束の時間になってもギルドに現れない。

 几帳面な彼女が時間に遅れたことなど一度もない。

 数日前、教会の異端審問官が街に到着し、色々と嗅ぎ回っているとの噂を聞いた。


 嫌な予感がする。

 サラはいつも町外れの教会で朝の礼拝を行なっている。


 急がなければ。



◇◇◇


「サラっ!!」


 教会に押し入った瞬間目に入ったのは、白い荊に絡め取られたサラと、白い法衣を着た長身の男。

 どれだけ痛めつけられたのだろうか。サラの衣服は血で染まり、足元にまで血溜まりが広がっている。


「あぁ、ちょうど良かった。上級審問官のアルベルトと申します。あなたはカインですね。あなたにもお聞きしたいことがあります」


 アルベルトが冷静に話している。サラを痛めつけながら。


「サラを離せ!」


「あなたが第七迷宮深層で見聞きしたことを教えてほしいのです」


 なおもこちらを無視して話し続ける男。はっきり言って異常だ。


「サラを離せと言っている!」


 俺は抜刀し、切先を男に向ける。


「自ら悔い改めていただくのが一番良いのですが、仕方ありません」


 アルベルトの指がわずかに動いた。


 アルベルトの足元から4本の白い荊が迫ってくる。

 速い。

 だが、目で追えないほどではない。

 4本の荊を全て切り落とす。


「ほう。なかなかやりますね。資料にはC級と書かれてましたが」


 アルベルトは余裕の表情で独りごちる。


 …奴は完全にこちらを格下だと思い、油断している。それなら。


 魔力を脚に一極集中しての最大加速。

 一瞬の間に、アルベルトの懐に潜り込むことに成功。


 そのまま一閃。

 普通の人間であれば、躱せるはずのない至近距離での斬撃。


 しかし、


 アルベルトが体を捻るのが見えた。こちらの動きを見てから動いたのではない。動きを予測した上での回避行動。

 結果、左腕に深傷を負わせたものの、ギリギリのところで致命傷は避けられてしまった。


「……なるほど」


 アルベルトの声に、初めて感情が滲む。

 アルベルトは素早く荊を負傷した左腕に巻きつける。

 荊の棘が棘が傷口を抉り、アルベルトの口から苦悶の声が湧漏れ出る。


「痛みとは、祝福です」


「一体何を…」


 異様な光景に、つい疑問が口に出るが、その疑問はすぐに解消された。


「傷が回復している?」


「ご名答。『贖罪の荊』の能力は、全ての人間に適用されます。人という種そのものが生まれながらに原罪を背負っているが故に」


 それなら。

 回復する間を与えなければ良いだけ。

 再度、荊を掻い潜り、懐に入り、連続攻撃で圧倒する。魔力で強化した俺のスピードならそれが可能。

 

 俺は剣を構え直す。


「あなたの事を正直舐めてました。多少、本気で行かせていただきます」


 4本の荊が向かってくる。先ほどとは雲泥のスピード。だが、躱せない速度ではない。

 荊を掻い潜り、アルベルトの懐に…

 

 その瞬間、右脚に激痛が走る。

 右脚に白い荊が巻き付いている。


「何で…」


「出せる荊の数が4本だけだと誰が言いましたか?」

 

「クソっ!」


 右脚に絡まった荊を魔力放出で強引に解こうとするが…


「戦闘中に相手から意識を逸らすのは感心しませんね」


 荊に気を取られた隙に一気に距離を詰めてきたアルベルトが俺の頭を鷲掴みにし、俺の目を覗き込む。


「さぁ、あなた自身の罪と向き合う時間です。『悔恨強制』」

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