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魔力徴収。それは世界の循環構造を崩壊させる力だった。  作者: 唯野丈


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6

 街門の前に、一台の馬車が止まった。


 白地に金の刺繍。

 教会紋章――三重円環と天秤。


 それを見ただけで、門兵の背筋が伸びる。


「聖教会です。通してください」


 純白の法衣に身を包んでいる男が、聖教会の任命書を門兵に提示する。

 だが、それよりも門兵の目は、男の胸元の印章に釘付けだった。


「…異端審問官」


 門兵は微かに震えながら呟く。


「まだ、通していただけないのでしょうか?」


 白い男が静かに問う。


「申し訳ございませんでした。直ちに開門します!」


 門兵は反射的に敬礼し、門を開いた。


◇◇◇


 ギルド本部、応接室。


 ギルド長リチャードの前に、書状が置かれていた。

 封蝋には、教会の正式印。


「……異常ログ、か」


 短く息を吐く。


 内容は簡潔だった。


------

異端についての神託が下った。

全ての機関は審問官の調査に協力せよ。


該当地域:第七迷宮

日時:斎王月5日

対応:現地審問

担当:上級審問官 アルベルト


------


 いつもの文面。

 珍しくもない。


 だが――


「担当が、アルベルト……」


リチャードの眉が、わずかに動く。


 彼は名前を知っていた。

名前を聞いただけ胸糞悪くなる程度には。


「……面倒なことにならなければ良いが」


◇◇◇


 街を見下ろす宿の窓辺で、アルベルトは書状を読み返していた。


 日時。

 座標。

 異常値。


 それだけ。


「…さて、どうしましょうか」


 静かな声。


 彼は信じている。

 神は無謬である、と。


 だからこそ――

 誤りがあるなら、それは人の側にある。


 神は理由を説明しない。

 説明する必要がないからだ。


 ならば、理由を“白日の下に引きずり出す”のは、人の役目。

 それが、神に仕える者の仕事だ。


 「歪みは、痛みの中で最も雄弁になるのです」


 それは彼にとって、祈りの言葉だった。


 机上には、先ほどギルドから入手した当日の第7迷宮突入者のリスト。


 リストには10数名ほど記載されているが、


 「深層からの帰還者が2名」


 アルベルトは、わずかに口角を上げた。


 異常ログが示す“歪み”は、どちらかが原因となっている可能性が高い。

 あるいはその両方か。


 「…まずは、神官の方からお話を聞きましょうか」


 そう呟き、彼は蝋燭を吹き消した。

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