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魔力徴収。それは世界の循環構造を崩壊させる力だった。  作者: 唯野丈


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3/10

3

(サラ視点)


 ――終わった。


 そう理解するのに、数秒かかった。


 ケルベロスは動かない。

 三つあった首は、すべて地に転がっている。


 なのに。


 私は、息ができなかった。


 血の臭いが広間に満ちている。

 それ以上に―カインが怖かった。


 馬乗りになったまま、動かないカイン。

 魔剣は、もうない。


 だけど…


 喉が、ひくりと鳴る。


 さっきまで、確かに追い詰められていた。

 魔剣が砕けた瞬間、終わったと思った。


 それなのに。


 彼は、素手で。

 何の詠唱も、祝福もなく。


 ――首を、引き千切った。


 私の知る“人間”の範疇を、明らかに越えている。


 そして、何より恐ろしいのが…


 (カインはケルベロスの魔力を吸収していた)


 魔力を吸収し、循環させるのは神の権限。教会ではそう教わってきた。そして、それを乱すものは、神への反逆者であり、速やかに始末しなければならないとも。


「……カイン?」


 恐る恐る呼びかける。


 振り返った彼の目は、正気だった。


 ただ。


 底が、見えなかった。


「……サラ」


 名前を呼ばれて、はっとする。


「転移スクロール。使えるか?」


 その声は、いつもの幼馴染のものだった。

 なのに、どうしても、重なって見えない。


「……え、ええ。まだ……残ってる」


 震える手で答える。


 カインは、立ち上がり、周囲を見渡した。

 倒れた仲間たちに、ほんの一瞬だけ、視線を落とす。


 そして。


「皆の識別票を回収して、すぐにここから出よう」


 それだけ言った。


 その背中を見ながら、私は思ってしまった。


 ――教会が、これを知ったら。


 カインが異端狩りの対象になってしまうかもしれない。

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