第5章 量子もつれとハッピーエンド
科学部の部室では、和美がみんなの前に立っていた。
「実験結果、発表します!」
和美が部室のホワイトボードの前に立った。
「重ね合わせ:成功、エネルギー準位:成功、不確定性原理:大成功!」
「おお、パーフェクトじゃん」
ルカが拍手する。
「それで、最終的に量子もつれ作戦も実践しました!」
和美は笑顔で宣言した。
「やったね!」
部員たちが盛り上がる中、和美は少し寂しそうな表情を浮かべた。
「……でも、実践したけど結果は違うんだよね」
和美がぽつりと呟いた。
「え?」
部員たちが振り返る。
「実は、あれから石川くんと何度か会ってるけど、二人の仲が進展した気がしないの」
和美の声が小さくなる。
「普通に話すし、優しいけど、何も変わってない」
「それって……」
山田が言いかけて止まった。
「量子もつれなんて、効果ないのかも。本当につながってるのか、分からなくなってきた」
和美は頭を抱えた。
「そんなはずないよ!」
ルカが声を上げた。
「あの時の石川くん、すごく嬉しそうだったじゃん」
「そうそう!」
鈴木も同意する。
「それに、進展してないって、和美から何かアクション起こした?」
「それは……」
「おかしいよ、絶対」
山田が立ち上がった。
「ちゃんと確かめてこいよ。石川くんの気持ちも、ストラップのことも」
「でも、もし本当に興味なかったら……」
「和美」
ルカが真剣な顔で言った。
「観測しなければ分からない、って自分で言ってたじゃない」
和美ははっとした。そうだ、私が最初に言ったことだ。
「うん、そうだね」
和美は深呼吸した。
「もう逃げない。ちゃんと確かめてくる!」
「がんばれ!」
部員たちの声援を背に、和美は部室を飛び出した。
放課後の教室。吾郎が一人で勉強していた。
「石川くん」
「あ、佐伯さん。どうしたの?」
「聞きたいことがあって」
和美は勇気を振り絞った。
「テーマパークで渡したストラップ、どうしてる?」
吾郎が驚いたような顔をした。
「あれ? 実は……」
和美の心が沈んだ。
(やっぱり捨てられた?)
「なくすといけないから家で保管してるんだ」
「えーーーーっ」
「あ、でも、あのテーマパークに行って、同じものを使っているよ」
そう言うと吾郎は、青い星のストラップをカバンから取り出した。
その瞬間、和美の心の中で何かがカチリとつながった気がした。
(完)




