第一章:星屑の呼び声
現実世界の夜はいつも静かで、色のない風景だった。
高校二年生のマリンにとって、それはつまらない日常の連続を意味していた。
彼女は都会の片隅にある古いアパートで、退屈な日々を送っていた。
成績はそこそこ、友達もそこそこ。
どこにでもいる「そこそこ」の少女。
ただ一つ、彼女が他と違うとすれば、寝る時の夢が、あまりにも鮮烈すぎることだった。
その夜も、マリンはいつものように夢に落ちた。
しかし、今回は違った。彼女が立っていたのは、部屋の天井でもなく、学校の屋上でもない。
そこは、星屑でできた海だった。
足元で砕ける波は銀色の輝きを放ち、頭上には見たこともないほど巨大な惑星が、
手の届きそうな距離で静かに浮かんでいる。
「やっとお目覚めか、新米航海士」
突然、彼女の足元に、雲のような小さな船が現れた。
その船首には、まるで威厳ある提督のように、
真紅の提督服を完璧に着こなした一匹の黒白猫が座っていた。
猫は、片目に金色のモノクルを光らせ、ふさふさの尻尾を優雅に揺らしている。
「ようこそ、夢想航海へ。私の名はバラ猫。この『星屑の帆船(アルゴ・ナビ』の提督だ」
マリンは瞬きを繰り返し、自分が本当に猫と話しているのか、
夢の深淵に落ちたのか判断がつかなかった。
「あ、あなた、猫…?えっと、提督?」
バラ猫はため息をついた。
「驚いている暇はない。我々は現在、非常に危険な領域にいる。
夢と現実の境界が曖昧になる『薄明の海域』にだ。
すぐに次の航路を決めなくてはならない」
バラ猫は船の舵輪に前足をかけ、鋭い金色の瞳をマリンに向けた。
「さあ、航海士マリン。我々はどこへ向かうべきか?この航海の目的を思い出せ!」




