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野獣ガイン〜常勝無敗の色男〜  作者: jetts


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常勝無敗2

 仕事終了! お姉ちゃんと遊ぶ為に街へ繰り出すぞー! 夕方のサウスヴァルグランは賑わっているぜ。


 サウスヴァルグランは首都リヒトヴァルグランから馬車で五日ほどの距離だが、観光と巡礼の地として有名であり人気。一度は訪れたい土地として王国民憧れの地だ。


 旅装束で周りをキョロキョロしながら歩く王国民。見るもの見るものに驚きを上げる他国民。それを見守り、親切に声を掛ける現地人。


 ヴァルグランの濃い所が集まっているサウスヴァルグランは、王国民にとっては神聖であり憧れ。他国民には驚愕と脅威の象徴。


 まず、嫌でも目に入るのは三つの巨大建築。空を貫かんばかりの巨大な鉄剣が突き刺さる国興しの神『名を忘れられた漢』の大神殿。三本の塔が特徴的な大魔術学院。街のどこからでも見える高い塔の上に巨大な蜘蛛の彫像が乗る『護りの蜘蛛神』の神殿。


 サウスヴァルグラン三大名所はヴァルグランの建築技術の粋で建築されており他国民にヴァルグランの技術力の高さを示している。


 建物の壮観さだけでなく、大神殿の周りでは神に捧げる『ニジソウサク』や『メカムスメ』を見せ合う姿がある。自分たちで作り上げた作品を称え合い、供物としてささげる姿は他国ではないだろう。


 因みに、既存の物語に自分なりの解釈で文でも絵でも描いた薄い本を『ニジソウサク』。装備や魔導鎧を少女や女性に模した人形や絵を『メカムスメ』と言う。どちらも神がヴァルグランに伝え、愛でていたものらしい。


 大魔術学院近くは、この時間賑わっていて小腹のすいた学生の腹を満たす露店が、いい匂いで学生だけでなく旅人も誘っている。


 夕日に紅く映る蜘蛛神の彫像は厳かな雰囲気で、モデルとなった姐さんはここに来る度に「あれは照れるのじゃ」とぼやいている。


 まぁ、そんなたわいもない事を考えながら喧騒の中小走りに人に当たらない練習も兼ねて行きつけのお姉ちゃんの店を目指す。


 目の端に一般の旅人を装っているが、リツァーバの工作員らしい動きの人間がチラチラと見える。敵対的でもなく、スパイ活動でもなく何かを探しているような動き。リツァーバの人間は割と動きに癖があるので分かりやすいが、一体何を探してるんだ?


 多少引っかかったが、お姉ちゃんのが大事だ。気にせず近道の路地裏に行くと女の声とガラの悪いダミ声。


 方向を変え、声のする方にダッシュ。現場に行くとゴロツキが10人ほど路地裏に溜まっている。


 チラッと女が見える。とりあえず手前にいるゴロツキに膝蹴りをかまし、隣のゴロツキの首に素早く右手で手刀を入れて意識を刈り取る。


 膝蹴りで前のめりに倒れ込んだ奴の頭を踏みつけつつ、右手で短杖を持ちゴロツキ達をぶちのめしていく。


 目の端に女が映る。胸の真ん中が縦に大きく開き、背中はほぼ丸見えで尻までほとんど見える青く滑らかな艶のあるドレスを着た仮面の女。


 ほぼ痴女じゃねーか。好みだ!


 気合が入り、組み伏せられた女に乗っかってるやつを身体強化を効かせた蹴りで文字通りぶっ飛ばし、残りも体術と短杖で薙ぎ払っていく。


 ものの数秒で、うめき声しか聞こえなくなった裏路地で女の手を取る。


 「大丈夫か。今晩どうだい?」


 いつもの軽口。まぁこんなヤバい目に遭ったから怖がってそれどこじゃないだろう。なごみゃいいなと思っていったが…………


 「ハイッ♥」


 色っぽい返事が返ってきた。


 俺たちはゴロツキを踏みつけながら宿に向かう。ゴロツキの恨み節をBGMに俺はルンルンだ。


 女は大きな胸を俺の腕に押しつけ、仮面に隠された顔を赤らめながらついてくる。胸の感触を楽しみながら歩く道すがら、女はキョロキョロと街並みに感動し、あれは何? これは? と質問が凄かった。


 箱入り娘のレベルじゃない、宝物庫入り娘だな。何処のどいつなんだ? などと考えつつもこれからのお楽しみに思いを馳せる。


 宿についても宝物庫入り娘は興味津々で体を揺らすたび大きな胸がブルンブルン揺れる。眼福眼福。


 さて、それからよろしくいたしたわけだが、この女の仮面の下からとんでもないものが出てきた。


 リツァーバ筆頭法術士ミヒャエラ・エデンだった。彼女の生まれて初めての相手になった俺だが、こうなることを望み大層予習してきたそうで大変楽しませていただきました。


 何故、あのような姿でこの街を出歩いていたのかと言うと。


 「あの日の自由なあなたに憧れて。ガインの好みも、好きなことも全部調べたの。あのドレスを着ればきっと見つけてくれると信じてた。もう少しでゴロツキを丸焦げにするとこだったけど」


 あの時、俺が救ったのはミヒャエラではなくゴロツキの方だったとは驚いたが、俺の生き方を愛してくれて、会いに来てくれた行動力。脱帽だぜ。


 兵舎でのあの視線は、愛するものに向けためだったとは。俺も感が鈍ったな。


 ミヒャエラは息の詰まるリツァーバのしきたりを抜け出し思いっきり自由を楽しんだ。俺と一緒に。


 場所を変えて朝までゆっくり楽しんだ俺は、素知らぬフリでミヒャエラを捜索していた工作員を見つけ声を掛ける。


 「何者かに拉致されかけた筆頭法術士殿を保護した。混乱されていたので兵舎で休んでいただいている。後ほど南兵舎に迎えに来てほしい」


 俺たちの道は一度別れを告げる。また一年後この街の路地裏で再会を約束して。





〜後日、リツァーバ法術院の一室〜


 食後のほんの少しの自由な時間。あの出来事を思い返す。


 ヴァルグランとの合同記念行事の日。私は初めて殿方に誘われた。


 「姉ちゃん今晩どう?」


 聞いたことがない声掛け。物心がついた時から、殿方とまともに話をしたことがない。


 生まれた時から、法術士として定められた私。所作、言葉遣いにより魔術回路を刻む法術士は行動すべて決まり事を守る必要がある。


 生活全てが決まり事。


 そこに、ポトンと一粒何かが落ちた。そこから波紋が拡がり私のすべてに行き渡る。


 トクンと何かが動き出した。今まで、止まっていた物が私を突き動かす。公務の合間に彼のことを調べた。生い立ち、経歴、所在、好み、行動。


 あらゆる手段を駆使して、彼の『今晩』に付き合う為の用意をする。今まで使う機会が無く、貯まるだけだったお金を惜しみなく使う。


 全て調べ上げ、正体を隠して彼好みのドレスを身にまとう。毎夕、通う店への近道となる裏通りで彼を待つ。


 私の誤算は、他の殿方もこのドレスを好きだったということ。ゴロツキに囲まれてしまい、どの法術なら適度に吹き飛ばせるか考えていた所に彼が現れた。


 一瞬の出来事。ゴロツキのうめき声の中、彼はニカッと笑って


 「大丈夫か。今晩どうだい?」


 待ち望んでいた彼からの誘い。もちろん


 「ハイッ♥」


 そう答えた私を連れて街へ繰り出す彼。彼の腕にしがみつき、夜の帳が下り始めた街は明かりを放ち昼よりも輝いて見える。見るものすべてが新しい。これが、自由。


 彼との『今晩』の為にバナナとボールで練習しておいて良かった。刺激的な体験。


 彼は優しくて、激しくて私を満たしてくれた。また、あえるんだ。


 あの路地裏で

 



 

 


 

 




 

 


 

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