常勝無敗12
自由貿易都市フリージアは平和だ。つい二週間前の危機から脱したばかりだが、貿易も再開されて元の活気を取り戻している。
その街並みを歩きながら、先ほどまでの堅っ苦しい会合を思い出す。
今回、妖魔の氾濫事件に軍事国家スルトタガンが明確に関与していた証拠が、姐さんの暗躍により多数出た。
それを元にフリージアは代表の商会連合の名義でスルトタガンに対して国家賠償請求を行った。
貿易的同盟関係にあるフリージアに対しての明確な侵略行為。流石の傍若無人な外交で知られるスルトタガンでも非を認めざる負えず本日の調印式を迎える。
今回の件は、軍部の一部である実験部隊の独断先行により起こってしまった不幸な出来事ではあると認めた。
その上で賠償、大陸共通金貨五万枚と軍上層部の一新を行い、関わった首謀者をヴァルグランを含む北方諸国国際法により罪を問うという念書にスルトタガンの外交大臣が印をつく羽目になった。
国家予算の約十分の一と、軍部の再編。しばらくは国民の目もキツくなりバカなことはできなくなる。
ゴネようのない完全敗北。
その背後には、あれだけの兵力を動員しながらフリージアを陥落出来なかった、用意周到に証拠隠滅の準備までしていたが暴かれてしまったという事実がある。
それを成したのは、どちらもヴァルグランの介入。姐さんと影技隊によって奇襲が防がれ、俺のリヒトリーゼで大軍と魔導戦車を突破された上に致命的な物証を証拠隠滅する間もなく確保された。
いやー、スルトタガンの将校と外交大臣の俺を見る目。悔しいって感情を遥かに超えてて、もう俺から言えば「ざまーカンカン」だった。
歩きながら、体を締め付けるヴァルグラン文武官の正式礼装の首元のホックとボタンを三つ外し、少しでもいつもの俺に戻す。
とりあえず、フリージアのいい女でも探して楽しまねーとな。姐さんの迎えは明後日、今回の褒美も兼ねて休日とお駄賃も貰ってるから遊び放題だ。
突然、背後から声をかけられる。
「見つけたぞ! 野獣ガイン。アタイと勝負しな!」
顔を向けると、大きな胸をピタッピタッのタンクトップで包み、ホットパンツから鍛え上げられたぶっとい太ももが眩しい女が俺を指さしている。
獣人の特徴である体毛とピンっと立った耳、尻尾がチラチラと見えている。筋肉のつき具合と毛並みの柄から虎の獣人と分かる。
「あぁ、いいぜ。だが、その前に一戦付き合えや」
虎娘に向かってダッシュ。目配せしながら顔めがけて鉄拳を打ち込む。
その拳をサイドステップで躱し、くるりと身を翻す女。俺の拳は虎娘の後ろからナイフを構えて襲いかかろうとしていた黒装束の顔面にめり込む。
女の太ももが一気に膨れ上がり、ドンッと腹に響く踏み込み音を上げて路地からクロスボウを構える黒装束に襲いかかる。
クロスボウを放ち迎撃を図る曲者だが、驚異的な反射神経で矢を叩き落とされ致命的な隙を晒す。
目の前に降り立った女が素早く前宙。全く反応できない男の肩口に踵が突き刺さる。
バギョ!
あっ折れた。
崩れ落ちる男を見届けながら、俺の目の前の男の後ろに回り込み首を絞め意識を奪う。礼服の左胸のポケットに入れておいたハンカチを口にねじ込む。
男を抱え上げ歩き出す。後ろからあいつも右肩に黒装束を担いで着いてくる。
「やるじゃねーか。えーと?」
後ろの女に顔だけ向ける。
「ティル、タイガービーストマンのティル。野獣を食い破る者よ」




