異種族との邂逅
女の子は頭に二本の角が生え、お尻からは尻尾が生えている。ゲームのあらすじと同じであれば、この子は竜人族の皇女で魔力切れで倒れているはずだ。後は手筈どおり、少女の近くで座って待つこととしよう。
やけに風が強い。森が小さい僕を笑っているようだ。
「またレオナが魔力切れで倒れてると思ったら、これは面白い。人間の子がおるではないか」
急に後ろから声がして、驚いて振り向く。全く気配がしなかったが、一歩後ろほどの距離にレオナと同じような姿の、少し年老いた男が立っていた。
「まだ、この森の魔物を倒してこれるような年齢でもないように見えるがな。いやはや人間にも出来のいいやつがいるということか。」
勝手に1人であーだこーだと言って盛り上がっている。
急にこちらを向いて言った。
「お前さんがレオナを見守ってくれていたんじゃな。
まぁ魔物に簡単にやられる様な子ではないんだがな、最近はエルフ族と関係が悪いゆえ少し心配しておったのだ」
ここもゲームと同じな様だ。2年前エルフ族は人間族と戦っている。父ウィルの活躍などもあってエルフ族は劣勢に立たされてしまい、竜人族に救援を求めるのだが、本来竜人族は神殿を守る種族であるため、中立を貫いた。そのせいで戦争後エルフ族と竜人族は戦争はないにしろ関係が悪く、いざこざが絶えないのだ。
「自己紹介を忘れておったな、わしの名前はリゾット。昔は竜人族の王様だったんじゃが、倅に今は任せてな。孫のレオナと遊んだり、修行をつけてやったりしてるんじゃ。ワシは鑑定待ちじゃから見させてもらったが、お主はクウと言うんじゃな。」
レオナは魔力切れが治ったのか今はスヤスヤと寝ている様だ。リゾットは髭を触りながらまたしゃべる。
「人の子よ。もう夜も遅いぞ。たかが一歳のお前の能力じゃ魔物と出会った時大変であろう。送っていってやるから速く帰るんじゃ」
そう言うと、僕の返事の聞きもせず(まだ喋れないけど)リゾットはレオナを負ぶり、僕を抱えて走り出した。
五月雨の森の入り口に着く。道中魔物を一目も見なかった。レベルの高い魔物はリゾットとのレベル差を自然の勘で感じて襲ってこないのだろうか。
「もうここからは安全じゃろ。本当はお主の家まで連れて行きたいんだが、竜人族が人の領地に出ると大問題になるんでな。」
リゾットはニコッと笑って腕の拘束を少し緩めたので、僕は風魔法でひょいっと飛び出し、リゾットの一歩前ほどで、停滞できる様にする。
リゾットの背中からレオナがぴょこっと顔を出す。
「ねぇお爺様、あの人間は誰なの?風魔法で器用に飛んでいる様だけど」
レオナの声はやっぱりいい声だとこっちの世界に来てからも実感する。リゾットが森を走る間にいつのまにか起きていたようだ。
「あいつは近い将来竜人族の助けになってくれるであろう人間だ。一歳で風の魔法を使いこなすなんて、将来が楽しみで仕方がないだろう?」
風が強く吹く。まるで、僕たちの別れを促す様に。
「よしそれではお別れといこうかの。お前さんには大いに期待しておるよ。人間族の代表してこれを持って帰ってくれ。それではまたな。」
そう言ってリゾットはレオナを負ぶったまま走っていった。
これこそ本日のメインディッシュ。今回の目的だ!
竜人族のお守り
魔力+5 筋力+5
首からさげるタイプのお守り。竜人族が信頼した者 にしか渡さず、これを持っていると竜人族と何かあ った時に融通がききやくなる。
(インベントリオープン。竜人族のお守りをストレージへ。容量1/36)
これでウィルやエニシャには気づかれないだろう。それより2人に気づかれる前に早く帰らないと。
自宅の上空から自分の部屋の窓に近づき、中に入る。やっと自分の部屋へ帰ってこれた。まだ2人には気づかれず騒ぎにもなってなさそう。
ベビーベッドに横になる。今日はいろいろな出来事があったなーと思いに耽っていると瞼が落ちてきて、いつのまにか眠ってしまった。