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因縁の相手_1

辺り一面は焼け野原に包まれ何処も彼処も煙が上がり血が飛び散りこびり付き、火薬と“何か”の肉が焼ける匂いが充満している


かつて高層ビルなどが立ち並び高速も通り煌びやかな街中と先進国であった面影などは一切無くなり滋賀県と隣接する福井県、岐阜県は前線となりそこにはまさに地獄絵図と呼ぶに相応しい景色と化していた


銃声の音が鳴り響き苦痛に耐える声や死が間際までやって来ている事を察してパニックで叫んでる者もいるがソレらは全て青い空へと消えていく



美澪『5分後、作戦を開始します。目標地点はここから10km先のショッピングモール、道中の妖は全て殲滅しまたモール内の妖も同様です、負傷した者は速やかに退避し司令部へ連絡を入れてください。』



そう作戦行動のおさらいを爆破により倒壊している建物の影でしているのは東京本部所属の純桜寺美澪少佐率いる部隊だ。


淡々と作戦を語る目は冷たく重く、光などは一切無かったがそれもそのはず。

美澪は基本明楽への復讐を糧にこのクソみたいな世界を、日常を今まで生きてきた。


大属星に引き取られてからは入隊基準に満ちるように日々鍛錬をこなし、学問も全て大属星で学んできた。


よって、純桜寺美澪及びその兄である颯清達双子は小学校すら通っていないのだが妖によって両親を失い大属星に引き取られ小学校に通ってない子なんぞざらにいる


現代でも義務教育はあるのだが、大属星に入隊するという目的であるのならその義務とやらは無くなる。

無論生きる上での必要な読み書きやある程度の常識、足し算引き算などの算数程度は教えられるがそれより必要なのは戦闘技術だ。


美澪達が学問の代わりに得たものは殺しの技術だ、護身術なんて甘いものでは無い正真正銘、相手の命を絶たせる為の技術だ。


だがそれもこれも美澪達が望んで手に入れたものだ、あのまま悠々と守られるだけの生活を送ることも出来た、大属星に行くか否かは本人に決定権がある。


だが美澪達はその甘く無駄な時間を捨て常に命懸け、死と隣り合わせの血なまぐさい戦場に立つ事を選んだ。全ては明楽を殺す為、己の命は仇を取るためにあると大属星に引き取られた子供達はそう思っている。



緋翠『美澪、もっと肩の力を抜いて。…ね?』


美澪『ぁ…ごめん、……皆ごめん大丈夫きっと全員で今日も生きて帰れるはず…んーん、生きて帰る、私が皆を生きて帰す。』



そんな美澪の肩にポンッと手を置き優しく声をかけるのは鶴喰(つるはみ)緋翠(ひすい)大尉、齢24の男性軍人であり美澪の恋人。


恋人といってもこの腐った世界で恋人らしい事など無くましてや2人が出会ったのは緋翠が18、美澪は14と学生で考えれば緋翠は高校を卒業して美澪は中学2年生頃という訳だ。


しかもこの2人は育ちが全く違い、戦争孤児となった美澪に対し緋翠は霊力の高さからスカウトされ入隊したという世間から見れば変わり者であり家族もいる中わざわざ命懸けの舞台へと参加したのだ。


年上の部下と年下の上官、美澪の目からしたら緋翠は物好きの愚か者でしか無かった。


せっかく家族がいるのにそれを捨てて死と隣り合わせの場所へやって来るなど正真正銘の馬鹿か物好きでしかないと、思っていた。


反して緋翠からしたら美澪は戦争孤児、己より4つも幼いしかも女の子が甘い世界を捨て泥臭い世界を選び死を恐れず妖を確実に殺していける状況を狂喜そうにしている姿を見たら若干恐ろしく感じた。


しかも自分のは己が加われば戦争がより早く終わるのではないかという甘い考えの元入隊した。


根本的なものから緋翠と美澪は違った、甘っちょろい考えの緋翠と復讐を糧に幼き日から生き延びてきた美澪、敵に一瞬でも情けだろうと殺すのを躊躇おうとするものなら美澪は徹底的に緋翠を叩きのめした。


決して私刑(リンチ)では無い、ただの躾だ。


その甘さがいつか命取りとなる、その逃がした妖がまた罪無き人々を殺す、そうしてまた私みたいな人が生まれる、そんな状況を撒く種を弾く事が出来るなら例え仲間だろうと容赦しない。


まぁそんな2人がどうして恋人同士となったかと言えばお互い同じ部隊にいて話し合ううちに人間とはお互いの事を分かり合うもので次第に仲良くなりその後の結末は既に紹介したのでお分かりだろう。


それに美澪にとっては初めて兄以外の家族と同じくらいの大切な人が出来た、愛情を貰った、そんな人が緋翠だ。


緋翠もまた慣れない環境だったり年相応に甘えてきたりとする美澪は可愛く、お互い頼ったり頼られたりとこの厳しい戦の中では心の拠り所ともなった。


だが恋人となる前に美澪と緋翠は約束している、美澪が例え恋人となろうと戦場においてソレを優先するなと。


私達が優先すべきは国民の命でありまた妖の殲滅、私の命は妖を殺す為に明楽を殺す為にあり決して国民を見殺しにして甘い余生を過ごす為にある訳ではないと言われている。


今まで守られてきた緋翠からは苦い顔をされたが根っからの軍人として育てられた美澪とじゃ考え方が違うのは分かっていた、妖を殺し戦場で散るのは軍人としての誉れと思う美澪とじゃ根本的なものから違う。


だから緋翠は最大に譲り「退避出来る状況なら退避して欲しい、自分も出来るだけ大切にして欲しい。」とだけお願いした


少しくらいなら、己の願いも聞いてはくれるかもとダメ元で口にしただけだが、少しでも美澪の頭に残るのであればそれで充分だと。



夕愛『美澪ちゃん、500m先に妖10体の反応あり、うち3体は飛行タイプ。…どうする?私が飛ぶのは殺る?』


偵察から戻ってきたのは空蝉(うつせみ)夕愛(ゆあ)大尉、美澪率いる部隊の中で主戦力の1人であり美澪に初めて出来た親友だ。


紫がかったピンクの長髪をひとつにまとめポニーテールにし、アサルトライフルを手に持ちクイッと敵がいる方を顎で指しながら問いかけてくるがそれに美澪は少し考え込んだが数秒もしないうちにコクリと頷いた


美澪『でも夕愛1人では危ないから、夏鈴(かりん)燈揮(とうき)と共に倒して。絶対に夕愛の指示に従うこと、怪我をしたなら特に夏鈴はすぐ後方へ下がること』



そう美澪に告げられると夏鈴はアサルトライフルをギュッと胸に抱きながら「分かりました」と答え、燈揮は「はいはーい」と慣れた手付きでライフルを持ち既に構えのポーズを取っている


栗栖(くりす)夏鈴軍曹はこの美澪率いる部隊の中では1番幼く、また1番階級が低い新兵だ。


17歳という若さであり、本来なら華やかな高校生活を送るはずだったが妖に奪われ、2年の訓練を受けこの部隊に配属となったのだ。


そして後原(ごはら)燈揮少尉は美澪と同様に幼年期からこの大属星で過ごしている、幼年期からいる組はもう親の顔を忘れてしまったという人間も多くは無い


美澪や颯清は幸いにも両親の写真を持っていた為自室に飾っており、顔を忘れない様にとしている


声はもう忘れてしまったが、優しく温かかった記憶がある、心休まる空間だったのを覚えている、恋しくなる感情もある。


この気持ちを、記憶をこれ以上失わないように、忘れないようにと努力している隊員は多い。



美澪『……、残り7体は私達が地上で倒す、決して空への援助をさせるな。1分後、作戦を実行します。』


各隊員位置に着け、と美澪は無言で手で合図をし隊員は息を殺して位置に着く。



___この永遠にも感じる1分間に隊員達は何を思うだろうか。


もしかしたら1分後には命を失っているかもしれない、幸いにも腕1本だけ持ってかれるかもしれない。


常に死との隣り合わせ、最早隣人と呼んでもおかしくないくらい常に自分達の隣に居る。


だとしたらなんてはた迷惑な隣人なのだろうと美澪なら蹴り飛ばしてやりたいくらいだが、蹴り飛ばしたいならこの大属星を抜けなければならないと内心ため息をつく。


大属星を抜ければ明楽は殺せない、己の夢が叶わない。



そんなのは、嫌だ。



私の命は私の為にある、私はこの命を明楽を殺す為だけに使う、親の仇を取る、ただそれだけ。


普通に生活を送っていたなら大して信仰もしていなかっただろう神にこういう時には縋りつきたくなる、……ああ神よ、我らを護り給えと、神の御加護がありますようにと。



美澪『……ああ神よ、何故このような世界を作ってしまったのでしょうか、何故我らが不平等にも苦しまなければならないのでしょうか。…ああ神よ、妖を、明楽を、殺してください。』


嘆きの言葉を発しながら美澪は物陰から飛び出し刀を鞘から抜き、走り出した。


それと同時に他の隊員も飛び出し、夕愛達3人は直ぐに空へと舞い上がり数秒後には弾が発射された音が鳴り響いた。


とりあえずここから10km先までは、地獄への片道へとなるか、まだこの世に残れる道となるか。


生をもぎ取る為に、美澪達は刀を持ち、銃を持ち、血を浴びて目的地へと突き進んだ。

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