第91話 ギンの過去
それからしばらく経ち、サーカスの公演が終わった。
シルバーサーカス団のサーカスは世界一と言われるだけあり、美しく高度な公演だった。
「みんなお疲れ様、今日も良い公演だったな」
ギン達シルバーサーカス団は控え室に戻ってきた。
「ギン!!」
ロイはギンに声をかける。
「何だお前まだいたのか」
「話させてくれよ!」
「帰れ、ガキと話すことなんてねーよ」
「俺このまま帰れないよ!!お願いだ!!」
「しつこいなお前!これ以上言うんだったら力付くで」
「おいおい団長、少年がこんなに言ってるのに話ぐらいしてやったらいいんじゃねーか?」
「ホントよ、可哀想じゃない」
フウカとミズキはギンに向かって言う。
「な、何だよお前ら」
「ほら、話してやりな」
フウカがギンを引っ張り、ロイの前に誘導する。
「今日の公演は終わったからゆっくり話しなさいね」
ミズキはそう言うと、シルバーサーカス団の団員達は去っていった。
「お、おい......ちくしょう、まあいい、ロイとか言ったな、まあ座れよ」
ギンは控え室の椅子に座った。
それを見て、ロイも椅子に座る。
「ギンの光魔法見たよ、凄いレベルだな」
「まあ、これでも元帝国軍の兵士長だからな」
「そう言えばカエデもそんなこと言ってたな......サンベルス国王のロドロスさんの友達なんだろ?」
「ロドロスに会ったのか、元気にしてたか?」
「病弱だって言ってたけど元気にやってたし、娘のコアネールさんが王女として頑張ってるよ」
「そうか......そう言えばロドロスの娘さんはカエデと同じぐらいだったな。カエデは元気にしてるか?」
「元気だよ、ギンの敵討ちのために魔王討伐の旅をしてる」
「......そうか」
ギンは神妙な面持ちになる。
「カエデは優秀な娘だった。故郷のオルトルバでは相手がいないほどの才能があった」
「......話してくれるか?何でギンが死んだことになってるのか」
「......」
ギンは静かに口を開く。
「丁度10年前かな、俺は帝国から魔王討伐の命を直々に受けた」
「......」
「俺の故郷は勇者の発祥の地、帝国のために魔王と戦うのは名誉あることだった。それに俺は勇者の子孫、皆が期待し喜んでくれた」
思い出すように話すギン。
「俺は3年の旅の末、ついに魔王ガイル・ユミナル・ダークと対峙し、戦いを挑んだ」
『ガハハ、移動中に襲ってくるとは随分とご挨拶じゃないか』
『うるさい!俺はテメーをぶっ倒す!!』
俺は馬車に乗って魔王城へ帰宅途中のガイル・ユミナル・ダークを襲撃し、戦いを挑んだ。
『お前、今までの冒険者とはレベルが違うな、何者だ?』
『俺は帝国の冒険者シロガネ・エーユエジル!!魔王の命貰いに来た!!』
俺は剣に光魔法を纏い、ガイルに斬りかかる。
『これはちょっと手こずるかもな!!』
ガイルも闇魔法を手に纏い、俺の攻撃を防いだ。
『ハア......ハア......』
『やるな......お前』
『お前もな......』
俺とガイルは激戦の末、ボロボロになっていた。
『これ以上はお互い無事ではすまないな』
『ああ、だが俺は俺の使命を全うするのみ』
俺は最後の力で剣に光魔法を纏う。
『クソ......仕方ないか』
ガイルも最後の力で闇魔法を手に纏った。
『終わりだ!!魔王!!』
俺はガイルに斬りかかった。
『やめてーーーー!!』
しかし、その瞬間ガイルの前に何かが立ちはだかった。
それはずっと馬車に隠れていたガイルの娘、当時6歳のレイカ・ユミナル・ダークだった。
『な、何!?』
俺は攻撃を止めて、急に足を止めたため、地面に倒れ込んだ。
『いてて......な、何だ!?』
『レイ!!隠れてろって言っただろ!!』
『ダメだよ!!これ以上はお父様が死んじゃう』
『男には死んでも戦わないといけない場面があるんだ』
『意味わかんない、そんな場面ないよバカ!!』
『レ、レイ......』
俺はその様子をじっと見ていた。
『何それ?また女にはわからない男のプライドだとか、誇りだとか言い出すつもりなの?女性差別!!男尊女卑!!』
『い、いや......しかし』
さっきまでの気迫が嘘のようにタジタジになっているガイル。
『とにかく!こんな下らない争い止めなさい!!みんな仲良くしなさい!!』
レイカはガイルと俺に向かって言った。
『そ、そうだな......レイの言う通りだ』
『......』
『おい、シロガネとか言ったか、止めにしないか?お前にも大切な人がいるだろ』
『......』
『俺は息子と娘のため、こんなところで死にたくないんだ。お前はどうだ?』
『......俺にも大切な妻と娘がいる』
俺は剣を鞘に戻し、立ち上がった。
そして、俺はレイカに抱き着かれるガイルの姿を見る。
それを見て、俺は再び剣を取ることは出来なかった。
『止めだ、そんなお前の姿を見てもう斬ることは出来ない』
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