第87話 父と母
「はい、終わり!ダメだしばらくやってなかったから下手っぴだね」
レイカは鍵盤から手を離した。
「いいえ、あなたのピアノは世界一上手だよ」
「えっ?」
レイカは横を見る。
そこにはスタイルが良い長い黒髪の女の人と背丈の大きな男の人が立っていた。
「だ、誰!?さっきまではいなかったのに......」
「忘れたかレイ」
「えっ!?」
レイカは男の方を見る。
その男にレイカは見覚えがあった。
『ガハハ、今日は2人の夢を聞こうと思う』
その声もレイカは鮮明に覚えていた。
「お、お父様!?」
「ガハハ、大きくなったなレイ」
それはすでに死んでいるはずのレイカの父、ガイル・ユミナル・ダークだった。
「な、何でお父様が!?」
「レイがいい子でいたから会いに来たんだぞ」
「な、何言って......」
レイカは涙を流した。
その涙は床に滴り落ちる。
「お父様......お父様が死んじゃって僕悲しかった。お兄様もいなくなって僕が魔王になって、それでも一生懸命やってきたんだよ!」
「そうか、偉いなレイは」
「偉いどころの騒ぎじゃないよ、全く......」
レイカは涙を拭う。
「レイは美人だし頑張り屋でいい子ね」
ガイルの隣に立つ黒髪の女性がそう言った。
「そう言えばそっちの女の人は一体......」
レイカは黒髪の女性をじーっと見る。
黒髪の女性はレイカと顔、髪型、全てがそっくりだった。
「ま、まさか!?」
「そうだぞレイ、この飛び切りの美人は俺の妻でレイの母親のミーナだ」
ガイルはそう言う。
「お、お母様!?」
「ハハ、私に似て美人になったねレイ」
ミーナはレイカの頭を撫でる。
「ホ、ホントにお母様なの?」
「そうだよ、可愛いレイ」
ミーナはレイカをぎゅっと抱き締める。
「お母様......これがお母様の匂い」
「よしよし、レイはいい子だね」
「お母様......でもどうしてお父様とお母様が......」
「レイが会いたいと思ったから出てきたんだと思う」
ガイルはそう言う。
「僕が会いたいから......そうだよ、僕最近辛いことがいっぱいあって、お兄様には意地悪されるしランドも裏切るし、仲間とも離れ離れになってしまったし、どうすればいいかわからなくて......魔王なんて辞めてしまいたいとちょっと思ってたんだ......」
ミーナに抱かれながら言うレイ。
「レイ......すまなかったな辛い思いをさせて、魔王は別に辞めてしまってもいい、俺の代で途絶えさせるべきだったんだ」
そう優しい表情で言うガイル。
「そう......だよね、僕には魔王は向いてないと思ってる」
「13歳の女の子には荷が重すぎる。普通の女の子に戻ってもいいんだぞ」
「絶対ダメ!!」
しかし、間髪入れずにミーナがそう言った。
「ええ!?」
「お母様?何で?」
驚くガイルとレイカ。
「今辞めればレイはきっと後悔するよ?辞めるのは全然止めないけど、それはしっかりレイが納得出来る形で辞めるべきだと思う」
「納得出来る形......」
「そう!!レイは優しい娘だから心残りがあって辞めたらきっと忘れることが出来ないと思う。それにヴァルロのことなら大丈夫」
「お兄様が?何で?」
「あの子も優しい子、きっと何かの事情があるんだと思う」
「何でそんなことわかるの?」
「母の勘だよ!!」
「えー!!」
レイカは驚きの表情を見せるが、直ぐに笑顔になり、母の顔を見て呟く。
「そっか、僕もそう思う」
「どうして?」
「妹の勘!!」
「そっか、なら大丈夫だね」
レイカはミーナから少し離れた。
「レイ、人生辛いことも楽しいこともいっぱいあると思う。私達があなたといてあげられないのは残念だけど、いつも側で見てるよ」
ミーナは笑顔でそう言った。
「そうだぞレイ、お前はいつだって1人じゃないからな」
ガイルも笑顔でそう言った。
「お父様、お母様、ありがとう!僕、何だか元気出たよ!クヨクヨ色々考えてたけど、まずは僕のやるべきことをやるよ」
レイカも笑顔でそう言う。
しかし、頭にカエデの言葉が過った。
「そういえばお父様、カエデのお父さんと友達って......」
レイカはカエデが言っていた件を聞こうとしたが、やっぱり口を閉ざした。
「どうしたレイ?」
「んーん!何でもない!ちゃんと自分で解決する!」
レイカは今あの事を死んだはずの父に聞いてもダメだと感じた。
「そうか、色々と難題があると思うが、頑張るんだぞレイ」
「ありがとお父様!」
「レイ......」
ミーナはまたレイカに抱き付く。
そして、ミーナは涙を流していた。
「お、お母様!?」
「可愛いレイ......私の大切な娘......もっと一緒にいたかった」
「お母様......」
「ごめんね、何で私死んじゃったんだろ......」
「お母様、僕寂しかったけどお母様のこと恨んだりしたことないよ!!ずっと会いたかった、大好きだよお母様」
「レイ......私も大好きだよ」
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