第86話 レイカの夢
レイカは廊下を歩いていた。
(やっぱりお父様は人殺しをしていたんだ、それは魔王軍のため仕方なかったんだと思う、けど僕は.....平和主義のお父様が好きだった)
トボトボと歩くレイカの目の前に、1つの部屋があった。
そこには音楽室と書かれていた。
(音楽室、確か楽器とかで演奏する場所だよね)
ガララ......
扉を開き、中に入るレイカ。
そこには大きなグランドピアノが置いてあった。
「ピアノ......」
レイカはピアノに近付いた。
「懐かしい、魔王城でピアノの練習させられてたな。確かお母様が元ピアニストでお母様のピアノがあって」
7年前、魔王城。
レイカはランドに教えられ、勉強をしていた。
『勉強つまんないよー』
『お嬢様、勉強しなければ立派な大人に』
『あーもう、わかってるよ!』
レイカは外を見る。
そこには魔王城城下町が広がっている。
『あーあ、町の女の子達は自由で羨ましい』
『......』
『そんな顔しなくてもわかってるよ!町の子には町の子の苦労があるんでしょ』
そう言うと机に向かうレイカ。
コンコンッ!
その時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
『入るよ、ランド、レイ』
ガチャッ!
扉を開けて部屋に入ってきたのはレイカの兄ヴァルロだった。
『お兄様!!』
レイカは立ち上がり、ヴァルロに近付く。
『ヴァルロ様、魔王軍の任務の方は?』
『手っ取り早く終わらせてきたよ』
『そうですか、御苦労様です』
『お兄様!早く終わったなら僕と遊んでよ!!』
レイカはヴァルロの手を握りながら言う。
『お嬢様、勉強が』
『ハハハ、ランドの言う事聞かないとダメだよレイ。それはそれとして、すまないランド、ちょっとお父様から呼び出されていてな、レイを連れていくよ』
『魔王様から?わかりました、では今日のところはここまでとしましょうか』
『そういう事だ、遊ぶ前にお父様のところへ行くよレイ』
『わかった!!』
そうして父で現魔王のガイルの部屋まで移動したヴァルロとレイカ。
『お父様、レイを連れてきたよ』
『おお!!来たかヴァルロ、レイ』
ガイルは自室の椅子に座っていた。
背丈は高くガタイの良い大男だ。
ヴァルロとレイカは部屋のソファーに座る。
『2人とも、今日は何の日かわかるか?』
『今日?お兄様わかる?』
『お母様の誕生日だよ』
『あ、そっか』
『そうだ、今日はお前達の母親ミーナの誕生日だ』
レイカの母ミーナはレイカを生んで程なくして他界した。
レイカは母ミーナのことを覚えていなかった。
『お母様、綺麗な人でピアニストだったって聞いてるけど』
『そうだぞ!レイの母は世界一の美人で世界一のピアニストだったんだぞ!』
『へー、じゃあ何でそんな美人で凄い人がお父様と結婚したの?』
レイカは無垢な顔で聞く。
『そ、それは......ま、まあ俺にそれだけの魅力があったってことさ!』
『へー、そうなんだ』
『それで!!今日呼んだのは他でもない、2人の夢について聞こうと思う』
『夢?』
『ああ、ミーナは2人に夢を持って頑張ってほしいと言っていたからな!それを2人に聞きたいと思う』
『聞くまでもないよお父様』
ヴァルロは即答した。
『僕の夢はお父様のような立派な魔王になることだよ。いや、お父様よりも偉大な魔王となることは僕の夢だ』
『お兄様!お兄様ならきっとお父様より凄い魔王になれるよ!!』
『ハハ、ありがとうレイ』
『ガハハ、それなら魔王軍も安泰だな!俺もまだまだ現役で頑張るつもりだが、息子に引き継ぐのを楽しみにしているぞ!』
『わかったよお父様』
そう言いながら少し微笑むヴァルロ。
『レイは何かあるか?』
『僕はね、えーっと......』
レイカは少し考える仕草を取る。
『お花屋さんにお菓子屋さん、後はパン屋さんや町のガイドさんになりたい!!』
『おお、レイには沢山夢があるんだな』
『でもね!でもね!本当になりたいのは違うの!!』
『ん?本当は何になりたいんだ?』
『秘密!!ヒントはお母様と同じだよ!!』
顔の前で人差し指を立てるレイカ。
『レイ、それはほぼ答えだよ』
『あ......確かに』
『そうか、レイはピアニストになりたいのか』
『うん!だから今頑張って練習してるよ!!』
『そうか、2人とも立派な夢を持ってくれていて嬉しいぞ!天国のミーナも喜んでるぞ』
笑顔でそう言うガイル。
『レイ、前までは僕のお嫁さんになるって言ってくれてたのに』
そう呟くヴァルロ。
『えっ!?だってあれは小さい頃の話だし......兄妹は結婚出来ないらしいし......』
赤くなるレイカ。
『ハハハ、冗談だよ、レイは可愛いな』
『か、からかわないでよお兄様!!』
「そんなこともあったな......」
レイカは昔のことを思い出し、ピアノの前に座る。
「僕、昔はピアニストになりたかったんだ。だけどお父様もお兄様もいなくなって、魔王にならないといけなくなって......」
レイカは鍵盤に触れる。
「まだ弾けるかな......」
レイカは細い指をピアノの鍵盤に乗せ、ピアノを弾き始めた。
レイカの指はしなやかに動き、美しい音色を奏でる。
その音色は教室全体に響き渡った。
すると、レイカの横に薄っすらと2つの人影が浮かび上がってきた。
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