第85話 オバケの森
カエデ、レイカ、リコ、コアネールはエーケバ郊外の森を進んでいた。
「いいね!美少女4人旅!」
レイカはご機嫌に先頭を歩いていた。
「何だかご機嫌ですねレイカちゃん」
「うん!ロイロイも無事ってわかったし、サイちゃんも復活したってわかったし、心配事が無くなったよ」
「魔王なのに気楽ね」
呆れたように言うカエデ。
「最近の魔王はコミカルでないと。っていうかカエデ、その魔王って言うの止めてよ、僕にはレイカって名前があるんだよ」
「魔王は魔王でしょ」
ジーッとカエデを見つめながら言うレイカに対して、目を合わせようとしないカエデ。
「面倒くさい性格だな」
「アンタね!元々私は魔王を倒すために冒険者になったのよ!」
「何でそんな僕を倒したいの?」
「それは......」
カエデは口を閉ざす。
「まあまあ、仲良くしましょうよ、ね?」
それをリコが仲裁する。
「まあ僕はカエデが僕のこと嫌いでもしつこく付き纏うけどね!」
「べ、別に嫌いって訳ではないけども……」
「じゃあ好きなの?」
「アンタね......」
「そう言えばオバケの森に入って結構経つけど、怪奇現象の1つも起きないね」
キョロキョロと周りを見渡すレイカ。
それを聞いて、動揺した表情をするカエデ。
「な、何言ってんのよ、オバケ何かいないわよ幼稚ね」
「えー、オバケはいるよー」
「いないわよ!非科学的ね!」
「ほら!カエデの後ろに!!」
レイカがカエデの背後を指差す。
「きゃっ!!」
カエデは頭を抱えてうずくまった。
「うう......」
「じょ、冗談だよ。ごめんねカエデちゃん」
レイカはあまりにも怖がるカエデに手を差し伸べる。
「何でそんな冗談言うのよぉ......」
カエデはレイカの手を掴み、立ち上がった。
((可愛い......))
その姿を見ながら思うリコとコアネールの2人。
「大丈夫だって、心霊現象のほとんどがプラズマだって言われてるから」
「プ、プラズマ?」
「水って加熱すると気体になるでしょ?この気体をさらに加熱すると、原子を構成しているプラスの原子核とマイナスの電子がバラバラになって、飛び回るんだ。 この状態がプラズマって言うんだけど、その発光体が人の姿とかに見えて霊とか言われてるんだよ」
レイカはカエデにペラペラと言い聞かせるように言う。
「ほ、本当?」
「そそ、後は心理的要因とかね。怖い怖いと思ったりストレスを抱えている状態で幻覚を見たりとか、そんなとこだよきっと」
「そ、そうね!怖いと思ってるからそう見えたりするだけだわきっと!」
「全く、カエデって意外と乙女なんだね......え?」
その瞬間、レイカは一瞬にして姿を消した。
「へ?魔王?」
カエデはレイカが消える瞬間を目の当たりにし、キョロキョロとレイカを探す。
「何で!?さっきまでここに......きゃっ!!」
すると、カエデも一瞬にして姿を消した。
それに気づかず歩くリコとコアネール。
「コアネールさんはオバケとか怖いですか?」
「オバケより生きている人間の方が怖いですの」
「齢16歳にしてスゴいこと言いますね」
「まあこれでも王族ですから、汚い大人の世界は嫌というほど見てきましたわ」
「そうなんですね、私はオバケよりサソリが怖いですね」
「サソリ?」
「デザール村にはデザールスコーピオンという猛毒のサソリが沢山いましたから、一度山の中で刺されて生死の境を彷徨ったことがあります」
「あなたの人生もなかなかのものですわね......」
「あれ?」
リコは後ろを振り向く。
「レイカちゃんとカエデさんがいないです」
「ほ、本当ですの!あの白黒コンビ一体どこ行ったですの?」
「あいたた......」
カエデはお尻についた土を払いながら立ち上がる。
「大丈夫?魔王?」
「何とかね」
その隣にはレイカが立っていた。
「これ落とし穴だね、だいぶ深くまで落ちたね」
レイカは上を見上げる。
そこは地上まで20mほどの穴だった。
「け、結構深い穴ね......」
「一体何でこんな穴が......まあいいや、ちょっと飛んで助けを呼んでくるよ」
レイカは翼を広げて穴の上に登ろうとした。
「待ってよ!!」
しかし、カエデがレイカの翼を掴んで止める。
「いてててて!!」
レイカは翼を畳んで地面に降りた。
「ちょ、ちょっと!翼は敏感だから引っ張らないで!!」
「そ、そうなの?ごめん」
「良いけど、何で止めたのさ!」
「だ、だってここ暗いし......」
「でもこのままだと助け呼びに行けないじゃん!!」
「そ、それはそうだけど......」
俯き震えるカエデ。
それを見て母性を擽られるレイカ。
「わかったわかったよ、どこにも行かないから怖がらないの!」
「こ、怖くなんかないけど......」
「いつもはクールビューティーなのに......ん?」
レイカが目を凝らして見ると、穴を進んだ先に地下通路があった。
「何か道になってるね、もしかしたらあっちから出られるのかも」
「ほ、本当?全然見えないけど」
「魔族の目は人間より暗闇が良く見えるからね」
レイカは地下通路に向かって歩いていく。
それに付いていくカエデ。
「そう言えばあなた魔族だったわね」
「魔王魔王って呼ぶくせに忘れないでよ!まあでも最近の魔族は暗闇があんまり見えないんだけどね」
「そうなの?」
「昔は敵を闇討ちするために夜行性だったんだけど最近昼行性の魔族が増えてるから、まあ人間の近眼みたいなもんだよ」
「そんなもんなんだ......」
地下通路を進んでいく2人。
その先には扉があった。
「扉ね......何なんだろここは?」
「わからない......何か使われていない施設なのかな」
レイカは扉を開けて進む。
その扉の奥はまるで学校の廊下にような通路だった。
「学校......みたいね」
「学校ってこんななの?」
「そうよ、魔王は学校行かないの?」
「行ってなーい、ずっと魔王城に住んでたよ」
そう言って歩くレイカ。
その背中を見つめるカエデ。
「その割には結構博識よねあなた」
「魔王城で英才教育受けてたからね、カエデは普通に学校行ってたの?」
「私の故郷田舎だから、小さいところだったけど何人かの子どもが集まって勉強はしてたわね」
「ふーん、いいなー、魔王城は大人ばっかりだから、しかも男ばっかり、友達とか全くいなかったんだよね」
『イカちゃんとリアは離れてても親友だよ!』
ふとリアのことを思い出すレイカ。
(初めて出来た親友......)
そう思い少し笑うレイカ。
「私の故郷だって歳近い子どもなんて少なかったけどね」
『離れてても親友だよ!カエデちゃん!』
カエデも昔のことを思い出す。
そして静かに首にかけているペンダントを握った。
「......」
「そのペンダントって闇魔力に反応するって言ってたよね?カタスモンドで出来てるってことだよね、めちゃくちゃ高価なんじゃないの?」
レイカはカエデがペンダントを握るのを見て言った。
「そうよ、親友の形見だから」
「......そう」
レイカは口を閉ざした。
「魔王、私が魔王を倒したがる理由、聞きたがってたわよね?」
「別に無理には言わなくていいけどね、ただ僕はカエデとも友達になりたいから教えてほしい」
「わかったわ、少し黙って聞いててほしい」
カエデは深呼吸をしてから話し始めた。
「......このペンダントは親友の形見、そしてこの刀は父親の形見、2人共魔王軍に殺されたの」
「え......」
「10年前ね、このペンダントの元持ち主は私の剣のライバルであり唯一の親友だった、その子は家庭の事情で帝都ニューペルシアルに引っ越してしまったの、その移動中に魔王軍によって殺された」
「......」
「その子の親は帝国軍の有名な学者だった、帝都に引っ越すのもその研究が認められて帝都の研究所に行くことになったから、その研究は帝都に絶大な力を及ぼす物だった。だから魔王軍に殺されたの、その巻き沿いで子どものその子も殺されてしまった」
「......」
カエデが淡々と話す。
それをレイカは静かに聞いていた。
「もう1つ、私のお父さんは剣の達人で帝国軍の兵士だった。それで魔王討伐のための冒険者に選ばれて旅を始めた。その後、お父さんは帰ってくることはなかった」
「......」
「噂によるとお父さんは魔王に殺されたと聞いた。その2つが私が魔王を倒したがる理由よ」
「......」
すると、それを聞いていたレイカは静かに涙を流していた。
「......ただもうあなたを倒したいとは思ってないわ、普通に考えて10年前の出来事であなたはまだ魔王じゃなくて幼い子どもだっただろうし」
「......10年前だと魔王は僕のお父様だよ、だけどお父様は平和を願っていてそんなことすると思えなかった」
レイカは涙を流しながら静かにそう言った。
「魔王......」
「お兄様もランドも、みんな平和を目指すなら帝国軍を倒すしかないと言っていた。けどお父様は違って、平和主義者だった。尊敬していたし、立派な魔王だと思ってた......」
「.......」
「やっぱりそうなのかな......魔王は人を不幸にしなければいけないものなのかな」
レイカは涙を拭きながらトボトボと歩いていく。
「魔王、どこへ......」
「ちょっと1人にして......」
そう言うとレイカは廊下を歩いて行った。
「魔王......」
やはり今の話はするべきでなかったかと思うカエデ。
(そりゃ、自分のお父さんが人を殺していたと聞いたらショックよね......あの子は何も悪くのに)
カエデはグッと目を閉じる。
(やっぱり放っておけないわ!あの子は悪い子じゃない、きっと友達に......)
ピトッ!!
レイカを追いかけようとするカエデの肩に何かが乗った。
「へ?」
それは白い手だった。
「へ?へ?へ?」
カエデは背後を見ると、無数の白い手が地面から生えていた。
「ハ、ハハハ......ハハ」
カエデはその瞬間走って逃げる。
「きゃあああああああ!!オバケぇぇぇぇ!!」
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