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第8話 無属性の落ちこぼれ

「ク、クソ!攻撃が通用しない......どうすれば......」



ガイは大剣で斬りつけながら呟いた。


「だ、だがお前も防戦一方、このまま剣での攻撃を続ければ魔力切れで勝てるはずだ!」


そう呟きながら、双剣で斬りかかるアクセル。当然ランドさんのシールドに防がれ続ける。


「もう少し遊んでやりたいが、俺も時間がなくてな。一瞬で終わらせてやろう」


ランドさんは目を瞑り、腕を組ながらそう呟く。



「こっちは3人!そんなこと出来るわけ......」


「ふんっ!!」



その瞬間、ランドさんは目を開く。



ボッ!!!


それと同時にランドさんの身体から凄まじい勢いの衝撃波が発生した。



「「ぐあっ!!」」



その衝撃波はアクセル、ガイを吹き飛ばす。


「え......」


そして、そのまま少し離れたエミリーの位置まで轟音と共に衝撃波が飛ぶ。


「きゃあああっ!!」


エミリーも衝撃波が直撃し、吹っ飛んだ。



その衝撃波の勢いと轟音により地面が大きく揺れ、まるで爆発が起きたようである。



当然、その衝撃波を至近距離でくらった侵入者の3人は無事で済む訳がなく、吹っ飛んで壁にぶつかり、3人とも倒れピクリともしない。


本当にさっきの衝撃波一撃で侵入者を全滅させたランドさん。



強すぎる......ランドさんは戦闘開始から一歩も動いていない。


「なーんだ、呆気なかったね」


隣にいる魔王様はつまらなさそうに、そう呟く。


確かに一撃粉砕したが、俺はあんな戦い見たことがなく今も心臓がドキドキしている。


「い、いやいや!スゴすぎますよランドさん!あの防御魔法に最後の衝撃波、あんなの見たことないですよ!」



俺は興奮したように言う。


それを聞くと、魔王様は銅像に空いた穴から顔を離し、俺を見る。



「いや、ランドは防御魔法しか使ってないよ」


「へ?」


「さっきの衝撃波は防御魔法で起こした衝撃波なんだ。2つのシールドを作り、その2つのシールドの間の空気を極限まで圧縮して、一気に放出する。それがさっきの衝撃波」


魔王様は目を穴の方に向けながら言う。


「え、じゃあホントにランドさんは防御魔法しか使ってないのですか!?」


「うん、て言うかランドは防御魔法しか使えないの」


「へ?」


俺は呆気に取られたような表情をした。


魔王城の第1魔将が防御魔法しか使えないだって?


そんな訳......


「ランドは無属性者だし他に特殊魔法を使える訳でもない。けど防御魔法を極限まで極めた絶対防御と逆にシールドを攻撃に利用するアイデアで魔王城の第1魔将になったんだ」



魔王様は「どうせなら僕の右腕はサイちゃんみたいな巨乳で可愛い子がいいんだけどね」と続けるが、明らかにランドさんを信頼している様子が伝わってくる。


そうか、無属性者でもあれだけ強くなれるんだな......



そう思っていると、いきなり俺達が隠れている銅像が上に持ち上げられた。


「あ」


俺と魔王様の姿は外から丸見えになり、銅像を持ち上げた人の姿が見える。


そう、ランドさんである。



「戦闘中から気がついていましたが......魔王様、またこんな通路を作っていたのですか」


ランドさんは呆れたように言う。さっきまで戦闘していたとは思えないぐらい余裕がある佇まいである。


「い、いやー、もしものときのためにね」


魔王様は冷や汗を垂らしながら言い訳した。


まるでお母さんに悪戯がバレたこどものようである。


「魔王様はもう少し魔王らしい振る舞いをしてください」


「わ、わかってるよ!」


怒られて少しスネた様子の魔王様。


「それとお前は新人だな」


ランドさんは俺に目を向ける。

その眼光は鋭く俺は少したじろいだ。


「は、はい、ロイと申します」


「お前も魔王様と一緒になって何をしている。仕事はどうした?」


また腕を組ながら言うランドさん。


「え、えと......それは」


「違うんだランド。ロイロイは僕が無理矢理連れてきて......」


魔王様が俺を庇ってくれた。


「魔王様は黙っていてください」


「えー!」


そう言われて古いリアクションをする魔王様。


「ロイ、いいか?お前は魔王城の使用人だが、魔王様のアシスタントという立場だ」


「はい......」


「魔王様はまだまだ幼い」


「幼くないよ!!」


「そういうところをサポートするのもお前の仕事だ。誘われたからと言って一緒になって遊んでいてどうする」


「ちょっと待って僕の方が上司だよね!?」


魔王様の発言を無視し続けるランドさん、確かにどちらが上司かわからない。


「はい、す、すいませんでした」


俺は少しショゲた様子で謝る。


「全く......それに魔王城で働くというのはこうやって侵入者と戦ったり遠征に行ったりすることもある。そんな軟弱者のままでは務まらないだろ」


「は、はい......」


「そんなこと言ったらロイロイが可哀相でしょ!!」


魔王様が腰に手を当てながら、ランドさんに言う。


ま、魔王様......俺を庇って......


「確かにロイロイは顔もカッコよくないし、弱いし、身長もそんなに高くないけど!!」


「ま、魔王様......」


俺はガックリする。


はいはい、どうせ俺は非モテブサメンですよー!


「とにかく、今の採用担当のサイがなんでお前のような軟弱者を雇ったのかは知らないが、解雇する権限は俺にある。精々解雇されないように頑張るのだな」


そう言いながら、後ろを振り返り、倒した侵入者達の方へ向かうランドさん。


「ベーッだ!あんなのほっとけばいいよロイロイ」


そう言う魔王様だが、確かにランドさんの言う通りである。


ランドさんも俺と同じ無属性者なのにあんなに強く、頼れるリーダーだ。俺は無属性なのを言い訳に今まで何もしてこなかった落ちこぼれである、言い訳のしようがない。

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