第75話 魔王と王女と田舎娘
「ちょ!コ、コアネールさん!?」
「成長してる奴が成長するだけですの!!」
「や、奴って!コアネールさんのそんな言葉使い初めて聞きました!」
「......う、ううん」
そんなこんなで私とコアネールさんがイチャイチャしていると、焚き火の前で寝ていた女の子が目を覚ました。
女の子は目を開けると、やはりパッチリおめめで瞳は黒くとても可愛い美少女だった。
「ぼ、僕は一体......」
「目を覚ましましたか」
「え?」
コアネールさんが女の子に声をかけると、女の子は少し驚いた風に私達を見た。
「え、えーと......」
「私はコアネールという者です。こっちはリコ、貴方あっちの川から流れてきたんですのよ?」
コアネールさんは女の子が流れてきた川を指差しながら言った。
「川......流れてきた......」
その瞬間、女の子はハッとしたような表情を見せる。
「ロイロイ......お兄様......ランド.......」
すると、女の子は顔を押さえて泣き始めた。
私とコアネールさんは顔を合わせる。
「大丈夫?どこか痛いですの?」
「......」
返事をしない女の子。
「コアネールさんが怖いの?コアネールさんは顔はキツそうだけど優しい人ですよ?」
その瞬間、コアネールさんは私のほっぺをつねる。
しかし、女の子の反応はない。
「......ごめんなさい、少し1人にしてください」
女の子は苦しそうな声でそう言う。
私とコアネールさんは再び顔を見合わせた。
「わかりましたの。私達あっちで魚釣りやってますから、落ち着いたら話を聞かせてくださいね」
すると、女の子は顔を覆いながらコクコクと頷いた。
それを見ると、私とコアネールさんは川の方に歩いていった。
今はそっとしておいて上げた方がいいとコアネールさんも判断したのだろう。
そして、私とコアネールさんは魚釣りを再開した。
「まあ川から流れてくるなんて普通ではありませんからね、何かがあったのでしょう」
「そうですね......」
僕は身体を丸めて泣いていた。
僕はお兄様に負けた。
ロイロイの仇を取れなかった。
ロイロイ、死んじゃ嫌だよ......ロイロイは僕を守ってくれようとしたのに。
これでロイロイが死んじゃったら僕は......
お兄様、完全に僕の敵になっちゃったの?優しかったお兄様はどこ行っちゃったの?お父様を悪く言うお兄様なんて見たくなかった。
ランド、今まで僕の世話をしてくれていたのは嫌々だったのかな。喧嘩したり反発したりしてたけど僕は信頼していた。お父様のようだと思ってた。
サイちゃん、魔王城のみんな、僕は一体どうすればいいの?
数々の思いが僕の中で交錯していた。
後悔しかない。
まずお兄様の幻影を追って、しかもランドに何度も静止されたにも関わらず僕はお兄様の元へ駆け寄った。
だけど、結果はロイロイを傷付け自分も傷付いただけだった。
僕は魔王の才能がない。
他者を統率する能力がないのもわかってる。それに元々お父様もお兄様が魔王になると考えていた。
僕は普通の女の子として幸せになるのだろうと思ってた。
魔王城のみんなは大好きだ。だけどお兄様が言うように帝国を倒したいだとか世界を変えるとかわからない。
一体これから僕はどうすればいいの......
「お嬢ちゃん」
僕は目を開けた。
僕は疲れて寝てしまっていたようで、辺りはすっかり夜になっていた。
目の前ではさっきいたポニーテールの女の子が笑顔で僕を見ている。
「私達ご飯にしようと思うけど、お嬢ちゃんも一緒に食べない?」
「......いらない」
ぐうぅ......
その瞬間、僕のお腹が鳴る。
僕はしばらく何も食べていなかった。
「ほら、お腹空いてるんだよね?お姉さん達と一緒に食べよ?」
「......」
僕は助けてくれた女の子2人と共に焚き火の前に座った。
ポニーテールの女の子はリコ、カチューシャの女の子はコアネールと言うらしい。
「はい!今日のご飯は新鮮な河魚と取れたて山菜だよ!」
リコは焚き火で串に刺して焼いた魚とカゴに集めた山菜を目の前に置いた。
「お魚も何とか3匹釣れて良かったですの。ほらお嬢ちゃん、食べなさいな」
コアネールは僕に焼いた魚を手渡す。僕はそれを黙って受け取った。
「......あ、ありがと。でもこれってどうやって食べるの?」
「こうやってかぶり付いて下さいな」
コアネールは魚にかぶり付き、食べる。
「骨があるから気を付けて食べて下さいですの」
「コアネールさんもだいぶ野生生活慣れてきましたね」
「う、うっさいですの!」
「ん」
僕はゆっくり魚にかぶり付いた。
「美味しい......」
「でしょ?私が採った山菜も美味しいから食べてね!」
リコは嬉しそうにニコニコしながら言う。
「......リコ、コアネール、二人ともありがとう、助けてもらったお礼も言えてなかったね」
そう言って頭を下げる僕。
二人が助けてくれなかったら死んでいたかも知れない。
「いえいえ、世の中助け合いですわ」
「本当にありがとう。僕の名前はレイカ、この恩は必ず返すよ」
「お返しなんていいですよ。レイカちゃんだね、よろしくね」
「うん、よろしくリコ。それとさっきから気になってたんだけど......」
僕はコアネールをじーっと見つめる。
「コアネール・サン・サンベルス、サンベルスの王女でサンベルス国王ロドロスの娘」
さっき名前を聞いたときから気になっていたが、聞いたことある名前と顔だった。
「はい、その通りですの」
「コアネールさんを知ってるの!?」
「う、うん、最高学府のサンベルス国立大学の医学部を最年少首席で卒業して、さらに在学中一級帝国司法試験に合格した、次期皇帝に相応しいと噂される天才美少女王女様」
「え!?コアネールさん一級司法の資格も持ってるんですか!?しかも次期皇帝って!?」
僕が言ったことにリコがビックリする。
「ま、まあ、次期皇帝というのは噂レベルのものですけど!基本は世襲ですから」
「マジですか......コアネールさんが天才少女王女様だったなんて」
「美を付けるですの美を!」
「でも何でそんな凄い人がこんな極貧の文無し生活してるんですか?」
「貴女のせいで極貧の文無し生活してるのでしょうが!!」
コアネールはリコのほっぺをつねる。
「いひゃい、いひゃいれふ」
「ぷっ!!」
僕は二人のやり取りを見て吹き出して笑った。
「アハハ、二人ともありがとう。何だか元気が出たよ」
「やっと笑ってくれましたね!笑った方が可愛いですよ」
「ありがとうね、僕ちょっと嫌なことがあって落ち込んでたんだけど元気出たよ」
僕は二人に向かって笑いかける。
二人はそれを見て、キュンとしたように僕を見つめるが、ブンブンと首を振って打ち消した。
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