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第7話 魔王軍の戦い

「おっ!もう戦闘が始まってるじゃん!」


魔王様は楽しそうに言う。


魔王様は無邪気で可愛いなー。


「侵入者がボコボコにされてもランドがボコボコにされても面白いから楽しみだね」


全然無邪気じゃなかった。


それはさておきエントランスの状況だが、ランドさんが何かを話しているようだ。


「ふん、ここまで来たのは褒めてやろう。だが、悪いことは言わん、今すぐ立ち去れ」


そう目を瞑りながら言うランドさん。


その声は野太く、迫力のある声である。


すると、突然魔王様がフフッと声を抑えながら笑い出した。


「フッ!『ふん、ここまで来たのは褒めてやろう。だが、悪いことは言わん、今すぐ立ち去れ』だって!!くっさー!よくあんな臭いセリフが吐けるね!プププ!!」


っと言う魔王様。


最低だ、魔王軍第1魔将のランドさんの戦闘なのにこの人のせいで全く手に汗握らない。


続いて、侵入者が話し出す。


「貴様は魔王軍第1魔将ランドだな!いきなり魔王軍2番手と会えるなんて、ツイてるぜ!」


と言う侵入者のリーダーっぽい長髪の男。両手に細長い剣を持ち、いかにも強そうだ。


両脇には魔法使いっぽい女性と、大剣を持った大男いた。素早い近距離双剣使いに遠距離支援の魔法使い、そしてパワーがあるアタッカーとバランスの良いパーティーであることが伺える。


「魔王様、アイツらめちゃくちゃ強そうですけどランドさん一人で大丈夫なんですか?」


俺は心配になって聞く。


「ププッ」


魔王様はまださっきのランドさんの臭いセリフで含み笑いをしていた。

いつまで笑ってんだよ!そんな面白くねーだろ!


「『いきなり魔王軍2番手と会えるなんて、ツイてるぜ!』だってさ!敵もさる物だね!」


「魔王様、あの侵入者めちゃくちゃ強いんしょ?ランドさんのこと心配じゃないんですか?」


「あーごめんごめん僕結構笑い上戸で、まああれぐらいの相手ならランドなら相手にならないよ」


魔王様はヘラヘラしながら言う。

何をヘラヘラしてるんだこのメスガキ。


どうやら魔王様は一度笑い出したら止まらないタイプらしい。所謂ゲラってやつか。


それにしてもあの強そうなパーティーが相手にならないなんて考えられないのだが......


「さあ、無駄に時間がかかるのは避けたい。まとめてかかってこい」


ランドさんは腕を組ながら言う。


「『さあ、無駄に時間がかかるのは避けたい。まとめてかかってこい』だって!プププッ!!」


さあ!いよいよ戦闘開始だ!!



冒険者達は一斉に武器を構える。やはり双剣、杖、大剣をそれぞれ構えた。


「行くぞ!エミリー!ガイ !」


「うん!アクセル!」


そう言いながら走り出す冒険者達、どうやらリーダーっぽい双剣使いはアクセル、魔法使いはエミリー、大剣使いはガイと言うらしい。


そして、まずはアクセルが素早い動きでランドさんの間合いに入り、両手の剣を大きく振りかぶる。



速い......俺も見切れなかったが、ランドさんも見切れていないようで微動だにしない。



「もらった!!」


そして、振りかぶった双剣をランドさんに向かって振るアクセル。



その双剣はランドさんの腰の辺りに直撃した、ように見える。



「ラ、ランドさん!」


「しーっ!大丈夫だって!」


思わず声を上げる俺に対して、冷静に俺の口を押さえる魔王様。



だってどう見ても冒険者の攻撃がランドさんに......



そう思っていると、アクセルは剣をランドさんから離し、少し後退して距離を取る。


そして、アクセルはランドさんをじっと見る。ランドさんはまだ腕を組ながらじっとしているし、斬られた様子もない。


どうなってる?


「エミリー、ガイ、気を付けろ、コイツ防御魔法使いだ」



そう言うアクセル、防御魔法使い?



「ま、魔王様、なんでランドさん斬られたのに平気なんですか?」


「んー?まあランドの斬られた辺りをじーっと見てみなよ」


「へ?」


俺は目を凝らし、ランドさんが斬られた辺りを見る。そこには薄く何か10cm四方の透明な壁が見える。



「ランドは防御魔法の使い手、僕の魔法でも防ぎきる強固な魔力シールドを自由自在に操る。魔王軍屈指の絶対防御だよ」


そう言う魔王様。


魔力のシールドを生成しているのか!


この世界の魔法には通常魔法と特殊魔法の二種類がある。


通常魔法は火や水など、個人が持っている属性を魔力を使って具現化し、放ったり形を留めて武器や盾にしたりするもの。


一方、特殊魔法は魔力を使い、様々な現象を引き起こす魔法である。それは属性に限らず工夫次第で何でも出来る。想像力の問題でもある。


だが、通常魔法は属性さえ持っていれば簡単に使えてしまうが、特殊魔法はそうはいかず使える者は極小数である。


あの防御魔法は特殊魔法に当たる。



「どうした?来ないのか?」


ランドさんは挑発する。


「こんなシールド!俺の攻撃なら!」


大剣を持った大男ガイが大剣を大きく振りかぶりながら、ランドさんに向かって走る。



あの2mはあろう大男があのバカデカい剣を振ったらその威力はとてつもないだろう。


「おらあああ!!」


大声を上げて、大剣を振るガイ。



その大剣はランドさんの顔目掛けて振り下ろされる。


ドゴッ!!


っと言うまるで岩と岩がぶつかったような音がコダマした。俺は思わず目を一瞬閉じてしまった。


しかし、目を開けると大剣を振り抜けず、止まっているガイがいた。


「ぬ、ぬう......」


ガイの大剣はランドさんの顔ギリギリでシールドに防がれて動かない。



「ほう、なかなかの威力ではないか」


「ク、クソ!俺の攻撃でもダメなのか!」


「それならこれでどうだ!!」


その声はランドさんの背後から聞こえた。



ランドさんの背後にはアクセルが回り込んでいた。ガイの攻撃の間に素早い動きで回り込んでいたのだ。


アクセルは素早い身の熟しで、双剣を振るう。


ガキッ!!


しかし、それも結界により防がれる。


「なっ!!」


ランドさんの前にはガイの大剣を防ぐシールド、背後にはアクセルの双剣を防ぐシールドが出来ている。


「ただでさえ難しい防御魔法、同時に2つシールドを作るなんて不可能だろ!」


そうだ、特殊魔法は前述の通り難しく、針の穴を通すような技術が必要である。


2つシールドを作るのは複数同時に針の穴を通すのと同じぐらい難しいのである。



「貴様達には難しいかもな。俺にとってはこんなものどうとでもない」


ランドさんは戦闘が始まった当初から腕を組ながら目を瞑り、微動だにしていない。


それはまるで佇む大岩にようだ。



「ならこれでどう!?」


魔法の使いのエミリーが杖をランドさんに向ける。


「はあっ!!」


そう言うと、エミリーの杖からは火の玉が出現し、スゴい勢いでランドさん直進する。




ドゴッ!!


その火の玉はアクセルとガイの丁度間を通り抜け、ランドさんに当たって煙が上がる。


あれだけの魔法コントロールは高い技術を持っていないと出来ないだろう。相当なレベルの魔法使いだ。




そう思っていると、上がった煙は徐々に薄くなり、消える。


煙が消え、見えたのはガイとアクセルの剣をシールドで防ぎながら、火の魔法も結界で防いだランドさんの姿だった。



「なっ!3つのシールドを同時に!?」


それを見て驚くエミリー。



それもそのはず、まだランドさんは一歩足りとも動いていない。しかし、自分達の攻撃が全く通用しないとなれば勝ち目がない。まさに絶対防御である。

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