第51話 それぞれの旅
ドタドタ!
木造の古い家屋、その廊下を走る少女がいた。
『お父さん!剣の大会で優勝したよ!』
その少女は嬉しそうに手に持ったトロフィーを男に見せていた。
『なんだ、そんなもので喜ぶんじゃない』
男は少女からトロフィーを取り上げる。
『あ......』
『お前には勇者の血が流れているのだ、こんな町の大会勝って当たり前だ』
そう言うと男は少女を追い出し、扉を閉める。
いつもこうだ。
勇者の血が流れているとか言ってろくに誉めてもくれない。
他の子の父親は優勝しなくても誉めてくれるのにウチの父親は......
こんな父親.......
『うおー!ご先祖様!娘がまた剣の大会で優勝しました!これもご先祖様のおかげです!』
こんな父親.......
「.......」
目の前には高い綺麗な天井。
私が住んでいた田舎の古い天井とは大違いな綺麗な天井である。
「目が覚めましたですの?」
声をする方を見るとそこにはコアネールの姿があった。
「コアネール......私は」
「あんまり身体を動かさないで下さい、しばらく安静が必要ですの」
私は自分の身体を見る。
右脚と顎、そして胸の上部に包帯が巻かれていた。
そうか、私カードのジャックと戦って......
「コアネール、あれからどうなったの?」
それから私はコアネールから事の顛末を全て聞いた。
何とか私が持ち堪えることが出来たこと、そしてロイが2日前から消息不明になったこと。
「サンベルスから出るなと言いましたのに、全く帰ってこなくなりましたの」
「そう......」
もしかしてロイは私を見限って出ていってしまったのかな。
ここ最近喧嘩ばかりしてたからね。
自分でも自分が可愛くない女だと思う。
「いなくなる前は何か強くなりたいとか何とか言っていましたが......一体どこへ行ったのやら」
「強くなりたいか.......」
私も子どもの頃から強くなりたいと願い、必死に修業した。その結果町ではまず負けないぐらいには強くなった。
そしてお父さんの仇を討つことを決めた。
だけど、今回の事件のように帝国の闇の部分はある。全てが帝国が正しく魔王が間違っている訳ではないと理解はしていた。
今後また今回のようなケースがあった場合、私はどちらの味方をすればいいのだろうか。
「まあ軟弱さんのことはサンベルス国内を探してみます。どの道そのケガでは最低1週間は安静が必要だと思いますし」
「そうね、ありがとうコアネール」
1週間後、結局ロイは見つからなかった。
私のケガは完治し、私は旅を再開することにした。
「銀髪さん、本当にありがとうございました。軟弱さんのことは見つけられなくて申し訳ございません」
サンベルスの外門でコアネールが見送りに来てくれた。
「そんなことないわよ、こちらこそ今回の件は色々と自分を見つめ直すきっかけとなったわ」
「あの.......銀髪さん」
コアネールは何やら心配そうに言う。
「どうしたの?」
「軟弱さんのことはもう諦めたですの?」
そう言うコアネール。
その様子はロイのことを心配しているようだ。
一国の王女様に心配して貰えるなんて幸せ者ねロイ。
「もう知らないわよ、あんな奴」
私は冷たく言い放つ。
「そうですか.......」
「はあ......」
私は溜め息をつく。
「まあ、旅をしながらロイを探してみるわ。このまま死なれたら胸くそ悪いしね」
私は目を反らしながらそう言う。
それを聞いて、コアネールはパッと明るい顔を見せる。
「はい!銀髪さんと軟弱さん、スゴくお似合いだと思ってますの!」
「お、お似合いって!私とロイはそういうのじゃ......」
「フフッ!照れている銀髪さんも可愛いですわよ」
「コアネール......実はそういうキャラだったのね」
しばらくコアネールと話した後、私はサンベルスを後にした。
西へ向かいつつロイの情報を集める。
しばらくはそうやって進んでいこうと思う。
色々迷ったがどの道、私は魔王と戦わないといけない。
私はお父さんの仇を討つ。
コアネールですの。
銀髪さんを見送り、私は帰路についていた。
銀髪さんも軟弱さんもそれぞれ頑張っている。
私も王女としてサンベルスを良くしていく。
そのためにまだまだ学ぶべきことが沢山あります。
私はサンベルスの西側にある川を見た。
サンベルスは周りの自然にも河川にも恵まれた広大な国。この国をもっと豊かにするために私は尽力していきますの。
そうそう、まだまだあの小船で寝ている女の子のように貧しい子どもがいますか......ら?
川の端に停船されている小船の上に1人の少女が眠っていた。
ま、まさか.......死んで.......
「ちょ、ちょっと!そこのあなた!」
私は小船に乗り込み、少女を揺らした。
「う、うーん.......」
「よ、良かった!生きてるですの!」
少女は目を開いた。
「こ、ここは......貴方は天使様ですか?」
私を見るやいなやそう言う少女。
少女は栗色のポニーテールを三つ編みにした髪型をしている。
そして麦わら帽子を被っていた。
「しっかりしなさいな!ほら、起き上がって!」
私は少女を支え、座らせた。
「あー、ありがとうございます」
「どうしたのですか、何故こんなところで眠っているですの?」
「いやー、私デザール村から旅を始めたリコ・モイネモという者なのですが」
少女は語った。
サンベルスの近くのデザール村から旅を始め、サンベルスまで到着したのはいいが、宿に泊まるお金が無く、気持ち良さそうだった小船の上で仮眠を取っていたとか。
そして、何と彼女は3日水だけで過ごしていると話した。
「貴方、そんな準備で旅なんて無茶ですの!」
「はい、貧乏には馴れているのですが、サンベルス近郊は狩りが禁止なのを知らなくて......」
「狩りって.......あなたみたいな子どもが?」
「子どもじゃないですよ!それにデザール村では5歳の頃から狩りを教わりますよ!」
「そ、そう......なんですの?」
私は近所の村の文化さえ知らなかった。
やはり、私は世界を知らない......
「と、とにかく!サンベルス城に行くですの!何か食べる物を」
「はい、それは嬉しいのですがどうやって戻りますか?」
「え?」
私は後ろを見る。
私の背後には数十メートルほど離れた位置にサンベルスが見えた。
どうやら知らない間に小船が川に流され、進んでしまっていたらしい。
「ちょ、ちょ、ちょっと!いつの間に進んでいたですの!?」
「さっきですね」
「戻るですの!」
「この川の流れの速さでは戻るのは無理ですね。オールもないことですし」
と言う謎の貧乏少女。
川の流れは速く、確かに戻るのは難しい速さであった。
「じゃ、じゃあ仕方ないですが泳いで陸地に渡るですの!」
「この川の速さで飛び込んだらそれこそ溺れてしまいますよ」
「うう......」
冷静さを失っていたが、確かにその通りだ。
それに王女が川でびしょ濡れになって城下町を歩くなんて恥ずかしい......
「ど、どうすればいいですの天然娘さん!」
「私天然じゃないですよ?」
「天然の人はみんなそう言うですの!そんなことよりこのままではヤバいですの!」
「このまま小船に乗っていればいつか止まったり、引っ掛かったりするかもですね」
「止まらなければ?」
「大海原へまっしぐらです」
「お、下ろしてですのーーーー!!」
こうして、それぞれの旅が始まるのであった。
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