第5話 最強魔王軍
「私は危険度SSクラスに定められているぞ?」
その夜、俺はサイさんに気になって危険度を聞いてみたのだが......
いたよ危険度S以上の人......
「この城にいる者達はほとんどA以上のモンスターだ。まあモンスターじゃない者もいるがな」
サイさんは廊下の窓拭きをしながら言う。
なんで危険度SSの人が窓拭きをやってるんだ。
「え、じゃあSSSの人もいるんですか?」
「ああ、SSSは魔王様の右腕のランド様だけだがな」
魔王様の右腕のランドさん、会議などでいつも魔王様の隣にいる熟年の騎士だ。魔王城の中で最も厳しい人である。噂では魔王の仕事は全部ランドさんがやっているとか。
「SSは私とゴラドという巨体の男と今は城にいないキザという男だ。この四人で魔王四天王言われている」
魔王四天王......恐らく魔王軍で最も強い四人ということになる。
恐ろしくそのまんまなネーミングだなっと思ったが言ったら怒られそうだったから止めた。
目の前の巨乳お姉さんがそんなに強いなんて信じられないな。
って、あれ?そういえば......
「じゃあ魔王様はどうなんですか?SSSのランドさんも従う絶対的魔王なんだから最強なんじゃないんですか?」
そうだ、ランドさんも魔王四天王も魔王様の手下である。そんな魔王様はどうなのか気になった。
「ま、魔王様か?」
サイさんは顔を引き摺らせながら言った。
あれ?なんか言いづらいことでも聞いたか?
「僕がどうかした?」
そう思っていると、俺とサイさんの後ろに魔王様が立っていた。
魔王様は基本的に暇を持て余していて頻繁に遊びに来る。恐らく魔王の仕事はランドさんが全てやっているのでやることがないのであろう。
「あ、魔王様、ちょっと聞きたいことがあるのですが」
「お!何々?」
いい暇つぶしを見つけたと言わんばかりに目を輝かせ俺を見る魔王様。
「魔王様って危険度いくつなんですか?」
「お、おい!止めないかロイくん!」
サイさんが焦りながら止めてくる。
え?なんで?
「ぼ、僕の危険度?」
「はい、ランドさんがSSSなら魔王様もスゴいのかなって」
俺は躊躇なく聞く。
その様子を気が気でない表情で見るサイさん。
「ぼ、僕の危険度は......」
魔王様はプルプル震えながら言う。
「エ、エフ......」
「え?何か言いましたか?」
「エフゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!!」
その瞬間、魔王様は俺の股間に頭突きをかましてきた。
「ウゲバラッ!!!」
俺は勢いよく倒れる。
魔王様の頭は非常に固く、俺の息子に大ダメージを与えた。
「F!Fなんだよ!なんで!?魔王なのに!!」
「ま、魔王様落ち着いてください!!」
魔王様は半狂乱状態になっていた。
大丈夫です魔王様......
あなたは十分危険です......
そして、しばらく経ち、魔王様は落ち着いた。
「いやー、ごめんよロイロイ」
魔王様は手を後頭部に当て、なでなでしながら謝ってくる。
「ひ、ひどいですよ魔王様!」
「本当にごめんねー、ロイロイのロイロイ」
魔王様は俺の股間の辺りに目を向けながら言う。
いや本当に恥ずかしいから止めて!!
「けどなんで魔王様が危険度Fなんですか?っていうか危険度ってCからなんじゃないんですか?」
「うむ、実は全く実力がないと判断された場合、例外的に危険度はFになるのだ」
「え、って言うことは魔王様Fランなんですか?」
「そうだけどその言い方は止めて」
「恐らくだが見た目で判断されてしまっているのであろう」
サイさんが言う。
いやそれも失礼な話だな!確かに魔王様はロリで全く危険そうに見えないが!
「見た目で判断すんなー!」
「だが勘違いするな。我らが魔王様はスゴい方なのだ。その強さは魔王城の誰よりも強い。私は世界で一番強いのは魔王様だと思っている」
サイさんはフォローするように言う。
危険度SSのサイさんが言うなんてホントに強いんだろうな。もしくはサイさんが忖度して言ったか。
それを聞いて魔王様は満足したような顔をしている。単純で扱い易い性格なのだろう。
「ま、まあ、最近の魔王は強さだけでなく可愛さも必要だと思いますよ?」
「そ、そうだよね!僕可愛いもんねー」
魔王様は笑顔になり、ここぞとばかりにはしゃぎ出した。
おいおい、こんなのが魔王で大丈夫なのかな魔王軍。
「魔王様ー」
そう思っていると、廊下の奥から声が聞こえてきた。
声がする方を見ると、バサバサと音を立ててコウモリのようなモンスターが飛んでくる。
「バッサー、どうしたの?」
どうやらあのコウモリはバッサーと言うらしい。
「魔王様、侵入者が来たッピー、今城の門前にいるッピー」
そうバッサーが言った。
し、侵入者だって!
「マジか、んじゃ会議室に今城にいるモンスター達を収集して」
魔王様は慣れたように言う。恐らく侵入者が来ることは珍しいことではないのだろう。