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後日談4 元魔王と元ジョーカー

「リコ、貴女はこれからどうするですの?」


「もちろん!絵を描き続けますよ!それがお母さんと、それとあの……ロイさんとの約束ですから!」


リコは腕を前に出しながら言う。


「リコ貴女……まだロイさんのことが好きなんですの?」


「な、何言ってるんですか!!」


「ん?諦めましたの?」


「な、何言ってるんですか……」


「そうですか」


私は少し笑った。


「がんばってですの」


「が、がんばります……」


「ところで今ロイさんやカエデさんやレイカちゃんは何をしているのかしら?」


「ロイさんとカエデさんはわかりませんが、レイカちゃんなら知ってますよ!旅してる途中、音楽の町ムシケで一回会いましたから!」


「そうなんですの?どうなんですか?有名なピアニストになってるですの?」


「それがですね……」













場所は音楽の街ムシケ。


その中心には、売れっ子のミュージシャンしか上がることのできない夢のドーム、ドリームドームがそびえている。


そこで今日、とある少女のコンサートが行われていた。


「はーい!今日はみんな来てくれてありがとう!」


「「「うおおおおおおおお!!」」」


「みんな今日は盛り上がっていってね!」


「「「うおおおおおおおお!!」」」


「じゃあ、リア'Sライブ始めるよ!一曲目はリアのデビュー曲『JOKER』!!」


そう、今ムシケで絶対的人気を誇る歌姫リアのコンサートが行われている。


そのステージの脇には、キーボードを弾くレイカの姿があった。










「こんなの納得できるかぁぁぁぁあああ!!」


楽屋で叫ぶレイカ。

黒いドレスで着飾ったレイカは明らかに不機嫌だった。


「どうしたの?」


白いドレスをまとったリアが、困ったように尋ねる。


「どうしたの?じゃないよ!どうして僕がペッタンコの脇で演奏しなきゃいけないの!僕が有名ピアニストになるために旅に出たのに!」


「だから、それは……」





1年間前……


レイカとリアは難航していた。


『うーん……やっぱり人集まってくれないね』


レイカはストリートピアノで集客していた。


だが中々人が集まらない。


『今の流行りはロックだからね……中々ピアノだけじゃ聞いてくれないのかも知れない』


『じゃあペッタンコ、僕のピアノに合わせて歌ってみてよ』


『ええ!?なんで!?』


『歌も付けたらもしかしたらみんな聞いてくれるかも知れないからさ』


『リア、お歌なんてほとんど歌ったことないよ!』


『大丈夫だよ!多少下手でもペッタンコ可愛いからみんな聞いてくれるって』


『で、でも……そんなの緊張するし……恥ずかしい……』


リアはレイカの目を見た。


『わかったよ……イカちゃんのためだもんね』









と言う流れで、レイカのピアノに合わせてリアが歌ってみることにした。


すると、それはもうプロ以上の腕前で、路上で歌うと道行く人々が全員足を止めた。


そして、数ヶ月とかからず、あっという間に人気歌手となってしまった。


「ペッタンコ何で無駄に色々才能があるんだよ!!」


「し、知らないよ……普通にやってるだけだもん」


「ク、クソぅ……」


悔しそうにするレイカを尻目に、リアは少し頬を赤らめながら、静かに言った。


「で、でも!!人気が出たのはイカちゃんのキーボード演奏があったおかげだと思うし」


「絶対そんなことねー!!ロックバンドのキーボード目当てで観に来るファンがどこにいるんだよ!!」


「そ、それに、リア……イカちゃんが横にいてくれるから歌うのが楽しいんだよ!!」


「……」


その瞬間、2人の顔が真っ赤になった。


「ま、まあ!ペッタンコがそこまで言うなら、演奏してやらなくもないよ!それに僕の演奏を聴きに来てる人も少しはいると思うし!!」


レイカは腕を組み、そっぽを向きながら言う。


「でも、いつかはペッタンコより有名なピアニストになって、僕がメインになるんだ!!そのときはゲストとしてペッタンコを呼んでやるから!!」


「ありがとうイカちゃん!!頑張ろうね!いつかお兄ちゃんや他のみんなも招待して、みんなに聴いてもらおうよ!!」


「そうだね、今ならロイロイも一目で僕にメロメロだよ!!」


「ち、違うもん!お兄ちゃんはきっと、リアが綺麗になったなって褒めてくれるもん!!」


リアはレイカの身体を見る。


レイカはこの1年でかなり身長が伸び、プロポーションも良くなっていた。


しかし、リアは1年前と何も変わっていない。


「イ、イカちゃんって成長したよね……身長とかお胸とか」


「そう?自分ではあんまり気が付かないけど……ただ最近凄い肩凝る、サイちゃんの気持ちが少しだけわかってきたかも」


レイカは自分の手で肩を揉む。


そのレイカの胸元には谷間が出来ていた。


「ぐ……何か余裕すらも感じさせるようになってきている……ま、まあでも!!お兄ちゃんは紳士だからきっとリアのこと綺麗になったなって褒めてくれるもん!!」


「ど、どうだろうね……っていうかもしかしたら、もうロイロイとカエデとの間に子どもができていて、ペッタンコは叔母さんになってるかも?」


「違うもん!違うもん!違うもんったら違うもん!なってないもん!!」


「まあ、どうだか?そういうの、結構急に来るもんだよ?」


「来ないもん!来ないもん!いや別に来てほしくないってこともないけど、まだだもん!!」


「相変わらずブラコンだねペッタンコは」


リアとふざけ合う中、レイカはふと窓から外を見上げた。


(ロイロイ、カエデ、コアネール、リコ、サイちゃん、魔王城のみんな、それにお父様、お母様、ランド、お兄様……)


(僕はペッタンコと2人で、ちゃんとやってるよ!!みんなに会えないのは寂しいけど、後悔はしてない。これから楽しいことも辛いこともあると思うけど、僕は乗り越えてみせる!!)


少し微笑みを浮かべたレイカ。


「じゃあペッタンコ!!今日はライブお疲れ様会で一緒にスイーツでも食べに行こうか」


「スイーツ!!行きたい行きたい!!」


「よーし!!いっぱい食べるぞー!!」


「リア、チョコケーキ食べたい!!」


2人は並んで楽屋から出る。


(お父様、お母様、お兄様、ランド、4人の願いは僕が幸せになることだった。それにエメラルドくん、君の分まで僕が幸せになるって約束した……必ず叶えてみせるから、みんな見ててね!!今も十分幸せだけど、きっともっともっと僕は……幸せになってみせるから!!)



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