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後日談3 カード、シルバーサーカス団、農村の姫君

「兄ちゃん!次ここ頼む!」


「はい!」


こんにちは、カードのエースです。


今は災害があった場所で瓦礫の撤去を手伝っています。


「トートくん、これ」


クイーンさんが僕に水をくれた。


「ありがとうございます、クイーンさん」


「働き者ね、トートくんは」


そういえば最近、カード内でも本名で呼び合うことが多くなった。まあ僕は恥ずかしくて呼べないんですが……。


「ハハ、僕にはこれぐらいしかできませんから」


「またそんなこと言って。たまには息抜きも必要よ」


「トートくーん!」


そこにジョーカーのポニさんがやってきた。


「ポニさん」


「トートくん!今日この町に有名なサーカス団が来てるらしいッス!よかったら一緒に行くッスよ!」


「え、でも……仕事が」


「フフッ、行ってきなさい、トートくん」


「そうですね、息抜きで行ってくるといいですよ」


そう言うクイーンさんとキングさん。


「ほら!エリスさんとリークさんも言ってることだし、行くッスよ!」


「あ……ポニさん!」


ポニさんは僕の腕を持ち、強引に連れ去った。









「こっちッスよ!」


「ポニさん、待ってください!」


「時間は待ってくれないッスよ!って、あれ?」


「姉ちゃん、よかったら俺とサーカスデートでもいかがかな?」


「お客様、黙るか下がるかしないとぶち殺しますよ?」


「つ、釣れねーなぁ……」


サーカス団のテントの入り口では、受付の女性にナンパをするジャックさんがいた。


「怖い姉ちゃんだぜぇ」


「カインさん、またフラれたッスか」


「あん?なんだよお前らか、お前は何?デート?」


「そんなとこッス」


「んだよどいつもこいつも、キングとクイーンも最近なんだか怪しいしよ、社内恋愛禁止だっつーの!」


「い、いや、カインさん……別にデートとかそんなのではなく」


「トートくんまだリア先輩のこと好きなんスか?」


「えっ!?な、何でリアさんが出てくるんですか!!」


「何でって、バレバレじゃないッスか、何で自分よりリア先輩が好きなんッスか!女としての魅力ないッスか!?」


「で、でもポニさん、スライムだから性別とかないでしょ」


「それもそうッスね」


ハハハーと笑うポニさん。


「ところでカインさんも一緒にサーカス見に行かないッスか?」


「俺はいいわ、ガキと遊んでる暇ねーの」


「とか言って、エッチなお店でも行くつもりじゃないッスか?」


「ああ、さっき良さそうな店が……って!ちげーよ馬鹿!昼間っからそんな店行くか!じゃあな、そっちもデート頑張れよ」


そう言ってカインさんはどこかへ行った。


「カインさんからは以前から自分を見る目がやらしいと思ってたんス……絶対自分に気があるッスよ」


「そ、そうなんですか……」


「じゃあトートくん!サーカス見に行くッス!」


「は、はい」


僕たちは受付まで向かった。













「お姉さん!子ども二人ッス!」


「あら、可愛いお客様ね。ようこそシルバーサーカス団へ」


「入場料いくらッスか?自分の安月給でも払える値段ッスか?」


「今私たちはね、災害で大変な人たちに少しでも元気になってもらえるよう、ボランティアでやってるのよ。だからお金はいらないのよ」


「そうなんですか!?すごいです!」


「これは団長の思いつきなのよ、うちの団長、思いついたらすぐ行動に移しちゃうから……そこがいいところなんだけど」


「姉貴ー!」


そこに受付の女性と全く同じ顔の人が走ってきた。


「うわ!同じ顔ッス!けど、おっぱいは後から来た人の方が大きいッス!」


「お、お嬢ちゃん、胸の大小は関係ないのよー……ところでなによ、フウカ」


「そろそろ準備しないといけない時間だぜ」


「あ、もうそんな時間か。じゃあね、お嬢ちゃん達」


そう言うと、2人はテントの中に入っていった。


「美人な姉妹だったッスね。」


「そうですね。じゃあポニさん、僕らもテントに」


「あ!トートくん、あそこ!」


「ん?」


テントの脇に、子どもたちに風船を配るピエロがいた。


「ピエロッス!!自分ピエロが大好きなんッス!!」


そう言ってピエロに向かって走っていくポニさん。


自由だな……


「ピエロー!自分にも風船をくださいッス!」


ポニさんはピエロに向かって手を差し出した。


ピエロは笑顔で風船を渡す。


「ありがとうッス!握手もしてほしいッス!」


ピエロはポニさんと握手した。


「感激ッス!サインもほしいッス!」


「ポニさん、その辺にしておいてください!」


僕は暴走するポニさんをなんとか止めようとした。


「離すッス!いっしょに写真撮ってほしいッス!」


「はいはい、行きますよ」


僕は抵抗するポニさんを引きずり、なんとかテントの中へ入った。














「団長ー、そろそろ準備するよ」


「わかった。」


俺はこどもたちに風船をすべて渡し終え、テントに入る。


「でも、すごい人が集まりましたね」


「ああ、ボランティアだからって気は抜けないな」


俺はシルバーサーカス団で団長兼道化師を務めるシロガネ・エーユエジル、通称ギンという者だ。


このサーカス団を立ち上げて10年になる。


俺は10年前、魔王ガイルと戦い、そして戦うことを辞めた。


他に平和をつくる方法を模索することになった。


そして、その結果としてサーカス団を立ち上げた。


家族には随分迷惑をかけたが、これで世界中の人を楽しませることが俺の生き甲斐だと思っている。


「よし!今日の公演もがんばるぞ!」


カエデ、元気でやってるか?














その街の僻地、農村部では……


「おーい、トップさんや、ここ頼めるかえ」


「ハッハッハー、任せてください!!」


キャプテン・トップが農作業を手伝っていた。


「この村は高齢者しかいないから、若い人は来てくれて助かるねぇ」


「ハッハッハー、まだまだご老人には敵いませんな!!」


トップは重い荷物を運ぶ。


その村の片隅、ロゼーリアが藁を編む作業をしながら静かにトップを見つめていた。


「いやはや、ロゼーリアさん、良い旦那さんを持ったねぇ」


一緒に作業している老婆にそう言われるロゼーリア。


「旦那ではありませんわ」


「そう言っても、アンタずっと見つめてるじゃねぇか」


「み、見つめてなどいませんわ!!」














その夜、作業を終えたトップが、泥のついた手を拭いながら小屋に戻ると、そこにはロゼーリアが待っていた。


この小屋でロゼーリアとトップは生活をしていた。


「トップ、今日もご苦労さまでした」


ロゼーリアは微笑みながらトップに声をかける。


「ハッハッハ!いやいや、働き甲斐があるってもんですよ!」


「トップ、実は今日はこの煮付けを近所の御婆様に教えて貰いまして……」


ロゼーリアはお皿に乗った煮付けを差し出す。


「えっ!!姫が作ったのですか!?」


「え、ええ……お口に合うかわかりませんが」


「姫が料理を……昔はシェフの作る料理に文句を言い、一流の食料しか食べなかったワガママな姫が……」


「う、うるさいですわね!!もう食べさせませんよ!!」


「いえいえ!!早速いただいてもよろしいですか!?」


「え、ええ……」


トップは煮付けを口に入れる。


「ど、どうですか?」


「今まで食べた何より美味ですな!!」


「ホ、ホントですの!?」


こうなったのは1年前、あの最終決戦の後で……











『姫……』


森の木々をかき分け、トップは森の中で座るロゼーリアを見つけた。


『トップ、お疲れ様です』


『やはり死んでなどいなかったのですね……』


『ええ、私は不死身ですから』


『全く……そんなことだろうと思っていましたよ……』


トップはため息をつき、笑う。


『作戦失敗ですわトップ、忍者など信じた私がバカでした』


『途中まで作戦通りだったのですがね、上手く行きませんな』


『そんなもんでしょう。これからは帝国軍にも魔王軍にも追われることになりますから、どこか手が届かないようなところに逃げますわよトップ』


『ハッハッハ、姫も慣れてきましたな』


『ええ、私とトップがいる限り、きっといつか頂点を取ってみますわよ!!』


『よっ!!我が姫、世界一ですな!!』


『では、長居は無用、追手が来る前に逃げますわよトップ』













「ハッハッハ、姫も極貧生活が型にはまってきましたな」


「うるさいですわね、でもこれも私の逆転劇への布石ですわ!何年かかるかわかりませんが?この農村から返り咲き、また頂点を取るのです!トップ!」


「はい!!勿論!!姫は世界を取られるお方だ!!」


トップは拍手した。


「オーッホッホ!!共に参りますわよトップ!!一先ず明日は朝早くから農作業がありますから、早く寝ますわよ!!」


こうして、狭いボロ小屋で再び返り咲くことを決意するロゼーリアとトップだった。

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