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第247話 最後の対決

「魔王様!!」


「なに?……っていうか、また魔王様って呼んでるよ……」


「がんばってください!俺は何があっても魔王様の味方でいますから!」


ロイはレイカに向かって深々とお辞儀をした。


「……ありがとうロイロイ。僕も……」


レイカは少し赤くなり、ロイの方を向いた。


「僕も……ロイロイのこと、ずっと好きだからね」


そう言うと、レイカは振り向き、微笑みながら歩き出した。


「魔王様……」


ロイはその背中をじっと見続けた。


『新人くん若いね?名前は?歳は?』


『ロ、ロイ・レンズです、歳は17......』


『んじゃロイロイだね!僕は13なんだ、4つお兄ちゃんだね!』


初めてレイカと会った時のことを思い出すロイ。


「……」


そして、ヴァルロとランドの顔を思い出すロイ。


すると、自然と一筋涙が流れた。


「どうか……お幸せに……またいつか……」














レイカはロイと別れ、少し離れた森を歩いていた。


森の道は少し湿っていて、木々の間からは柔らかな陽光が差し込んでいた。遠くで鳥が鳴き、静寂の中にも自然の音が響いている。


レイカは森の奥へと進み、やがて広がる開けた場所にたどり着いた。


「ふう……ここから先、長い旅になるね……」


「レイカ」


「へ?」


そこにはすでにカエデが待っていた。

大きな木の下で腕を組み、どこか落ち着いた様子でレイカを見つめている。


「カ、カエデ!?どうして!?」


「話は聞いてたわよ、そんなことだろうと思ってたのよ」


「そうなんだ……うん、僕は魔王城を出て旅へ」


「レイカ、お疲れ様」


カエデはレイカに近づき、頭を撫でる。


「カエデ?」


「今まで良く頑張ったね、魔王として一生懸命頑張ってたの私は知ってるから」


「カエデ……」


レイカは少し涙ぐむ。


「初めは敵同士だったけど、友達になれて嬉しかったよ」


「うん……僕も嬉しかった」


「でもさ、ただの友達ってだけじゃ終われないでしょ?」


カエデはニヤリと笑いながら立ち上がる。


「最後に、一勝負しない?」


レイカはその言葉に一瞬驚いたが、すぐに同じような笑みを浮かべた。


「いいね!!僕もカエデとはちゃんと決着をつけたいと思ってたんだ!!エーケベでの戦いの決着、付いてないからね!!」


2人はゆっくりと距離をとる。


風が強くなり、木々が揺れる。空気が張り詰め、辺りの温度が少し下がったような気がした。


「全力でやらないと面白くないからね!!カエデも全力で来てよ!!」


「勿論よ!!」


レイカの体から闇の魔力が溢れ出す。


レイカの手には漆黒の闇魔法が浮かび上がり、周囲の光が飲み込まれていく。


一方、カエデの瞳が赤く輝き、頭には2本の角が生える。


身体が徐々に鬼人化していった。


筋肉が引き締まり、カエデの力が限界まで高まる。


「じゃあ……行くわよレイカ!!」


「望むところだよカエデ!!」


森の奥、静寂を切り裂くような雷鳴が轟いた。


カエデの足元から青白い電流がほとばしり、大地を走る。


カエデの刀はすでに雷の力を纏い、その刃先から放電が散っていた。


ダッ!!


カエデが地面を蹴ると、稲妻が爆ぜるような轟音が響いた。


高速で駆け抜けるカエデの刀が、雷を帯びながらレイカへと迫る。


「速いね!!」


レイカはすかさず、バックステップしながら空へ跳躍し、闇魔法を展開。

黒い刃が無数に生まれ、カエデを襲う。


キンッ!!キンッ!!キンッ!!


しかし、カエデはその黒い刃を全て刀で防ぎ切った。


「逃さないわよ!!」


ダッ!!


カエデは高く跳躍し、刀を振りかぶり、レイカを襲う。


「常識外れの運動能力だな!!」


レイカはその動きを察知し、闇の球体を生成。


それをカエデの動きに合わせ、放った。


ガキィィィンン!!!


闇魔法とカエデの刀は交錯する。


互いの一撃が空間を震わせ、稲妻と闇が火花を散らす。


「「くっ!!」」


ズザザー!!


2人はお互いに吹き飛び、地面に着地した。


(レイカには魔法は効かない……それなら……)


カエデは雷の特性を利用し、周囲の金属を操る。


カエデの刀が地面の微細な鉄粉を引き寄せ、即座に無数の細い刃へと変化する。


カエデの背後には無数の細い金属の刃が生成された。


「これは防げる?」


雷を纏う金属の刃が空を舞い、レイカへ突き刺さるように飛んでいく。


「やるね……」


ガガガガガガッ!!


レイカは前方に闇魔法の盾を展開し、それらを防ぐ。


だが、その瞬間、カエデがレイカの背後に回り込み、刀を振るった。


「くっ……速い……」


ザシュッ!!


レイカの肩に軽い切り傷が走る。


「つっ!!やるじゃん……」


しかし、すかさずレイカは距離を取り、すぐにその切り傷は闇魔力により自然治癒された。


「次はこっちの番だよカエデ!!」


ゴゴゴゴゴッ!!


レイカは闇の力をさらに解放し、周囲の光を飲み込むような深い黒の渦を作り出す。


そして、その渦をカエデに向かって放出した。


「ハアッ!!」


カエデは刀に雷魔法を込め、闇魔法に応戦した。


ガキィィィンン!!


雷の刀と闇の波動が激しく交差し、爆発音が大地を揺らした。


「ガハッ!!」


カエデは闇魔法の威力に吹き飛ばされ、木に激突する。


「くっ……流石の威力ね……」


カエデは直ぐに立ち上がる。


「カエデも、随分強くなったね」


「レイカこそ」


「だけど……これで終わりだよ!!」


レイカは全身に闇魔法を溜める。


そして、レイカの背後には黒い龍が形成される。


「こっちこそ!!アンタには負けないわよ!!」


同じ様に全身に雷魔法を溜めるカエデ。


背後には白い虎が形成された。


そして、2人は同時に駆け出した。


「「勝負!!」」


ドゴォォォォォォォォォ!!!


轟音とともに、2人はぶつかった。


拮抗し合う2つの力。


しばらく押し合うと、爆発が起こり、煙が舞う。


その煙により、視界が一瞬奪われる。


そして、煙が晴れると2人は息を切らしながら片膝をつき、向かい合っていた。


「……」


「……」


2人は向かい合うと、自然に笑みを浮かんだ。


「……ここまでね」


「……うん、決着つかなかったね」


カエデは刀を収め、戦いの余韻を感じながら微笑んだ。


レイカも身体の汚れをはらうと、カエデをじっと見つめ、手を差し出す。


「カエデ、楽しかったよ」


カエデはその手を握り、力強く頷いた。


「私も、最後に戦えてよかった」


「カエデ……」


ぎゅ……


レイカはカエデに抱き着いた。


「レイカ……」


カエデもレイカをぎゅっと抱きしめた。


「カエデ、ありがと……カエデも幸せになってね」


「うん……レイカも、色々あったけど、絶対幸せになりなよ……」


2人はしばらく抱き合う。


そして、レイカはカエデから離れた。


「サイちゃんじゃないから胸部のクッション性が低いや」


「ん?」


「いや、冗談冗談!!」


レイカは微笑み、背を向ける。


「じゃあ僕、旅に出るよ。カエデ、またいつか」


カエデはその言葉に静かに頷いた。


「うん、またねレイカ」


レイカは森を抜け、遠くへと消えていった。


カエデはその背中をじっと見送るのだった。

















レイカはカエデと別れ、一人森を歩いていた。


「はぁ……やっぱりお別れは寂しいよ……」


ため息をついたレイカは、ふと足を止め、頬を軽く叩いた。


「けど……次会うときには立派なピアニストになって帰ってくるからね!!」


「イカちゃん」


「へ?」


驚いて振り返ると、そこにはリアが立っていた。


肩には大きな荷物を担いでいる。


「な、何でペッタンコがここに!?」


「何でって、決まってるじゃない。一緒に旅するんだよ」


リアは笑顔でそう言い切った。


「えっ、一緒に!?どういうこと!?」


「だって、イカちゃん1人だと心配だし、子どもだし」


「ペ、ペッタンコだって子どもでしょ!!」


「リアは大人だよ、イカちゃんよりお姉さんだし」


「で、でもロイロイ達心配するんじゃ……」


「置き手紙してきたから大丈夫」


リアはあっさりと答えた。


「置き手紙って……まあ僕も同じなんだけど、本当に大丈夫なの!?」


「大丈夫だよ、それよりイカちゃんが1人で旅する方が心配だよ」


「ペッタンコ……」


「それにさ、2人で旅する方が絶対楽しいよ!!」


リアは明るく笑った。


「でも……でも……」


レイカは目に涙を浮かべる。


「泣かないでイカちゃん、リア達親友じゃん」


リアはレイカの頭を優しく撫でた。


「ペッタンコ……!」


思わずリアに抱きつくレイカ。


「ありがとう……ペッタンコ……」


「まったく、手のかかる親友だよ」


リアは苦笑いしながらレイカを抱きしめた。


「よーし!じゃあまずは音楽の街ムシケに向かって出発するよ!!」


「うん!イカちゃんをプロのピアニストにするための旅、気合い入れて行こー!!」


「絶対プロのピアニストになるんだ!ペッタンコ、行くよ!!」


2人は歩き出した。


「ねえイカちゃん、もし有名なピアニストになったら一番にサインちょうだいね」


リアが笑顔で言う。


「うん!あっ、サインの前にペッタンコにプレゼント!」


レイカはポケットから飴を取り出した。


それはロイが持っていた胸を大きくする飴だった。


「これロイロイからもらった飴なんだけどね、ペッタンコにあげる!」


「わーい!ありがとう、パクッ!」


リアは飴を口に入れる。


「おいしいー!」


「んー?」


レイカはリアの胸をじっと見る。


「どうしたの?」


「なんだ……ガセか」


レイカは振り向き、歩き出した。


「なにがガセなのかわかんないけど、すごく馬鹿にされた気分!!」


レイカはふと空を見上げ、心の中で呟いた。


(お父様、お母様、ランド、お兄様……僕にも夢ができたよ。僕にも親友ができたよ。僕は幸せです。だから安心して見ていてください)


レイカは空を見ながら笑った。











それから魔王城では、レイカの置き手紙とリアの置き手紙が発見された。


レイカの置き手紙には、ピアニストになる旅をすること、魔王を辞めること、次期魔王は魔王四天王のキザであることが書かれていた。


キザはレイカを心配しながらも、魔王になることを了承し、帝国軍と魔王軍の同盟を結ぶ。


こうして世界には平和が訪れた。


















「うえ……うえ……うえ……」


「何情けない泣き方してんのよ」


カエデが呆れたように言う。


ロイは部屋で泣いていた。


「だってよ……リアの奴、何も言わないで行っちゃうなんて……兄不孝者だぁ」


「いいじゃない、もう15なんだから、アンタこそ早く妹離れしなさい」


「できません……」


ロイは涙を拭いながら答える。


「ほら、コアネールさんがそろそろ出発する時間よ」


「そうだね……行こうか」


2人は城の出口に向かった。

面白い!続きが気になる!今後に期待!


と思っていただけたら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちを残していただくと嬉しいです!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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