第242話 白銀の虎
ロイとリアが吹き飛ばされるのを見つめるカエデとレイカ、そしてヴァルロ。
「あの兄妹……最後の最後まで仲が良いわね……」
「ロイロイとペッタンコらしいって言うか……」
戦場にはもう3人しか残っていなかった。
そして、虚空は圧倒的な魔力をまとい、まるで黒い嵐のように3人を狙っている。
「さあ……お前達も終わりにしようか」
虚空は冷淡に言う。
ヴァルロが深刻な表情を浮かべて言った。
「闇魔力が完成するまであと一分ほどだ……それまで持たせるには……」
「カエデ……」
「分かってる」
カエデが前に進み出る。
その目には決意が輝き、カエデは手を胸元に置きながら呟いた。
「みんなが命を掛けて戦ってくれた……だからこの力を温存出来た」
カエデは静かに目を閉じる。
すると、カエデの周囲のエネルギーがカエデに集まってくる。
それはまるで戦場に光る自然の灯火のようだった。
「これは……綺麗……」
闇魔力を溜めながら、レイカはその姿に見惚れた。
「……解!!」
その瞬間、カエデの体が白い光に包まれる。
カエデの目元は燃えるように赤く染まり、頭には2本の角が生えた。
満を持して鬼人化したカエデ、その全身から放たれる魔力は虚空の圧倒的な魔力に匹敵するほどだった。
(サフィちゃん!!私!誰にも負けないから!!)
胸に手を当て、亡き親友を思い浮かべるカエデ。
「これが……鬼の力……」
「私の全力……見せてあげる!!」
カエデは叫び、鬼雷柳を構え、虚空に向かって突進する。
虚空が興味深そうに笑う。
「面白い、鬼の力とは……いいだろう、かかってこい!!」
ガギッ!!!
虚空の漆黒の魔力が螺旋のように渦巻き、カエデの攻撃を受け止める。
カエデは剣を振るい、虚空に連続攻撃を仕掛ける。
その力は大地を裂き、一撃一撃が空気を震わせるほど強力だった。
虚空もその力に圧倒される瞬間があり、二人は互角の戦いを繰り広げる。
「まだまだ……いけるわよ!!」
カエデは鬼の力を全開にし、虚空にさらに深く迫っていく。
それに応対するかのように、虚空の魔力もうねり、カエデに襲いかかる。
「エルダー・ドラゴンの魔力相手にここまで……面白いな」
虚空の声は冷たく、まるでカエデを試しているかのようだった。
カエデは鬼人化した体から白銀のオーラを放ち、鬼雷柳を握り締めた。
「みんなの仇!!私が討つ!!」
「やってみろ白銀の女剣士!!」
虚空は手を振ると、黒い魔法がカエデに向かって襲いかかる。
カエデは即座に跳躍し、その魔法をかわす。
「ハアッ!!」
カエデは鬼雷柳を輝かせ、虚空に向かって突進した。
一瞬の間に刃を振り下ろし、虚空を狙う。
しかし虚空は漆黒の盾を生み出し、その攻撃を受け止める。
「なかなかの力だが……今の俺には勝てない」
虚空は手をカエデに向け、闇の波動を放つ。
それを見たカエデは瞬時に回転し、鬼雷柳で闇の波動を切り裂いた。
「ハア……ハア……まだまだ!!」
カエデは息を切らしながらも虚空に攻撃を仕掛ける。
「くっ……そろそろ諦めろ!!」
虚空は両手を広げ、漆黒の魔力をさらに増幅させた。
その魔力が空間を歪ませ、カエデの体を徐々に押し返していく。
カエデはその圧力に耐えながらも、レイカとヴァルロの様子を見ながら鬼雷柳を掲げた。
「……まだ終わらない!!」
カエデは全ての力を込め、鬼の力を最大限に身体に込めた。
「お前ごときが……いい加減倒れろ!!」
虚空は増幅させた漆黒の魔力を飛ばし、カエデに攻撃を仕掛けた。
ガキィィィンン!!!
それをカエデは鬼雷柳で防ぐ。
そして、その攻撃を防ぎ切った。
「何だと!?」
「うおおおおおおっ!!!」
カエデは刀を握り、虚空に向かって跳躍した。
その刹那、カエデは周囲を見渡した。
帝国軍の兵士、バスターズ、そして援軍に来てくれた山猫山賊団。
キャプテン・トップ、カードのメンバー、魔王軍。
さらにロイにリア、ヴァルロにレイカ。
そして、この場にいないモミジ、サファイアのことを想う。
「みんなのために……私は諦めない!!!私の最後の力……見せてあげる!!」
ガキィィィンン!!!
カエデの刀は虚空の漆黒の魔法とぶつかった。
ギギギギギッ!!!
こだまする金属音。
「うおおおおおおっ!!!」
力を込めるカエデ。
「くっ……」
虚空は顔を歪ませる。
「神の力に……抗おうとするな!!!」
虚空は全力でカエデを押し返そうとする。
しかし、カエデも負けじと最後の力を振り絞った。
「くっ!!鬼の力……何て力だ!!」
ドガッ!!
2人はお互い、弾じき飛ばされた。
シュ……
その時、カエデの鬼の力が限界に達し、カエデの体から白銀のオーラが消え、目元の赤みが消え、頭の角も消えていった。
「限界みたいね……」
そして、カエデは片膝を付く。
「……時間は稼いだわ……後は……頼んだよ……レイカ……」
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