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第239話 モミジ忍法帖

その頃、サンベルス城では。


「な、何?今の光……」


サンベルス城にて、ケガの治療中のリアはエルダー・ドラゴン復活時の光を見て、バルコニーに出てきた。


「あ、あれはもしかして……」


「あれ?貴女は……」


「え?」


バルコニーにはベンチに座ってサンベルスの外を見つめる皇帝エンバンスの姿があった。


「エ、エンバンス様……」


「君は……元ジョーカーのリアさんですね」


「は、はい……」


「どうやらエルダー・ドラゴンは復活してしまったみたいですね」


エンバンスは外を見つめながら言う。


「そう……なんですね」


「はあ、折角皇帝になれたのに苦労の連続ですね」


「……」


「貴女はもう戦わないのですか?」


「はい……リアはもう戦いたくないんです」


リアは下を向きながら言う。


「そうですか……そう言えば貴女のこと、父が心配してましたよ」


「えっ!?」


それを聞いて、リアは驚きの表情を見せた。


「ど、どういうことですか?」


「そのままの意味ですが……」


「だってリアは前皇帝様を裏切ったのですよ?その前皇帝様がリアの心配なんて……」


「父は仕事人間でしたが、仕事とプライベートは分ける人間でした。皇帝という立場上、帝国をいい方向に導かないといけない」


「……」


「そのために貴女にキツく当たりすぎたと後悔していました。気弱な貴女にジョーカーとして気負いさせすぎたと、本当はもっと優しくしてあげれば良かったと引退後何度も悔やんでいました」


「……そう……だったんですね……」


「全く、息子の私や娘のロゼーリアよりも貴女のことを心配していましたよ」


「……」


「別に帝国軍の仲間でなくなったとしても、貴女が幸せに生きていてくれていたらいいなと、何度も言っていました」


「……ありがとうございますエンバンスさん!!」


リアはそう言うと後ろを向いて歩き始める。


「どこへ?」


「リアも加勢してきます!!リアのやってきたこと、間違いじゃなかったとわかったので!!」


そう言って、リアは城の下へ降りていった。






















その頃、サンベルス城前の戦場では、魔王軍、そしてトップとカードが虚空の圧倒的な力の前に膝をついていた。


虚空の掌から放たれる漆黒の魔力が大地を裂き、戦場全体を支配していた。


「くそっ……これが、神の力ってわけか……」


トップは肩で息をしながら立ち上がろうとするが、足元がふらついてしまう。


カードのメンバーも倒れ、気を失っていた。


「ごめんなさい……ここまでッス……」


ポニスは溶けて液状化していた。


「これは……キツいね」


キザ、ゴラド、サイの3人も地面に倒れていた。


虚空はそれを冷たい視線で見下ろしながら微笑んだ。


「流石魔王軍にトップとカードのメンバー……強かったがここまでだ、もはや俺の相手になる者などいない」


それを見つめるロイ。


「ヴァルロ!!魔王様!!闇魔力は溜まったか!?」


「いや、まだまだ時間が必要だよ」


ヴァルロとレイカは魔力を溜め続ける。


その時、モミジがゆっくりと前に出た。


「モミジ?」


カエデは心配そうにモミジを見つめる。


「……こうなったら私しかいないですね……私が時間を稼ぎます」


その声は静かだったが、戦場に響き渡る決意が込められていた。


「ス、スカーレット!?」


「残っているのはこの5人です。ヴァルロ様とレイカ様は闇魔法の準備をしないといけない。カエデ様とロイ様は前の戦いで体力が消耗している、少しでも休憩が必要です」


モミジは肩を回し、口元にかすかな笑みを浮かべた。


「何とか瞬間移動で時間を稼いでみます」


「ダメよ!!そんな……危ない……」


カエデはモミジの手を掴んだ。


「カエデ様、大丈夫です」


そう言ってモミジはカエデの手を握る。


「カエデ様、初めて会ったときに比べて強くなりましたね。自慢の妹です」


「そんな……止めてよ」


「私は生き甲斐のない人間でした。忍者部隊として無心で任務をこなしてきました。そこで、生き甲斐を与えてくれたのはヴァルロ様でした」


モミジはヴァルロを見つめる。


ヴァルロはモミジに笑いかけた。


「そして、その後さらに生き甲斐を与えてくれたのはカエデ様です。貴女の強くなる姿を見たいと思った」


モミジはカエデの手を離す。


「モミジ……」


「ありがとうございますカエデ様、さっきお姉ちゃんって言われて、嬉しかったですよ」


シュンッ!!


そう言うとモミジはカエデの前から消え、虚空の背後に瞬間移動した。


「モミジ!!」


そして、虚空を掴むと、虚空と共に瞬間移動した。


「ここは?」


「10kmほどサンベルスから離れました、これで戻るのに少しは時間がかかるでしょう」


「モミジさん、忍者部隊を脱退した裏切り者か」


「脱退ではありません、卒業です」


「フッ、冗談を。今となっては俺の相手にはならないだろう」


「どうですかね?もしかしたら私が倒してしまうかも知れないですよ?」


その瞬間、モミジは瞬間移動して消える。


「……フン、無駄な足掻きだ」


虚空が周囲を見回すが、次の瞬間、背後からモミジの声が響く。


「こちらです!」


モミジは虚空の攻撃範囲を巧みに避け、あちこちに瞬間移動を繰り返し始めた。


虚空の魔力が戦場を覆う中、モミジはその俊敏さで虚空の攻撃をひらりひらりとかわす。


虚空は苛立ちを見せ始め、次第に攻撃の手を強めていくが、モミジはその忍術で巧みに逃れ続けた。


「これで……少しは……時間を稼げているでしょうか……!!」


「くっ……流石元忍者部隊……だが遊びはここまでだ!!」


虚空はより一層魔力の量を増やし、モミジを襲う。


「分身の術!!」


シュッ!シュッ!シュッ!


虚空の周囲には、モミジの分身が何人も現れた。


「分身の術か……くだらん」


ザシュッ!!


虚空が漆黒の魔力を振るうと、いくつかの分身が消滅する。


しかし、残ったモミジが左右から同時に攻撃を仕掛ける。


「まだ終わってませんよ!!」


「猪口才な!!」


虚空は背後から無数の魔力弾を放った。


その魔力弾に辺り、モミジの分身は全て消滅した。


モミジの本体は瞬間移動でひらりと回避する。


そして、モミジは手印を素早く組む。


「忍法・火炎双舞!!」


ゴオオオオッ!!!


モミジの両手から炎が巻き上がり、螺旋を描きながら虚空へと襲いかかる。


「この程度……」


虚空は漆黒の障壁を形成し、炎を弾き返そうとする。


しかし、モミジはその動きを読んでいた。


「そこです!!」


瞬間移動で炎の軌道を変え、背後から炎の旋風を叩きつけた。


ドゴッ!!


しかし、虚空は背後に強靭な防御魔法を展開し、燃え広がる炎を完全に消し去った。


「……やはり、モミジさんでは今の俺を止めることはできない」


「……まだまだです」


モミジは体力の限界を感じながらも、虚空の魔法を避け続ける。


しかし、その瞬間、虚空の魔力の手がモミジの肩を掴んだ。


「終わりだ」


ドッ!!


虚空の冷たい声が響き、その魔力をモミジに浴びせる。


「ガハッ……」


モミジは血を流し吹き飛び、うつ伏せに倒れた。


そして、ピクリとも動かない。


「終わりだな。さて、戦場に戻るか……」


ガシッ!!


しかし、背後からモミジに掴まれた。


シュンッ!!


そして、また虚空とモミジは共に瞬間移動した。


「何っ!!」


「ハア……ハア……また、サンベルスから離しました……これで……少しは時間が……かかりますね……」


血を流しながら、虚ろな目で立ち上がるモミジの姿があった。


「き、貴様……死に損ないめ!!」


虚空は魔力の弾を飛ばした。


ドスッ!!


その魔力の弾はモミジを吹き飛ばし、モミジはうつ伏せに倒れる。


「くっ……」


「さっさと死ね!!」


ジジジジジッ!!!


虚空は巨大な魔法の弾を頭上に生成する。


そして、それを倒れるモミジに放出した。


それをジッと見つめるモミジ。


(私は……忍者部隊として数々の任務をこなしてきた……それこそ悪事も沢山……)


そして、目をつぶるモミジ。


(けど……最後に良いこと出来たかな……カエデ様)


ドガァァァァァァアアアアア!!!


その魔法は大爆発を起こし、周囲は跡形もなく焼け野原となった。

面白い!続きが気になる!今後に期待!


と思っていただけたら


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