第237話 ヴァルロの真意
ヴァルロの言葉は静かだったが、その声には何か重い決意が込められていた。
「やっぱりか……」
ロイの表情は曇り、その視線はヴァルロの胸元、痛む心臓を見つめていた。
「時々心臓に激痛が走る……僕の死期も近い」
「そうだったのか……」
ロイの言葉には困惑が滲んでいた。
「つまり、エルダー・ドラゴンを復活させれば、その初代魔王の予言通りお前の病気が治るってのかよ!信じられないぜ」
「いや……」
ヴァルロは少し首を振り、空へ視線を移す。
「そうじゃない。僕は僕の命なんて、どうでもいいよ」
「え?ど、どういうことだよ?」
その冷たくも覚悟の滲む言葉に、ロイは疑問を抱く。
「僕はもう末期だ。今さらエルダー・ドラゴンを復活させたところで、僕はもう助からないだろう」
「はあ!?じゃあ何のために……」
ロイの疑問を受けて、ヴァルロは静かに目を伏せた。
「……初代魔王の予言はエルダー・ドラゴンの復活により、魔族は安定を迎えるだろう……だ。つまり、1人でも残れば魔族は滅亡しない、それだけのことだよ」
ロイの顔に衝撃が走る。
「1人でもって……ま、まさかヴァルロ……お前……」
「ああ、僕の目的は始めからただ一つだ……」
ヴァルロは空を見上げ、じっと見つめる。そして静かに、呼吸を整えた。
「レイさえ生きてくれればそれで良かった……」
「ヴァルロ……そういうことかよ……」
「……僕やお父様、お母様と同じように、いつか必ずレイも魔血凍病に蝕まれる」
ヴァルロは下を向き、息を付いた。
「僕はお父様やお母様を守れなかった……僕にはもうレイしかいないんだよ!!だから、お母様が死んだあの日、僕は何を犠牲にしてもレイを守ると誓った!!僕の命が尽きようとも、世界が滅びようと関係ない!!僕は……妹だけは……守りたかったんだ……」
「ヴァルロ……」
ロイは少し涙ぐむ。
「……お前、シスコン過ぎるだろ」
「フッ……お前に言われたくないよ」
「馬鹿でシスコン野郎だよ……ちくしょう……」
「そうかもな……ロイ、質問には答えた、頼みを聞いてもらうぞ」
ヴァルロはロイを見た。
「……レイを頼んだよロイ」
「……」
「さあ、僕にトドメを刺せ」
「そんな頼み聞けるか!!バカ野郎!!」
ロイは大声で言った。
「バカかお前は!!魔王様を幸せにするのがお前の目的なんだろ!!魔王様はお前との未来を望んでる!!お前が死んでどうすんだ!!」
「……僕はいずれ死ぬ、病気で死ぬぐらいならお前の手で葬ってくれ」
「やだね!!」
ロイはヴァルロの腕を掴み、肩で担いだ。
「お前……」
「お前みたいな奴を殺したくない!!一緒に戻るぞ魔王様のもとに!!」
「……僕は兄失格だ、レイの兄として何もしてやれなかったし、レイを傷つけた……僕にレイと会わす顔などないよ」
「知るかそんなこと!!勝手に決めてんじゃねー!!魔王様はお前に会いたがっている!兄なら死ぬまで側にいてやれ!!」
「……」
ヴァルロは少し笑った。
「お前には不思議な力があるな……ランドがお前に肩入れしていた意味が今わかった……」
ヴァルロはロイを抱き抱え、翼を広げて飛んだ。
「うお!なにすんだ!!」
「レイに会いにいくぞ、超特急でいくからな、落ちるなよ」
「ヴァルロお前!ってうわ!!」
ヴァルロは凄いスピードで進み出した。
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