第236話 最終決戦ロイVSヴァルロ 2
シュルシュルシュルッッッ!!
闇が渦を巻き、ヴァルロの手元に凄まじい闇魔力が収束していく。
その気配は空気を重くし、まるで周囲に圧力をかけているかのようだった。
ロイは剣を握り締め、目の前の異質な魔力の塊に息を呑む。
「この魔力は……」
「……終わりだよ、ロイ」
ヴァルロは静かに言い、手の中の闇の球体をさらに膨らませる。
「こんな魔力、見たことねぇ……魔王様以上の魔力だ……」
ロイは不意に笑う。しかし、その笑みはどこか焦燥を含んでいた。
ヴァルロはロイをじっと見つめながら言った。
「最後に聞くぞ、ロイ。お前はなんで戦っている?国の存亡をかけているわけでもないのに、なぜここにいる?」
ロイは鼻を鳴らし、剣を肩に担ぐ。
「国?知らねぇな。そんな大それたもん背負って戦えるか」
ヴァルロの目が僅かに細まる。
ロイは続けた。
「俺は馬鹿だからよ。目の前のことしか見えてねぇかもしれねぇ。ただ大切な人を守りてーんだ!それ以外のことなんか知るか!そんな難しいこと考えてる暇があるなら、俺はエロいこと考えてるよ!!」
「……ロイ、お前はどうしようもない馬鹿だったようだな」
「ああ、だがその馬鹿に負けるんだよ、お前は」
「フッ……負けるのはお前だよ、ロイ!!」
ヴァルロは闇魔力の球体を勢いよく投げ放った。
球体が空気を裂き、異様な轟音を伴いながらロイに迫る。
「くっ!!」
ロイは剣を構え、全力で防御の姿勢を取る。
ドガァァァァァァアアアアア!!!
爆発音が響き渡り、大地が吹き飛んだ。
「うく……」
砂煙の中、ヴァルロは肩を揺らしながら立ち上がる。
「少し威力を強めすぎたか……まあいい」
彼は周囲を見渡す。
そこには、血を流しながら倒れているロイの姿があった。
「しつこすぎる男だったが……終わったか」
ヴァルロは疲れたように息をつき、翼を広げる。
「さて、時間がない。早いところレイに会って……」
ドクンッ!!
その瞬間、彼は立ち止まる。
「ま……待てよ……まだ……終わってねぇだろ……」
ヴァルロの背筋に冷たいものが走る。
「ハア……ありえないな。あれを喰らって生きているなんて」
振り向いた先には、血まみれでなお立ち続けるロイの姿があった。
そして、ロイの体から黒い闇魔力が迸る。
シュゥゥゥ……
ヴァルロの目が大きく見開かれる。
「これは……僕の闇魔力……」
ロイは剣を拾い上げ、地面に突き立ててもたれ掛かった。
「墓穴掘ったな、ヴァルロ」
「闇魔力には自然治癒の力がある……まさかお前……」
「そうだ、アルガンド城決戦の時、お前に分けてもらった闇魔力だ」
ロイはかすかに笑いながら剣の柄を握る。
「一度きりだが、致命傷を負っても回復するんだってさ……」
ヴァルロはゆっくりと呼吸を整えながら言う。
「……こんな力をお前に与えてしまったとはな……」
ロイは剣をゆっくりと抜き、ヴァルロへ向ける。
「俺は迷ってるお前の魔法なんかじゃ死なねーよ」
「僕が迷ってる……?馬鹿なことを言うな」
ヴァルロは再び闇魔力を構築し、一撃を放つ。
しかし、ロイの目の前でシールドが現れ、闇魔法を遮断した。
「なに!?」
「……ランドさんの防御魔法だ」
ヴァルロの目が僅かに揺れる。
「ランド……お前も僕の味方はしてくれないのか……」
ヴァルロは剣を構え、ロイと向かい合った。
「ロイ、お互い時間もない。そろそろ最後の勝負といこうか」
「……ああ、望むところだ」
ロイも双剣を構え、ヴァルロを見つめる。
戦場は一瞬の静寂が訪れる。
「いくぞ、ロイ!!」
「おお!!」
2人は同時に地面を蹴り、互いの剣を振るう。
刀身と刀身がぶつかり合い、闇の波動が散り、光が弾ける。
「ロイ!!」
「ヴァルロ!!」
「うおおおおおおっ!!!」
ザシュッ!!
2人はすれ違い、それぞれの剣が血を浴びる。
また、静寂が訪れる。
「……ロイ」
ロイは呼吸を整えながらヴァルロの背中を見つめる。
「……」
ヴァルロはゆっくりと膝をつく。
「……お前の勝ちだ」
ロイは剣を収める。
「ヴァルロ……」
「……トドメを刺せ。僕はエルダー・ドラゴンを復活させ、世界を滅ぼそうとした……」
ロイはゆっくりと剣を構え、ヴァルロへ向ける。
「ああ……」
「ロイ、最後に頼みがある」
ヴァルロは虚ろな目で下を向きながら言う。
「まさか魔王様のこと頼むとか言うんじゃねーだろうな?」
「……」
「……トドメの前にヴァルロ、最後に聞くぜ」
「……なんだ?」
「お前の本当の目的はなんだ?今まで嘘ついてんだろ?」
「……」
「お前の嘘は魔王様も気付いてる、本当のことを聞かないとお前の頼みは聞けない」
ヴァルロは静かに目を閉じる。
「エルダー・ドラゴンの復活により、魔族は大いなる災いから解放され、安定を迎えるだろう」
「え……」
「これが初代魔王の予言の全文だ」
「大いなる災い?なんなんだそれは?」
「魔血凍病……僕とレイの両親を奪った恐ろしい病気だ」
「魔血凍病!?それが魔族への災いなのか!?」
「ああ、いずれそれが魔族を破滅に追い込む。5年前……僕はお母様が亡くなった日、それを回避する方法を探し始めた……そして見つけたのが初代魔王の予言だ」
「その予言が本当って確信はあるのかよ!?それにそんな災いだってお前や魔王様に降り懸かる確証だって……」
ロイはヴァルロを見た。
そして、この戦いの中、ヴァルロが何度か身体を痛がっていたのを思い出した。
「まさかお前!!!」
「ああ、僕はすでに魔血凍病に蝕まれている」
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