第233話 魔王軍到着
サンベルス城前にて、帝国軍とカエデ、モミジ、そして山猫山賊団が戦っていた。
善戦はしていたが、圧倒的数の違いでカエデ達は劣勢に立たされていた。
相手の数は半分ほどまで減らしたが、こちらの全員に疲労の色が見えた。
「ハア……ハア……キリが無いわよモミジ!!」
「うーん……ダメそうですね……」
「オーホッホ!!早く諦めてしまいなさいな!!」
ロゼーリアはそれを見て笑う。
「……」
ヤットは後退りした。
「お前達!!引き際よ!!トンズラするわよ!!」
「「「ラジャー!!!」」」
そう言うと、山猫山賊団はヤットを先頭に背後の森に逃げて行く。
「ちょ、どこ行くんですかヤットさん」
モミジは無表情で聞く。
「山猫山賊団は勝てない戦はしないわ!!十分力は貸したでしょ、じゃーねー」
そう言って、山猫山賊団は全員退いて行った。
「ありゃまー」
「ありゃまーじゃないわよ!!どうすんの!?」
カエデとモミジは大量の帝国軍の軍勢を前に立ち尽くす。
「山賊ってそんなもんですからね」
「何で貴女そんな楽観的なのよ!!」
「楽観的なのではありません、楽しいのですよ」
「た、楽しいって……この状況で何を楽しんでるのよ」
「可愛い妹と一緒に戦えているからです」
モミジは少し微笑んだ。
「……はあ、貴女といると調子が狂うわ」
カエデも少し微笑む。
「いつも助けてくれてありがと、モミジお姉ちゃん」
「……こちらこそ」
カエデとモミジは帝国軍の軍勢を見る。
「まだまだ諦めないわよ!!行くわよモミジ!!」
「はい!!」
カエデとモミジが構える。
「敵は残り2人、さっさとやってしまいなさいな」
ロゼーリアがそう指示すると、帝国軍は一斉に走り出した。
「来るわよ!!」
しかし、帝国軍の兵士達はいきなり歩みを止めた。
「あれ?」
「どうしたのです!?早くソイツらをやってしまいなさい!!」
「ロ、ロゼーリア様……足が……」
「え?」
その帝国軍の兵士達の足を見た。
兵士達の足は、凍り付き、地面に張り付いていた。
「な、何ですのこれは!?」
その時、カエデの前に何者かが現れる。
「フッフッフ……冷たい悪の氷、お前の心まで凍り付かせてやろう」
それは魔王軍の現第3魔将のサイだった。
「ゆ、雪女サイ!!」
「氷魔人だ」
サイは視線をロゼーリアと帝国軍に向ける。
「さあ、心まで冷たく静かに眠れ……」
サイが手を掲げると、鋭い氷の刃が宙に浮かび上がる。
そのまま帝国軍に向かって放たれる氷の矢が兵士たちを襲った。
「くっ……!なんて奴ですの!!」
ロゼーリアは一瞬怯んだが、すぐに冷静を取り戻す。
ドガッ!!
その時、突然どこからともなく、熱線が戦場に飛んできた。
「ぐああああああ!!」
その爆風に巻き込まれ、何人か兵士達は倒れた。
雪と氷を一瞬で溶かすその熱気の中から、カエデの前に巨大な屈強な男が現れる。
「ハッハッハ!某の名を知りたいか!?灼熱豪傑、ゴラドだ!!」
その笑い声は戦場全体を揺るがすほど響いた。
「灼熱豪傑のゴラド!?」
ザシュッ!!ザシュッ!!
すると、突然兵士達が音も無く倒れ出した。
そして、影のように静かに何者かがカエデの前に現れる。
「……全く、派手な人達だね君達は」
それは現第1魔将、抜き足のキザだった。
「キ、キザさんまで!!」
「久しぶりだねカエデさん」
ドンッ!!
そして、その瞬間、戦場全体に暗黒の魔力が広がり、すべての視線が一点に集中する。
その視線の先に現れたのは、魔王レイカ・ユミナル・ダークだった。
その漆黒のマントを翻し、闇のオーラをまとった姿を全員がじっと見つめた。
「フフフ……絶望と希望の狭間に立つ者たちよ!!聞くがいい!この世の光も闇も、すべては我が手の中にある傀儡にすぎぬ!!震えよ、そしてひれ伏せ!!ガーハッハッハー!!」
レイカは中二病全開のセリフを吐きながら、戦場の中心に降り立った。
「レイカ……」
カエデがその姿を冷ややかな目で見つめる。
「い、いや……たまには魔王らしく悪者っぽく派手に登場してみたくて……」
「私は嫌って言ったんですよ……」
「ちょっと無理がありましたね」
「中二病全開のレイも可愛いよ」
「ん、んんっ!!」
レイカが軽く咳払いをした。
「さあ!!魔王軍!!今到着したよ!!」
そして、その背後から魔王軍の勢力が一気に結集し、形勢は完全に逆転する。
帝国軍の兵士達は足がすくみ、ロゼーリアの顔にも焦りの色が浮かぶ。
「く……魔王軍……こんなに早く到着するなんて」
「さあ!!良くも僕の可愛い子分達を可愛がってくれたな!!」
「誰が子分よ」
「とりあえず……後は魔王軍に任せて休憩しましょうカエデ様」
「そうね」
カエデとモミジは魔王軍の後ろに下がった。
「ロゼーリア様……どうしましょうか?」
「くっ……帝国軍の戦力は残り半分ほど、それに兵士達の疲労も見える、トップもいない。魔王軍と戦って勝てる可能性は……」
ロゼーリアは唇を噛む。
「ロゼーリア様……ご指示を……」
「わ、わかっていますわ!!全軍、撤退しますわよ!!」
「ロゼーリア様」
「えっ?」
そこに忍者部隊の虚空が現れた。
「虚空さん!!ま、まさか……」
「ええ、持って参りましたよロゼーリア様」
虚空は闇の魔力玉を手に持ち、ロゼーリアに見せる。
「えっ!?あれは闇の魔力玉!?どうして!?」
それを見て驚くレイカ。
「よくやりましたわ虚空さん!!これで魔力玉は全て揃いましたわ!!」
ロゼーリアは懐から残りの7つの魔力玉を取り出した。
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