第226話 決戦開始
「いよいよ始まっちまうのかな、魔王様大丈夫だろうか」
俺とカエデはサンベルス城の高層階で窓の外を見ながら言う。
「あの子は強いから、きっと大丈夫よ。それより私達も何かあったら加勢に行かないといけない訳だから、準備しとかないとね」
「そうだな」
そう言う俺の方を向くカエデ。
「あ、あのさ……ロイ」
「ん?何?」
「え、えっとね……」
『剣も恋も、誰にも負けんじゃないわよ』
何かを思い出すように話すカエデ。
「ロイってさ……好きな人とかって……」
何かを言いかけるカエデだったが、窓の外を見て、言い淀んだ。
「あれって!?まさか!!」
「へ?」
俺も窓の外を見た。
そこにはサンベルスの外から大量の兵士が歩いてきているのが見えた。
「な、なんだありゃ!?」
「帝国軍の兵士よ!一体どうなってんの!?何で魔王城じゃなくてサンベルスに……」
「何か話に来たのか?協力を求めに来たとか?」
「それであんな大量の兵士を挙兵する意味がないと思う……まずいことになったわね……」
カエデは少し考え込んだ。
「至急コアネールに連絡して、私とロイは戦闘の準備よ!!」
「あ、ああ!わかった!!」
そして、俺とカエデ、そしてコアネールさんとリコちゃんはサンベルス郊外の原っぱへと向かった。
「こ、これは……一体何のつもりですの!?」
そこにいた大量の帝国軍の兵士を見て驚愕するコアネールさん。
「オーッホッホ!!ご機嫌麗しゅうコアネールさん」
その兵士の中には馬車に乗るロゼーリアの姿があった。
「ロ、ロゼーリアさん……これは一体何の真似ですか!!」
「何って、貴方達今手薄でしょ?だから今のうちに潰しちゃうかなって」
「つ、潰すって……帝国軍同士で争うのですか!?」
「貴方達が魔王軍と組んで魔王軍に加担しようとしてるのは目に見えていましたわ。だから、魔王軍に加勢を向かわせてる今のうちに潰しちゃうかなーって」
ロゼーリアは退屈そうに自分の爪を見ながら言った。
「この女……自分が何をしようとしてるかわかってるですの!?同じ帝国軍同士で潰し合うなんて、長い歴史の中でも類を見ないですわ!!」
「今まで上手くいってなかったのだから、今までやったことないことをやるべきだと思わないかしら?」
「く……」
コアネールさんは冷や汗を垂らす。
「コアネールさん、やるしかねーのか?」
「ええ……そうなのですが状況が悪すぎますわ……」
コアネールさんは敵全体を見渡した。
「敵の数はざっと2000人はいますの、それに対してサンベルスの兵士は全員で200人……さらにここに攻めてくると思っていませんでしたので戦闘の準備も出来ていない……それにカードのポニスさん、エース、ジャックさんは魔王城へと向かわせてしまっています。さらに敵の中には手練れのバスターズもいる」
俺は敵を見た。
そこにはキャプテン・トップに現バスターズのリーダーサイガや参謀のシナモ、その他バスターズの面々がいた。
「キャプテン・トップ……」
「わかったわ、とりあえずコアネールとリコはサンベルス城に戻って戦闘準備を進めて!そして至急カードと魔王軍に連絡を!ここは何とか私とロイで時間を稼ぐ」
「し、しかし……こんな数相手にお二人で……」
「何言ってんだ、俺とカエデのコンビに不可能はないって」
俺とカエデは目を合わせる。
カエデはうんと頷いた。
「わかりました……こんな無理難題を押し付けてしまい、申し訳ございません」
「良いって、コアネールさんは気にせず準備を初めてくれ」
「わかりました!!リコ!行きますわよ!!」
「はい!!ロイさん、カエデさん、ご無事で……」
そう言って、コアネールさんとリコちゃんは振り向いてサンベルス城の方へと走っていった。
そして、敵の軍勢の方を向く俺とカエデ。
「はっ!何をするかと思えば2人だけ残して去るなんて……バスターズ、あの2人を囲んでしまいなさい」
ロゼーリアがそう指示すると、バスターズの面々は俺とカエデを囲うように並ぶ。
四方八方から攻撃するつもりだろう。
俺とカエデはそれを見て、背中合わせになる。
「ロイ、背中は任したわよ!」
「ハハ、俺もカエデに背中を任せてもらえるようになったんだな!!」
「コラ、こんな状況で笑ってないの!」
「いや、何かこうやってカエデと並んで戦えるのが嬉しくてさ」
「バカ……油断してやられないでよ!」
「わかってるよ!!」
俺とカエデは剣を構えた。




