第223話 兄妹の絆
あれからしばらく経ち、夜になった。
レイカは病院の屋上に座っていた。
「今日は星が綺麗」
空を見ながら言うレイカ。
(お父様やお母様やランドも、この星のどれかになって見てくれてるのかな?)
ニコニコしながら星を見るレイカ。
「そろそろ戻って寝ようかな、明日はコアネール達と会議があるし」
レイカは立ち上がった。
「レイ」
「へ?」
レイカは声がした後ろを見る。
そこには月を背後に羽ばたくヴァルロの姿があった。
「......」
「なんだ、レイならもっとリアクションを取ってくれると思ったが」
「......」
ジーッとヴァルロを見て、口を閉ざしているレイカ。
「レイ?」
「......」
レイカは後ろを向く。
「ハハハ......もしかして口を聞いてくれないのか?」
「......」
「すまなかったな、顔出せなくて......だから話してくれないかな?」
「.....」
レイカは首を横に振る。
「手厳しいな......」
「......」
レイカは自分を指差す。
「レイがなんだ?」
「……」
今度はヴァルロを指差す。
「レイが僕を?」
「……」
指をクロスさせ、バツを作った。
「バツ?嫌いってことか?」
「……」
レイカは首を縦に振る。
「ハハハ、それは辛いな......じゃあこれは僕の独り言だから、聞いてくれ」
「……」
「闇の魔力玉の在りか、ホントに知らない?」
「!?」
レイカは明らか動揺する。
「知ってるんだね?」
「……」
「誰から聞いたの?」
「……」
「ランドだな?」
「……」
「やっぱりな、ランドは絶対何か知ってると思っていたんだ。わかったよ、僕も直接ランドに聞く、今ランドがどこにいるかわかるか?」
「……」
「わかった……」
バサッ!!
ヴァルロは翼を広げた。
「レイが教えてくれないんだったら自分で探す。悪かったね、問いただして」
「……」
「じゃあ、レイも元気で」
ヴァルロは後ろを向き、飛び立とうとした。
それを見て、慌てて口を開くレイカ。
「待って!お兄様!!」
レイカはヴァルロの手を掴んだ。
ヴァルロは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になり、翼をたたんだ。
「ハハ、やっと話してくれたね」
「お兄様のバカ……僕寂しかったんだよ……何で会いに来てくれないの……」
「すまない……やる事はあったんだ」
「次会いに来てももう口聞いてやらないと思ってたけど、我慢出来なかったよ……」
「ハハ、このまま口聞いてもらえなかったら僕もショックだったよ」
ヴァルロはレイカの頭を撫でる。
「うぅ……お兄様くすぐったいよ」
「こうやって撫でてやるのも久しぶりだな」
「もお……僕もう子どもじゃないんだよ」
「僕から見ればまだまだ子どもだよ」
「ランドみたいなこと言って……」
「そうだ、レイ、ランドに闇の魔力玉の場所を教えてもらったんだろ?どこなんだ?」
ヴァルロはレイカの頭から手を離し、聞いた。
「……」
「レイ教えてくれ、必要なんだ、頼む」
「うん......」
レイカは懐から闇の魔力玉を取り出した。
「これは......もうすでにレイが持っていたのか、これは意外だったよ」
「けど、お兄様……あのね」
「それを僕に渡してくれないか?」
「……」
「レイ、お願いだ、それがないと僕の計画が台なしなんだ」
「嫌!!!」
レイカは叫んだ。
「いくらお兄様でもこれは渡せない!!これはランドの形見だから!!」
「形見?」
「あのね聞いてお兄様、ランドは僕をかばって死んじゃったの」
そう訴えかけるように言うレイカだったが、それを聞いても、ヴァルロは無表情だった。
「……そうか」
「でもね!ランドは最後に僕を認めてくれた!立派な魔王って言ってくれたんだよ!あのランドが!」
「……」
「でも僕一つ決めたことがあるんだ!恥ずかしくてみんなにはまだ言えないけど、お兄様には......」
レイカがヴァルロを見ると、無表情のヴァルロの目からは涙が流れていた。
「お、お兄様泣いてるの!?」
「……ランドは物心付く前からの付き合いだ。やはり少しは悲しいな」
「お兄様が泣くなんて……お母様やお父様が亡くなった時も泣いてなかったって聞いてたのに」
「お母様やお父様が亡くなった時も心の中では泣いていたのかもね……ともあれランドがレイにそれを渡したってことは、ランドは僕よりレイを信頼した証拠だ」
ヴァルロは涙を拭いた。
「そんなことないよ、ランドはお兄様に魔王になってほしがってた」
「前まではね、今は違う」
「……お兄様は後悔してるの?魔王城を出ていったこと」
「してないよ、一度決めたことだ。結果がどうであれ後悔はしない」
「お兄様……」
レイカは闇の魔力玉をじっと見て、ヴァルロに差し出した。
「どうしたの?」
「こんなことしたらみんなに怒られるかも知れないけど、僕やっぱりお兄様の妹だから」
「嬉しいな、まだ兄として慕ってくれるのか?」
「けど......約束して!いつか、いつまででも待つから!!この玉を持って魔王城に戻ってきて!それで僕の代わりに魔王になって!!」
「わかった、魔王になるかはわからないけど、必ず魔王城に戻る」
ヴァルロはレイカから闇の魔力玉を受け取った。
「それと悪いことには使わないでね!!」
「ああ、ありがとなレイ」
バサッ!!
ヴァルロは翼を広げた。
「またすぐ会いに来てよ!!」
「わかってるよ。レイ、またね」
ヴァルロはまだレイカの頭を撫でる。
そして、ヴァルロは飛び立った。
「お兄様……」
それを心配そうに見つめるレイカ。
「ランド、これでよかったのかな……」
闇の魔力玉を見つめながら飛び立つヴァルロ。
「そうか......ランドはもういないのか」
「珍しく感傷的になってますね」
「ん?」
ヴァルロはその声を聞くと、サンベルスの外れの森に着地した。
そこには腕を組み、木にもたれかかるモミジの姿があった。
「スカーレット、久しぶりだね」
「はい、久しぶりですね」
「元気そうで何よりだよ」
「そんなことより、これからどうするおつもりですか?」
モミジは腕を組んでいたのを外し、木から離れヴァルロに近付く。
「レイから闇の魔力玉を貰った。後は計画通りにやるだけだよ」
「そうですか......」
「ああ、僕は急ぐ、スカーレットも頼んだよ」
そう言ってヴァルロは翼を広げ、飛び立とうとした。
「......」
「じゃあねスカーレット」
バサッ!バサッ!
ヴァルロは翼を羽ばたかせ、飛び立った。
「......」
スタッ......
しかし、直ぐに翼を折り畳み、戻って来る。
「どうしたスカーレット?何か様子がおかしくないか?」
ヴァルロはいつもと様子が違うモミジが心配で戻って来た。
「......ヴァルロ様、私はヴァルロ様に感謝......してます」
「どうしたいきなり、スカーレットらしくない」
「いえ、忍者部隊を抜け、途方にくれていた私に希望をくれた。この力を何かの役に立てるようにしてくれた、明るく生きることを教えてくれた」
モミジはいつもの無表情でそう言う。
「何言ってる、僕の目的と利害が一致しただけだよ。感謝されるようなことじゃない」
「それでも、居場所を与えてくれた貴方に私は、感謝しています」
相変わらず無表情で言うモミジ。
「なら良かった、この革命軍を組織して誰かを幸せに出来たなら、僕も嬉しいよ。君を一番に仲間にして正解だったよ」
「それだけです、これから頑張りましょう。それと......」
少し言い淀むモミジ。
「どうしたんだ?」
「あの......私の本当の名前は」
「うん、知っているよモミジ」
それを聞いて少し赤くなるモミジ。
「じゃあ行くね、ありがとうモミジ」
そう言って、翼を広げ、飛び立っていったヴァルロ。
それをじっと見つめるモミジだった。
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