第221話 帝国軍の指導者
その頃、皇都ニューペルシアルでは......
今日新皇帝エンバンスの皇帝就任挨拶が行われていた。
就任挨拶は帝国軍の兵士が集まった集会所で行われている。
エンバンスは壇上に立ち、深呼吸をしてから兵士たちに向かって話し始めた。
「皆の者、この度新皇帝となったエンバンス・ブラン・ペルシアルです。前皇帝であり父ベインの跡を引き継ぎ、帝国軍の永遠の繁栄を目指していきます」
エンバンスがそう言うと、帝国軍の兵士達は拍手をする。
「今、我々の帝国軍は二つに分かれています。このままでは、敵である魔王軍と戦うことはできない。まずは内部の混乱を解決し、一つにまとまることが必要です」
それを聞いた兵士達の拍手は疎らだった。
「エンバンス様!!魔王軍と戦うのは後回しということですか?」
若い兵士がエンバンスに質問する。
「後回しという訳ではないです。ただまずは帝国軍内のゴタゴタを解決しなければいけないと思っています。具体的に言うと帝国軍友好派と和解する必要があると考えます」
そう答えるエンバンス。
エンバンスの考えは帝国軍は一つになり、打倒魔王軍となるようにするべきだという考え方だった。
それには難色を示す兵士達もいた。
「就任挨拶は以上です。次はそれぞれの兵舎へ挨拶へ回りますので後ほどよろしくお願いします」
そう言ってエンバンスは壇上から下りる。
そして大臣と近衛兵と合流する。
「お疲れ様でした皇帝様」
「ああ、だがやはり難色を示していたな......これから理解してもらうようにしっかりと説明していか」
ドゴォォォン!!!
その瞬間、エンバンスの背後から大きな音がこだました。
驚いて後ろを振り返るエンバンス。
そこには天井が破壊され、何者かが天井から落下してきていた。
「な、何だ!?」
ドンッ!!
その何者かは地面に着地した。
それは元バスターズキャプテン、キャプテン・トップだった。
「キャ、キャプテン・トップ!?」
兵士達は驚き戸惑い、ざわついた。
「静粛に!!」
そして、キャプテン・トップの後ろに隠れていた人物が大きな声を上げる。
それはエンバンスの姉、ロゼーリア皇女だった。
「ロ、ロゼーリア!?」
エンバンスは驚く。
ロゼーリアは堂々とした態度で壇上に上がり、兵士達の前に立った。
彼女の姿が見えると、兵士達は一斉に注目した。美しくも威厳に満ちた姿でロゼーリアの存在感は圧倒的だった。
「ま、まずい!!あの女に話をさせるな!!」
エンバンスが指示をすると、近衛兵達は壇上に立つロゼーリアを取り押さえようとする。
しかし、キャプテン・トップがその邪魔をする。
「ハッハッハ、姫の邪魔はさせませぬぞ」
「キャ、キャプテン・トップ......」
そして、ロゼーリアは口を開いた。
「愚弟よ、兵士達は待ちきれないのです。魔王軍を早く倒すべきだという声に気付かないのですか?民は苦しんでいるのだから」
ロゼーリアは兵士達に向かって力強く演説を始めた。
「皆の者、私はロゼーリアです。このエンバンスに陥れられ帝国軍を去りましたが、今戻ってまいりました」
軽く礼をするロゼーリア。
「私達の民は今、魔王軍の脅威にさらされている。エンバンスの言う帝国軍が一つにまとまることは重要ですが、それ以上に早急に行動を起こすことが必要です。魔王軍を倒し、民を守るために、私達は今すぐにでも戦うべきなのです!!」
それを黙って聞く兵士達。
「我々帝国軍は魔王軍に苦汁を飲まされてきた。アルガンド城事件、私のおじい様が当時の魔王に殺された事件が記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう」
ロゼーリアがそう言うと、兵士達は表情を変える。
「今帝国軍が力を付けています!!十分に魔王軍を倒せる戦力はある!!忍者部隊、そしてG3の後に続いて、今直ぐにでも挙兵すべきなのです!!そして!!魔王軍を倒して天下を統一し、平和な世界を我々の手で作らないといけないのです!!帝国のプライドを今ここに!!」
「おおおおおおおおっ!!!」
ロゼーリアの言葉に、兵士達は歓声を上げた。
彼女の強い意志と情熱に、多くの兵士たちが心を動かされた。
エンバンスは一瞬、言葉を失ったが、すぐに冷静さを取り戻し、口を開いた。
「ロゼーリアの言うことも一理ある!しかし、内部の混乱を放置したままでは、魔王軍に勝つことは出来ません!!そして犠牲も多くなる、私達が一つにまとまれば、必ずや少ない犠牲で勝利を手にすることができるのです!!」
エンバンスの言葉に、兵士たちは静まり返った。彼の冷静な判断と強い意志に、信頼を寄せる者もいた。
しかし、ロゼーリアは一歩も引かず、再び口を開いた。
「エンバンス、貴方は誇り高き帝国軍の兵士達を軽んじています。犠牲が出る、自分の命が惜しくて戦っている兵士はいますか!?」
そうロゼーリア言うと、兵士達は首を横に振った。
「そんな腰抜けはこの帝国軍にはいないはずです!!私も一度失脚した身、死など怖くありません!!皆様、私と共に魔王軍を打ち倒しましょう!!」
ロゼーリアの言葉に、兵士達は再び歓声を上げた。
その時、一人の若い兵士が前に進み出て、ロゼーリアに向かって言った。
「ロゼーリア皇女様、私達は貴女に従います!!魔王軍を倒し、民を守るために、今すぐにでも戦って命を燃やす準備ができています!!」
若い兵士の言葉に、他の兵士達も賛同の声を上げた。ロゼーリアは微笑み、兵士達に向かって力強く頷いた。
「その力強い言葉、このロゼーリア感激いたしました!!私達は一つにまとまり、必ずや勝利を手にすることができます!!共に戦いましょう!!」
ロゼーリアの言葉に、兵士達はまた一斉に歓声を上げた。
「ロゼーリア様!!ロゼーリア様!!」
リズムよくロゼーリアの名を叫ぶ兵士達。
それを他所に悔しそうに見つめるエンバンス。
「ロゼーリア......貴様......」
「オーホッホ!!弟ごときが姉である私に楯を突くからですわよエンバンス!皇帝の座はくれてやりますが、実権は私がいただきますの!!」
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