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番外編 サイの過去

私はサイ・トリコーリ、魔王四天王にして魔王城人事部長だ。


今は魔王様と共にサンベルスへ向かっている最中である。


「ねえサイちゃん、結局ランドって幸せだったのかな……」


そう私に聞いてくる魔王様。


「もちろん、幸せだったと思いますよ。ランド様は魔王様が幸せなら幸せな人でしたから」


「そっか……なら僕ももっと幸せにならないとね」


「はい、魔王様は幸せになって下さい!私も魔王様が幸せなら嬉しいですよ!」


「ありがと、サイちゃんはどうして僕をそんなに慕ってくれるの?」


「どうしてって……魔王様は恩人ですし、優しく可愛らしくて尊敬していますよ!!」


「そ、そうかな……」


魔王様は照れくさそうな表情をする。


可愛いな魔王様は。


そう、私にとって魔王様、それにランド様は恩人だった。


2人がいなかったら私は今ここにはいない。

本当に感謝している。

















6年と少し前


私が17の頃だった。


「サイ、屋根の雪かきやったべ?」


「お母、朝一番にやったべ」


私は当時、実家のトリコーリ山で母と妹と弟と住んでいた。


実家は畑で農作物を作り、それを麓の町で売り生計を立てている。


私は麓の町の小さな学習塾に通いながら、母の畑の手伝いをしたり、妹達に勉強を教えたりしていた。


「サイ姉、こご教えてくんろ」


「こごはさっきやったとごろとおんなじだべ、おんなじやり方で解いてみ」


「んだ!わがっだ!」


私は弟妹に勉強を教えるのが好きだった。妹、弟だけでなく近所の子ども達に勉強を教えることもあった。


今日も妹、弟に勉強を教えていた。


「サイ姉、成人になるだべ、そしたらどうするだべ?」


と弟が聞いてきた。


「え?そ、そうだべな......」


「何言ってんだべ、サイ姉は山の男の子達の憧れだべ、引く手あまたで嫁ぐに決まってんだべ」


と言う妹。


と言うのもトリコーリ山の集落では女は18になると結婚を考える。


そして同じ氷魔人の男と結婚し、添い遂げるというのが氷魔人の女の常識であり憧れでもあった。


「サイ姉、結婚すんだべか?」


「う、うーん......そ、そういう話は子どもがする話じゃないべ!早く勉強するべ!」


そうは言ったが確かにお見合いの話はいくつも来ていた。


母はその度にニコニコと話してくるが、私は正直乗り気ではなかった。


「ん?これなんだべ?」


弟は私の部屋の本棚に置いてある冊子に気が付き、取り出す。


「あ!そ、それは!!」


「なんだべこれ?町の大学の紹介冊子だべ」


それは私が持っていたサンダトルト大学の紹介冊子だった。


「何々?この大学さ先生になるための勉強する大学だべ」


「や、やめるだべ!勝手に見るもんじゃないべ!」


私は弟から冊子を奪う。


「サイ姉、大学に行きたいべ?」


「い、いや......お、お母にはまだ秘密にするべよ!」


そう私は母に隠れて大学進学を目指していた。


大学は近くの村や小さい町にはないので、遠くの大きな町まで下宿をする必要がある。


田舎であるトリコーリ山の集落では類を見ないことであった。


「サイ姉は頭良いし、教えるの得意だべ!絶対大丈夫だべ!」


「んだ!んだ!サイ姉にはやりたいことやって欲しいべ」


そう言う妹と弟。


「そ、それはありがてが、田舎の文化でなかなか難しいんだべ。この話はいいがら勉強するべ」














次の日


「サイ、昨日村医者の息子ざんがお前と縁談を申し込んできたべ」


「え......」


母はそう言う。


村で唯一の村医者の息子である。


その人は美男子で性格も優しく頭も良い、村の娘達の憧れの存在だった。


「あんな良い男は集落だげでなく世界中探してもいないべ、まずはお見合いをお願いするがそれでええか?」


「あ......お、お母、あの......」


「なんだべ?」


「私、サンダトルトの大学に行ぎたいべ」


私は思いきって言った。


「大学?いきなりなんだべ」


「私先生なりたい思うて、トリコーリの集落でそんなのおがじいてわかっとるが、私はやりたいことやりたいべ」


「何言うとる!お前は田舎者でそんなの無理だべ!氷魔人の女は嫁いで幸せになるもんだべ」


「わがっでるし、お母の気持ちもよくわがっでるけんど、都会に行って挑戦したいんだべ!」


「無理に決まっでる!お前は賢く気立ても良い娘だが、こんな集落で生まれ育った田舎者だべ、都会さ行っても上手くいきっこないべ!」


「それもわかっでる!けんども......どうしても行っでみたいんだべ!」


「......わがっだ、別に止めさしないが、それなら勝手にするべ、お母はお前に協力すること何にもないべ」


母は怒っている様子で話す。


「お母、怒んないでほしいべ、私お母には育ててもらって感謝しとる」


「......」










こうして母は反対したが、一応大学進学の許可を得た私はそこから勉強を頑張った。


その結果、サンダトルト大学に合格し、次の春から入学することとなった。


「サイ姉!がんばってだべ!」


「がんばってだべ!」


私がサンダトルトに向かう日、妹と弟、そして母は見送ってくれた。


「全く......氷魔人の女が大学なんで前代未聞だべ」


母は腕を組みながら私を見る。


「お母、今までありがとだべ!私頑張ってくるべ!」


「全く......」


「じゃあ私行っでぐるから!みんなも元気でだべ!」


私は家を出ようとした。


「サイ」


しかし母に呼び止められる。


「なんだべさ」


「しっかりやってくるだべよ」


母は少し微笑みながら言った。


「お母......」


私は目に涙を浮かべる。


「ありがと、がんばってくるべ!」


こうして私は晴れてサンダトルトに下宿することとなった。



面白い!続きが気になる!今後に期待!


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