第219話 安心する谷間
それから3日後……
ランドの葬式を魔王城で執り行い、ランドの墓はガイル、ミーナの墓の隣に建てられた。
そして、葬式の後、レイカは部屋に閉じこもってしまった。
魔王城の全員がレイカを心配し、レイカの部屋の前に立っていた。
「魔王様......大丈夫だろうか」
「心配だ......」
ドンッ!!
その瞬間、レイカの部屋の扉が開き、中からレイカが出てきた。
「でーきた!!」
レイカは紙に描かれた何かを持っている。
そして、外で心配して見ていた魔王城のメンバーと目が合う。
「何だー!?みんなしてどうしたの!?」
「い、いえ......魔王様が心配で」
「心配御無用!!僕は大丈夫だよ!!」
そう言って微笑むレイカ。
そんなレイカに涙する一同。
「ほら!!これ見てよみんな!!」
レイカは紙に描かれている何かを突き出した。
その絵には何やら人が描かれているようだった。
「な、何でしょうかこれは?」
「見てわからない!?ランドの絵だよ!!ランドの写真全然なかったんだ、だから僕が描いた!!」
「これランド様だったのか......」
困惑する魔王城のメンバー一同。
「何?似てるでしょ?」
「え!?あ、はい!!似てますね!!」
魔王城のメンバー一同は困惑しながらも頷く。
「うんうん!!これを写真の代わりに部屋に飾ってお供えするの」
「そうですか、でも思ったより元気でよかったです」
ゴラドは魔王城のメンバーを代表してそう言う。
「うん、いつまでもクヨクヨしてられないし、それじゃゴラドやみんな、僕行くね」
「どこへ行かれるのですか?」
「うん、この闇の魔力玉をサンベルスに持っていくんだ」
レイカは小さいリュックを背負った。
「誰かお供しなくて大丈夫ですか?」
「良いよ、みんなゴツくて暑苦しいし、可愛い女の子だったらついてきて欲しいけど」
大男ばかりの魔王城メンバーを見て言うレイカ。
「ですが......」
「大丈夫だって、それよりみんな仕事は?ランドがいなくなった今魔王軍の財布は僕が持ってるんだよ?ウカウカしてるとお給料減らすよ」
「「は、はい!!」」
こうして、レイカはサンベルスに向かって旅立つのだった。
レイカは城を出て少し進んだ道を歩いていた。
「……ロイロイやサイちゃんやお兄様にランドのこと言わないとね」
立ち止まるレイカ。
「ランド……」
一瞬ランドのことを思い出し、しょんぼりするレイカ。
しかし、大きく首を振る。
「ダメダメ!強く生きるって決めたんだ!落ち込んでたらダメ!!」
レイカは前を向いた。
「ランド、僕もう泣かないよ!!前向いて行こ!!もう余所見しない!!」
「魔王様」
「へ?」
レイカは上を向いた。
そこには木の幹に座るサイがいた。
「サイちゃん!?」
「久しぶりですね」
スタッ!!
サイは幹から飛び降りて、レイカの前に着地した。
「うわー!サイちゃんだ!ホントのホントにサイちゃんだ!!」
「ホントのホントに私ですよ」
「どうしてこんなところに?」
「はい、魔王城に戻る最中でしたが魔王様が見えたので」
「そうなんだ!!ちょうど良かった!!僕は今からサンベルスに向かう途中なんだ」
レイカは真剣な表情になる。
「ちょっとサイちゃんに言わないといけないことがある」
「はい?何でしょう?」
レイカはサイに全てを話した。
「そうですか……ランド様が」
サイは涙ぐんでいた。
「うん、僕を守って死んじゃったんだ」
「ランド様らしいですね......」
「ランドは僕に立派な魔王になったって言ってくれた。最後には僕の下に戻ってきてくれたんだ」
レイカは必死に涙を堪える。
「だから僕......もっと……がんばって…がんばって…………」
「何言ってるんですか、ランド様も含め魔王城のみんなは魔王様が大好きなのですよ」
「ぞんな゛こど言わない゛でよ……泣かないっできべだのに……」
レイカは涙を堪えきれず、泣いてしまった。
「まあなんだ……魔王と言えど女の子なんだ、涙を見せないのは難しいでしょう、はい」
サイはクマさんの絵がプリントされたハンカチを渡した。
「可愛いハンカチ、ありがと……」
レイカはハンカチで涙を拭いた。
その様子を温かい目で見つめるサイ。
「ねえサイちゃん、もう一つ頼んで良い?」
「はい、何だって頼んで下さい」
「ハグしてもいい?」
「いくらでもどうぞ」
ガバッ!!
レイカはサイに抱き着く。
「サイちゃんー!!やっぱサイちゃんは安心するー!!」
「やっぱり可愛いなー魔王様は」
レイカはサイの胸に顔を埋めた。
ぷにょん......という柔らかい感触がレイカの顔に感じられる。
「むほほー!!これが至高なんだよこの谷間に顔を埋めることこそが至高!!これだけで魔王になって良かったと思えるー!!」
「よしよし、頑張ったな魔王様」
レイカの頭を撫でるサイ。
そして、レイカはサイから離れ、仁王立ちした。
「よし!充電完了!!もう出る涙も無くなった!元気に行くよ!!サイちゃん!!」
「はい!魔王様!!」
こうしてレイカはサイとともにサンベルス城へ向かうのだった。
その背中は少し成長したような気がした。
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