第218話 大切な存在
そして、場面は現在に戻る。
ランドは倒れたレイカを庇いながら、忍者部隊の頭領清浄とその他多数の忍者と対峙していた。
(そうだ、そう5年前に俺は誓った。今こそその誓いを果たす!その時だ!!)
ランドはレイカの方を見た。
そこにはレイカに向けて、短刀を振り上げる清浄がいた。
「レイカお嬢様に手を出すな!!」
ランドは痺れる身体を無理矢理動かし、咄嗟に立ち上がり、レイカに覆いかぶさった。
ザシュッ!!
清浄の短刀はランドの背中に突き刺さる。
「ぐっ!!」
清浄は突き刺さった短刀を引き抜いた。
それと同時にランドの背中から大量に鮮血が舞う。
「ちぃ!まだ意識がありましたか!面倒だ、お前達、やってしまいなさい」
清浄が指示を出すと、何人かの忍者達が短刀を抜き、レイカに斬りかかった。
「レイカお嬢様だけは……」
ランドはまたレイカに覆いかぶさった。
ザシュッ!ザシュッ!
そして、数本の短刀がランドに突き刺さる。
「……守り抜いて見せる」
ランドの身体からは大量に出血していた。
激しい痛みと痺れに苛まれながらも、レイカを守るため、立ち続けた。
「馬鹿ですね!!この状況、毒ガスでろくに動けもしない。私に加え優秀な忍者部隊のメンバーに取り囲まれて、助かるはずがない!!闇の魔力玉と魔王さえ渡せば貴方に危害は加えないのですよ!!」
「ハアハア.....俺の命などどうでもいい!!死なせはしない!!この俺の命が尽きようと……レイカお嬢様は絶対に死なせない!!」
ランドは血を大量に流しながら清浄を睨む。
「くっ!馬鹿馬鹿しい、なら早く死ね!!」
清浄と他の忍者達は一斉にランドとレイカに斬りかかった。
『頼むぞ?レイのこと』
『この子のこと頼んだわよ』
『ランド、レイのこと任せたよ』
(ガイル様、ミーナ様、ヴァルロ様……)
その瞬間、ランドから眩い光が放たれ、瞬く間に巨大なシールドが形成された。
「うおおおおおおおおお!!!」
ガガガガガガッ!!!
そのシールドはどんどん大きくなり、そのシールドに触れた忍者達を取り込み、消滅させていく。
「レイカお嬢様だけは!!レイカお嬢様だけはこの俺が絶対守り抜く!!これが俺の生きた意味!!俺の責任だ!!!」
「な、何だこれは!?」
清浄は立ち止まる。
そして、そのシールドを後退し、避けた。
そのシールドは清浄以外の忍者部隊を消滅させると、音もなく消えていった。
「ハア……ハア…………」
「くっ……まだこんな力を隠していたとは……私としたことが不覚……」
ドサッ......
ランドはレイカの隣に倒れた。
「しかし、これで完全に魔力切れ、それにその出血ではもう立てやしないでしょう」
そう言うと、清浄はまたレイカに近付く。
「優秀な部下を多数失った。だが、闇の魔力玉に魔王の暗殺に成功したとなると大きな快挙だ」
そして、短刀を振り上げる。
ガシッ!!
しかし、清浄は後ろから首を掴まれた。
「な、何!?」
それは、大量に血を流しながら立ち上がるランドだった。
「き、貴様……何で立って……」
「……レイカお嬢様は……俺が……守る……」
「くっ!!離せ!!死に損ないが!!」
ドスッ!!
清浄は後ろを向きながら、短刀をランドの胸に刺した。
それでもランドは微動だにしない。
「え……な、なぜ……」
「死んでも……守る!!」
ランドの清浄を掴む手からは小さなシールドが展開された。
「ク、クソォ!!私は忍者部隊の頭領清浄だぞ!!こ、こんなところで!!」
ドガッ!!!
ランドは手から衝撃波を発生させた。
その衝撃波は清浄の身体を吹き飛ばした。
「ハア……ハア……」
それを見ると、ランドはレイカの隣に倒れた。
「う……ううん…………」
しばらく経ってから目を覚ますレイカ。
空からは雨がポツポツと降ってきていた。
「一体どうなって……忍者達は……」
辺りを見回すレイカ。
そして、ランドが隣に倒れていることに気がついた。
「ランド!?大丈夫ランド!?」
「…………レイカ……お嬢……様、よかった無事で」
「ランドが忍者部隊を倒してくれたの!?どうしようランド!凄いケガだよ!」
レイカは数か所に刺し傷があり、大量に出血するランドを見て、手を震わせながら言った。
「早く病院に......」
しかし、ランドは倒れながらも震えるレイカの手を握る。
「レイカ......お嬢様......立派になられた」
「な、何言ってるの!?良いから早く病院に」
「......レイカお嬢様、毎日ちゃんと3食食べてください、歯磨きもしてください、手洗いうがいも」
「止めてよそんなの!!」
「友達と仲良くしてください、部屋にばっかり引きこもらず外へも出てください」
「わかってるよ!!」
「それとこれを……」
ランドは懐から闇の魔力玉を取り出し、レイカに渡した。
「くれるの?」
「貴女はもう立派な魔王です……どんな危険な目に合おうと、きっと大丈夫。その玉を持つに相応しい、誰が何と言おうと......貴女は立派な魔王です、ずっと側で見てきた......俺が保証します」
「......ありがとう、大切にするよ」
涙を流すレイカ。
「……魔王が簡単に泣いてはダメです」
ランドは指でレイカの涙を拭いた。
「ランドぉ……」
「……レイカお嬢様」
レイカの涙を拭くランドの目からも涙が流れていた。
「ありがとう……俺に生き甲斐を与えてくれて……ありがとう……楽しい日々を与えてくれてありがとう……レイカお嬢様が大人になった姿…………見たかった......」
そう言ったレイカの涙を拭くランドの手は地面に落ちる。
それと同時にランドの目は静かに閉じる。
「ランド!?」
レイカはランドの身体を揺する。
「ねえ!ランド!!ランド!!」
もっと強く身体を揺するレイカ。
「なんで何も言わないの!?いや!!いやだ!!お願い!!返事して!!」
必死にランドの身体を揺するが、ランドはもう動かなかった。
レイカの目からは大量の涙が流れてきた。
「お願い!!お願い!!起きて!!死なないでランド!!」
何度もレイカは叫ぶが、変わらず雨が降り続けるだけだった。
次第に叫び疲れたレイカはランドの身体に顔を伏せる。
雨とレイカの涙でランドの血は垂れ流れていく。
レイカの涙は雨が止むまで流れ続けた。
レイカの脳裏には、小さい頃からのランドの思い出が思い出される。
「ランド......」
そして、数分後。
雨が止み、雲の間から光が差し込んできた。
レイカは顔を上げ、差し込んでくる光を見上げる。
「ランド、お礼を言うのは僕の方だよ。いつも面倒見てくれてありがとう!わがまま聞いてくれてありがとう!」
ランドの顔を見て、涙を流しながら笑うレイカ。
「僕頑張るから!!ランドが安心して見ていられるように頑張るから!!」
光は広がり、辺り全体が照らされた。
それはまるでレイカを祝福してくれているような光であった。
「本当のお父さんだと思ってたよ、ずっと見ていてね......ランド......」
それを聞いたランドの表情は安らかに笑っているように見えた。
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