第217話 ランドの過去 10
俺はその夜、城を出る用意を済ませ出口まで来た。
この城は俺の故郷と言っても過言ではない。
少し名残惜しいな……
ハハハ、30にもなる男が何言ってるんだ。
さて……じゃあ行くか。
『ランド!!』
『え……』
俺が後ろを向くと、眉間にシワを寄せたレイカお嬢様がいた。
『こんな時間にどこ行くの!?』
ひっそりと出ていくつもりだったが……
『すいませんレイカお嬢様、俺城を出ることにしました。どうかレイカお嬢様もお元気で』
『…………』
その時、レイカお嬢様の目から涙が流れた。
『みんな……どこか行っちゃうんだ……』
『レイカお嬢様……』
『みんな……どこか行っちゃうんだ!!僕だけ置いてどこか行っちゃうんだ!!お父様だってお兄様だってランドだってみんな僕のこと嫌いなんだ!だから僕を置いてどこか行っちゃうんだ!!』
レイカお嬢様は大量の涙を流しながら叫んだ。
『ち、違います!俺のことは何と言おうといいですが、ガイル様やヴァルロ様のことそんな風に言わないでください!!』
『……うぅ…もう……いい…………みんな……みんなみんな!!大嫌い!!』
レイカお嬢様は後ろを向き、自分の部屋に走っていった。
『レイカお嬢様!!』
俺はそれを追いかけた。
しかし、レイカお嬢様は自分の部屋に入り、鍵を閉めた。
『レイカお嬢様!出てきてください!!』
『いや!!みんなどこか行っちゃえ!!』
梃子でも開けてくれなさそうだな。
ハァ、何やってるんだ俺は。
この城に未練なんかない、早く出ていこう。
俺はレイカお嬢様の部屋に背を向け、歩き出した。
まずはサンダトルトの町に行くか、それからどんどん東へ進んで行こう。
『…………』
『みんな嫌い……お父様もお兄様もランドもみんな嫌い……』
レイカお嬢様は1人、部屋でうずくまっていた。
その時……
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
扉の外からその音は聞こえてきた。
『な、なに?』
バキッ!!
鍵が壊れ、扉が開いた。
『レイカお嬢様!!』
俺はレイカお嬢様の部屋の前に立っていた。
『ランド……なんで』
『みんな……レイカお嬢様のこと!!嫌いなわけないだろ!!』
俺は部屋に入り、レイカお嬢様の前で屈んだ。
『だって…………みんな僕から離れていっちゃうじゃないか!!』
『……ガイル様の最後の言葉はレイカお嬢様を頼むだった……ヴァルロ様が出ていく前に言った言葉もレイカお嬢様を頼むだった……そして、ミーナ様は自分の命より貴女のことが大切だった!!』
俺はレイカお嬢様の肩に手を乗せる。
『貴女は愛されている!!みんな自分の命よりも貴女が大切だったんだ!!それは事実!!お父様からもお母様からもお兄様からも!!他のみんなからも!!それに俺からも!!』
その時、俺は気が付いた。
昔、無意識にレイカお嬢様を遠ざけていた気持ちが無くなっていることに。
『ほ、本当に?』
レイカお嬢様はまた泣いていた。
『本当です……だから泣かないでください、貴女は今日から魔王なんですよ?』
『え?僕が魔王?』
『はい、貴女が魔王城のリーダーになるのです。今魔王軍は混乱しています。外様の誰がなるより、ガイル様の娘である貴女が魔王となることで、魔王軍は安心出来る』
『そんなの無理だよ……』
『大丈夫です、貴女なら出来る。それに俺も精一杯のサポートはするつもりです』
『城にいてくれるの?』
『はい、またここで生き甲斐を見つけてしまいましたから』
大切なもの達の大切なもの。
レイカお嬢様に対してそう思っていたが、今は違う。
レイカお嬢様は俺にとっても大切な存在。
それを守る義務が俺にはある。
俺は今まで誰も守れなかった。
しかし、今度こそ命に変えてでも守ろう。
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