第216話 ランドの過去 9
その数ヶ月後……
俺はまたガイル様の部屋に呼ばれた。
『ランド、今日は大事な話がある』
『大事な話?今度はレイカお嬢様の何係に任命するおつもりですか?』
『ガハハ!!そう怒るなよ、今日は本当に大事な話だ』
ガイル様は黒い玉を取り出した。
『なんですかそれは?』
『闇の魔力玉だ、魔王に代々引き継がれることになっている』
『はぁ……それを一体なぜ俺に?』
『ランド……お前は俺にとって一番付き合いが長く、信頼出来る部下だ。いや、部下と言うより、もう息子だと思っている』
『な、何ですか……しんみりしてらしくない……』
『なあ、ランド……お前、次期魔王にならないか?』
俺は耳を疑った。
初めはその言葉の意味を理解出来ないでいたが、徐々に理解していった。
『ヴァルロが城を抜けた今、俺の次の魔王を考えなくてはならない。今それに相応しいのはお前しかいないと俺は思ってる。それでお前にだけはこの闇の魔力玉の在処を教えておきたいんだ』
しかし、俺はその質問に即答出来る。
『いえ、俺は魔王にはなれません』
『うむ、どうしてだ?』
『俺は魔王様の部下で一生あり続けると誓った身です。後にも先にもそれは変わりません』
『そうか……ならこの魔力玉はお前に預けておく』
ガイル様は俺に魔力玉を渡した。
『この魔力玉は後に争いの種になるかも知れない、だから万一に備えてお前に渡しておきたい。お前ならどんな危険があっても大丈夫だろう』
『はあ……』
『そして、次に渡すのは次期魔王でも誰でも良い、ただやはりこの魔力玉を持っていれば危険な目に合うかも知れない。そこはお前が誰に引き継ぐか決めてくれ』
『ですが......これは魔王様自身でやればいいのでは?』
『俺はいいんだ、頼んだぞ?これからのこととレイのこと』
『はあ……』
『ランド、この時のために神は俺とお前を引き合わしたのだとすら思うよ。あの時、倒れたお前を助けて本当に良かった』
『何を言っているんですか、柄にもない』
『ガッハッハ!!そうだな!!俺としたことがしんみりしちまったぜ!!』
俺はガイル様の部屋を出た。
俺は闇の魔力玉をじっと見る。
こんな物を預かってもどうすればいいんだ……
ヴァルロ様がいるならヴァルロ様に渡しているところだ。
だが今はもう……
うーん……
しかし、なぜガイル様は急にこんな話をされたんだ?
次期魔王を選ぶのを急かしているような……
まるで自分がもうすぐいなくなってしまうかのように……
その瞬間、俺の脳裏に電流が流れる。
ミーナ様の死因。
ガイル様が最近元気がなかったこと。
そして、ミーナ様のご病気はガイル様もかかる可能性があること。
全てを考えた時にはすでにガイル様の部屋へ戻っていた。
しかし、時はすでに遅かった。
俺が部屋に戻った時にはすでにガイル様は倒れていた。
その後、病院に行ったが間もなく、息を引き取った。
死因は魔血凍病。
ガイル様もミーナ様と同じ病気だった。
随分前から体調が悪かったらしく、薬で無理して元気なふりをしていたらしい。
なのに、俺達には一言も言わなかった。
それからすぐにガイル様のお葬式が行われ、ガイル様の墓はミーナ様の物の隣に作られた。
全ての魔王城の者達が墓の前に参列していた。
『これから魔王軍はどうなってしまうんだ......』
『ガイル様の後継のヴァルロ様もいなくなってしまって......』
口々にこれからの魔王軍の不安を口にしていた。
それもそのはず、今の魔王軍はガイル様の人柄に惹かれて集まった。その支柱がいなくなってしまったのだ。
俺もその1人である。
そして、城の者達がみんな帰った後も俺は2人の墓の前に立っていた。
『ガイル様……何故俺に相談してくれなかったのですか……』
俺はガイル様の墓に手をつく。
『ガイル様……俺は貴方にたくさんのことを教わった、命の大切さ、人との繋がり、それはもう数え切れないぐらいに』
俺は膝をついて、涙を流した。
『う......うっく......ありがとうございました!俺は貴方がいなかったらどうしようもなかった!!あの時拾ってくれてありがとう!!ここまで育ててくれてありがとう!!本当に…………ありがとう……ございました......』
俺は顔を上げる。
『15年間もの間、ありがとうございました。どうか安らかに……お眠り下さい......』
俺は立ち上がり、墓を後にした。
ガイル様、ミーナ様、ヴァルロ様。
俺の大切なものは全ていなくなってしまった。
守ろうと誓ったのにどうすることも出来なかった。
俺は無力だ。守れるものはなにもない。
俺は決めた。
これからの人生はまた独りで生きよう。
それに3人がいない今、この城には未練もない。
ヴァルロ様には悪いが、俺もこの城を出ることにした。
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