第212話 ランドの過去 5
それから数ヶ月が経った。
『ヴァルロ様』
『ランドか......』
魔王城近くの花畑に作られた一つの墓石、そこにヴァルロ様の姿があった。
『やはりここでしたか、魔王様が探していましたよ』
『ああわかった、けど少しここにいさせてくれ』
『わかりました。あの......ヴァルロ様』
『まだなにか?』
『あの......あまり気を落とさないでくださいね。ミーナ様もヴァルロ様には元気でいてほしいと思ってるはずですから』
『ああ、大丈夫だ。お母様はただ死んだのではない、新しい命を残していったんだ。なら僕はその命をお母様の生まれ変わりとして、それに大切な家族として、一生守り続けると誓う。何があっても、何をしようともね』
ヴァルロ様は墓石を見つめながら言った。
その瞳はこの先にあることを全て見通しているようだった。
『それで一つ決心したことがある』
ヴァルロ様は俺を見た。
『数年後、魔王城を出ることを決めた』
『え!何故です!?』
『僕にはやらなければならないことがある。それはこのままでは掴めない、なにかを変えないといけないんだ』
『なら俺も連れていってください!』
『なに言ってるんだ、ランドはお父様の部下だろ』
『それはそうですが、ヴァルロ様を一人で出ていかすわけには......』
『ハハハ、その時ぼくは僕はもう大人だよ?心配いらないさ、ならランドは僕に魔王城の様子を教えてくれるパイプ役になってくれないか?』
ヴァルロ様は俺に近づいてきた。
『城を出ると言っても城のことが心配じゃなくなったわけじゃない、だから様子を僕に定期的に教える役になってくれないか?』
『それは別に構いませんが......』
『これで安心した、ランドには話してよかったよ』
ヴァルロ様は笑った。
しかし、その笑みには深みがなく、作り笑いのように思えた。
『じゃあお父様のところに行くか』
ヴァルロ様は俺の横を通り、魔王城ヘ向かった。
『ヴァルロ様!』
『なんだ?』
『ヴァルロ様が何を見ているのか俺にはわかりません。けど、何があろうと俺はヴァルロ様を応援しています』
『ああ、ありがとう』
ヴァルロ様は振り向かず、去っていった。
これが今から13年前の話だ。
そしてその5年後、またしても事件が起きた。
俺はガイル様の部屋へ呼び出された。
一体なんの用だろうか......
俺は部屋へ入った。
『魔王様、お呼びで?』
『おお!来たか!今日呼んだのは他でもない!』
ガイル様は立ち上がり、俺の目の前へ来た。
『お前はもう10数年も俺の部下でいてくれて、最も信頼出来る部下となった。それに家族とも思っている』
『ありがたい限りです!!』
『それでお前にはこの城で最高位の役職に任命したい』
『それってまさか......』
『ああ!そのまさかだ!!』
魔王城で一番の役職、それはつまり魔王四天王で魔王軍の第1魔将のことを指す。
やった!やったぞ!俺が最もなりたかったものだ!
『フフフ、嬉しいかランド』
『はい!すごくうれしいです!』
『そうか!よかったなレイ!出ておいで!』
『え......』
ガイル様が手招きすると、何かが壁からちょこんと顔を出した。
『やだ!僕コイツ嫌い!!』
『何言ってんだ、ランドは俺と1番付き合い長い仲間なんだぞ?』
『やだやだ!もっと若くてカッコイイ人がいい!!若しくは美人で巨乳なお姉さんが良い!!』
小さい何かは走ってきてガイル様に抱き着いた。
『何言ってるんだ、ランドは若くてカッコイイじゃないか』
『あ、あの......魔王様?』
『ああ、わりぃ、改めて紹介するがコイツは俺の娘のレイカ』
『し、知ってますが......なぜレイカお嬢様が?』
『何故って、お前が今日からレイの世話係になるからだ』
『え......』
『魔王城での最高位だ!よかったな!』
『ええ!最高位って!俺がレイカお嬢様の!?』
『最近ヴァルロも俺も忙しくてな、だから1番信頼出来るランドに頼みたいんだ』
『そういうことなら......仕方ないですが』
正直少し気が引いたが、ガイル様の頼みなら仕方なかった。
『そういうことだから......これからよろしく』
俺はレイお嬢様に手を差し出した。
『ほら、レイ、ランドがよろしくだってよ』
『うぅー......がうっ!!』
レイカお嬢様は俺の手に噛み付いた。
『痛っ!!!』
『やだよーだ!僕お前に世話なんてされないもん!!』
レイカお嬢様は部屋から出ていった。
『魔王様......』
『ま、まあ初めは照れてるだけだ。馴れれば懐いてくれるよ』
『そうですかね......』
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