第209話 ランドの過去 2
それからミーナ様はヴァルロ様を連れて、別室に移動した。
『可愛いだろ俺の嫁』
『あ、ああ......』
『それでお前の名前ランドでいいのか?もしあれならもっとカッコイイ名前考えてやるよ』
『いや、ランドでいいよ』
『そ、そか?』
名前なんてなんでも良かった。
『そろそろ俺は出ていくよ、アンタ達に迷惑かけられないしな』
俺は立ち上がろうとした。
『おい!まだ無理だって、もう少し安静にしてな』
『だが......』
『いいから寝とけ、俺の話し相手になっといてくれよ』
『話し相手なら妻がいるだろ』
『わかってないな、男同士じゃないと話せないこともあるだろ』
そう言いながら笑うガイル様。
人に必要とされたことがない俺は少しうれしかった。
『わかった、しばらく世話になることにするよ』
俺は再び横になった。
『アンタ、本当に魔王なのか?』
『一応な、ダメ魔王や臆病魔王なんて呼ばれてるが』
『なんでそんな呼ばれ方されてるんだ?』
『帝国に攻められてるのにやり返さないからさ、だが俺はこのやり方を間違ってるとは思ってないよ。だってよ、やられたからやり返して問題は解決するか?しないだろ?』
今思えばガイル様は始めからこういう考えだった。
確かに端から見れば臆病かもしれない。
けどガイル様の平和を願う気持ちは本物だった。
『ハハハ!平和な考えの魔王ですね』
『なんでいきなり敬語なんだよ』
『よく考えたらあなたの方が年上ですし、魔王様じゃないですか、敬語で当たり前です』
『なんか気持ち悪いな......』
それから俺達はしばらく話し合った。
くだらない話やミーナ様やヴァルロ様の話、初めてこんなにも笑った。
『なあランド』
『なんです?』
『お前、俺の城で働かないか?』
『え?』
『行く宛てないんだろ?俺も今若い人材が必要だったんだ、言っとくが魔王城の従業員はまあまあ給料高いぜ?』
俺は他人の世話にはならないと思っていた。
世の中独りで生きるのが当たり前と思っていた。
なのに......
『俺を......必要としてくれるのですか?』
気がつけば俺は涙を流していた。
『お、おい!男が簡単に泣くもんじゃないぞ』
『今まで人として扱われたことがなかった......みんなゴミを見るような目で俺を見た。なのに貴方は初めて人として見てくれた』
俺は涙を拭いた。
『俺は......俺はあなたの部下で一生あり続けます!この御恩は忘れません!!』
俺は誓った。
ガイル様は俺の命に変えても守る。
この時、俺に大切なものが初めて出来たんだ。
俺が魔王城で働き始めてから8年後、俺は少年から大人へと成長した。
初めは雑用のようなことばかりやらされていた俺だが、今は重要な仕事も任されるようになってきた。
それに......
『来て下さい魔王様!』
俺とガイル様は魔王城の庭にいた。
『行くぜ!おらっ!』
ガイル様は闇魔法を飛ばした。
ドンッ!!
俺はシールドを張り、それを防いだ。
『やっぱりお前強いよ!今のを防ぐなんて!』
『これも魔王様のおかげですよ』
俺は並々ならぬ修行の末、無属性ながらシールド魔法を極め、強くなった。
しかし、シールド魔法が優れていることに気がつかせてくれたのはガイル様だ。
『いやいやお前が頑張ったおかげだよ』
『そんな、俺は魔王様に感謝してもしきれませんよ!』
『俺もお前を雇ってよかったよ、これなら魔王四天王も夢じゃないな』
『本当ですか!?』
『ああ』
俺は魔王四天王になれそうなことよりガイル様に褒められたことが嬉しかった。
『ところで今日はミーナ様とヴァルロ様はどうしたのです?』
『ああ、なんかミーナがピアノの演奏会があるからヴァルロに無理矢理練習に付き合わせてるんだと』
ガイル様はタバコを咥えながら言った。
『へー、ミーナ様がピアノを』
『あいつ一応プロだからな!そっちの世界じゃかなり有名らしいが、まず似合わないよな!凶暴なミーナがピアノやっておしとやかなイメージ付けようったって無駄な努力だな!』
『魔王様......後ろ』
『え......』
『悪かったね!おしとやかなイメージ付かなくて!』
ガシッ!!
ミーナ様はガイル様をグーで殴った。
『イタッ!見たか今の?グーパンチだぜ?普通ここは平手とかだろ!』
『うるさい!それに......』
ミーナ様はガイル様のくわえているタバコを取った。
『そろそろタバコ止めなさいって言ってるよね?』
グシャ......
ミーナ様はタバコを握り潰した。
『わ、わりぃ』
『貴方ちょっと来て!私のピアノを嫌と言うほど聞かしてあげるから!!』
『ちょ、ちょっと!助けてランドー!』
ガイル様はミーナ様に連れ去られていった。
『相変わらずですねお2人は......』
『仲が良い証拠だ、僕は嬉しいよ』
後ろにはヴァルロ様が立っていた。
『ヴァルロ様』
『ランド、少し修行の相手してくれないか?』
『もちろんいいですよ』
ヴァルロ様の実力は8歳にも関わらずかなり優れていた。
将来は歴代最強の魔王になるとも言われていた。
赤ん坊の時から見てきた俺はヴァルロ様をまるで自分の息子のように思っていた。
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