第207話 罠
「おーい!!」
その時、草原の少し離れた所から子どもの声が聞こえてきた。
「え?誰?」
レイカがその方向を向くと、こちらに走ってくる幼女の姿があった。
幼女は何か箱を持ってレイカ達に近付いてくる。
「何だ?ここは魔王城の敷地内、子どもでも勝手に入って来てはダメだぞ」
ランドは幼女に向かって言う。
「ごめんなさい、でもさっき会った男の人にね、これを2人に渡してきてくれって」
「これ?」
「うん、このプレゼント!」
幼女は持っている箱を指差す。
「僕達にプレゼント?一体誰が......」
その瞬間、レイカとランドは目を合わせる。
「君!!離れて!!」
レイカは幼女からプレゼントを奪い取り、幼女を突き飛ばす。
「きゃっ!」
幼女は少し離れた位置で尻もちを付く。
シュー......
その瞬間、レイカが奪い取ったプレゼントから煙が漏れ出す。
「魔王様!!早く離して下さい!!」
「わかってる!!」
バフッ!!
レイカはそれを投げ飛ばそうとするが、その前に破裂して中から煙のようなものが立ち込める。
「くっ!!」
近くにいたレイカとランドはそれを吸ってしまう。
「ぐっ!!これは......毒ガスか」
それを吸ったレイカとランドはまともに立てないほど身体が痺れる。
「く......身体が......」
レイカは尻もちを付き、狼狽える幼女を見た。
「僕達はいいから逃げて!!」
「で、でも......」
「いいから逃げて!!」
「は、はい!」
幼女はそれを聞いて、後ろを向き走り出した。
「く......ゲホッ!!何て、強力な毒ガスだ.....」
レイカは喉を押さえ、膝を付く。
「魔王様......大丈夫ですか......」
ランドも喉を押さえた。
ザッ!!
その時、煙の外に何者かが現れる。
「フッ!まさか魔王と魔王軍の第1魔将が揃ってこんな罠に引っかかるとは」
「だ、誰だ!?」
煙は次第に晴れていくと、現れた人物の姿が見えてくる。
「お、お前......」
「申し遅れました。私は忍者部隊の頭領、清浄と申します」
それはヴェネット遺跡でポニスを倒し、サンベルス城を襲撃し、魔力玉を奪った忍者部隊の頭領、清浄だった。
「お前が......忍者部隊の頭領......」
「き、貴様......化学兵器も一般人を巻き込む戦闘行為も平和条約で禁止されているはずだ......」
「ハッハッハ、もう平和条約も何もないでしょう。始祖龍の復活で世界は混沌に包まれる。その後あるべき姿に世界は戻るのですよ」
清浄はパチンと指を鳴らした。
すると、10人ほどの忍者部隊の忍者が集まってきた。
「ク、クソ......このままでは」
「大丈夫ですランドさん、私の狙いはその闇の魔力玉と魔王レイカ・ユミナル・ダークの暗殺、貴方に危害は加えません」
「う、うるさい......お前みたいな卑怯者に僕が負けるか!!」
レイカは手に闇魔力を溜めようとする。
しかし、視界と意識がボヤけ、集中出来ない。
「ハアハア......ダ、ダメだ......魔力を溜められない」
レイカは地面に両手を付く。
「ま、魔王様!!」
「ラ、ランド......僕のことは良いから魔力玉を持って逃げて......」
レイカは虚ろな目をしながら言う。
「魔王様......」
「ハッハッハ、こうなってしまっては魔王もただの小娘ですね」
「う、うるさい!!お前なんかにやられてたまるか!!」
レイカは震える脚を何とか立たせ、清浄に向かって走る。
ドサッ!!
しかし、脚がおぼつかず、転んでしまう。
「ハアハア......あ、脚が」
「強力な毒ガスです。貴女の身体の小ささでは毒の回りも早いでしょう」
ドガッ!!
その瞬間、倒れるレイカを蹴る清浄。
「グッ!!」
レイカは少し吹っ飛んで倒れる。
「ま......魔王様!!」
「ハア……ハア......ランド......」
そして、レイカは静かに意識を失う。
「魔王様......」
「さて、喜んで下さい魔王。意識を失ったので痛い思いをせずに死ねますよ」
清浄は懐から短剣を取り出した。
そして、倒れて意識もないレイカに向かって歩き出す。
それを片膝を付きながら見つめるランド。
ランドも身体が痺れ、意識が遠退いて行く。
(俺は......俺はまた大切な人を失うのか......また何も守れないのか......)
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