第206話 闇の魔力玉の在り処
「ない......ない!ない!」
レイカは倉庫で闇の魔力玉を探し回っていた。
「魔王様、何か見つかりましたか?」
ゴラドがやってきて、レイカに聞く。
「いや......なーんにも見つからない」
「やはりこれだけ総動員で探しても見つからないとなると、魔王城には無いのかも知れませんね」
「うん......けど必要なんだよ。お父様がどこかに隠したと思うんだけど心当たりない?」
「大切なものですから見つかりにくいところに隠したのでしょうが......皆目検討つきませんね」
「うーん、今城にいる中で1番昔からいたゴラドも知らない、キザもサイちゃんもお兄様ですら知らない。となると......」
レイカの脳裏にはある人物が思い浮かぶ。
「やはり......あの人しか」
「うん......」
レイカはため息をついた。
「はあ......ランドならなにか知ってるのかな......」
レイカは倉庫の扉を前まで歩く。
「とりあえず僕お父様とお母様のところへ行ってくる」
レイカはそう言うと、外ヘ出ていった。
城から少し離れたところにある草原に来たレイカ。
そこには2つの墓が立てられている。
「久しぶり、お父様、お母様」
レイカは手を合わせて目を瞑る。
そして、しばらく合掌した後、再び目を開けた。
「お父様、今魔力玉の争奪戦になっていて、残り魔王軍の闇の魔力玉だけが見つかってないっていう状況になってる。一刻も早く闇の魔力玉を見つけたいんだけど、一体どこに隠したの?」
レイカはしばらく喋り続けた。
「あれは魔王が代々引き継ぐ物だと聞いている。魔王になった僕が持っていないと言うことはまだ僕は魔王として認められてないってことなのかな......」
風の音だけが聞こえてくる草原。
「弱気になっちゃダメだね。聞いてくれてありがと、また来るからね」
レイカは後ろを向いて歩き出した。
(はあ......また魔王城の西倉庫でも探してみるか......)
ザッ!!
その時、レイカの背後から芝生を踏む音が聞こえてきた。
その音を聞いたレイカは立ち止まる。
「......」
芝生に生えた一本の木、その後ろに何者かが立っていた。
「......」
「......」
レイカと木の裏に立っている人物はお互い立ち止まり、何も話さない。
「......何で何も言わないんだよ」
レイカは痺れを切らし、声を出す。
「......ここで待っていれば、来ると思っていました」
「......来ちゃ悪いの?」
「服のボタン、1つずれてますよ?」
「え?」
レイカは慌てて自分の服のボタンをちゃんと着けた。
「普段からキッチリとした身嗜みを意識していないからそうなるのです」
「そんな僕の身体ばっかり見て!やっぱり変態ロリコンだね!!」
「魔王たる者、身嗜みはちゃんとしなければいけませんよ」
「余計なお世話だよ!やっぱり僕はランドのこと嫌い!!」
「......」
その木の裏の人物は元魔王軍第1魔将のランドだった。
ランドは歩いて木の前に立つ。
「待ち伏せしてたの?」
「はい、魔王様と話があって」
「馬鹿だね、僕のこと気になってるなら素直に好きって言えばいいのに」
「ご冗談を、俺から見れば魔王様はまだ子どもです」
「子ども子どもって!いつまでも子ども扱いしないで!!」
「そうやってムキになる様ではとても大人には見えません」
「だから子ども扱いすんな!!」
レイカは闇魔法を飛ばした。
ガキッ!!
しかし、ランドのシールドに防がれる。
レイカはシールドを展開するランドを睨んだ。
「魔法の質がガイル様に似てきましたね」
「うるさい!どっか行っちゃえ!!」
レイカはソッポを向いた。
「フッ、やはりあなたはあの2人の娘ですね。顔立ちや声はミーナ様に似てきました」
「......」
「仲間思いのところやいたずら好きなところもそっくりです」
「そ、そんなこと言われてもうれしくないよーだ!!」
そう言いながら、明らかに嬉しそうな表情をするレイカ。
「魔王様、ロイの奴はちゃんと修行して強くなってますか?」
「ロイロイ?うん!光魔法もかなり使いこなせるようになってきたし、剣術も上手になってきたよ!!」
「そうですか......」
「なに?ロイロイが心配なの?」
「そ、そういう訳ではありませんが、ただ......あいつには迷惑かけたからな」
「わかった、ロイロイにはランドが心配してたって伝えとくよ」
「い、いらないことは言わないでください」
動揺するランドを見て少し笑うレイカ。
そして、一息付き、真剣な表情になる。
「そう言えばランド!聞きたいことがある!!」
「俺も魔王様に言いたいことがあって今日は来ました」
2人は真剣な表情で見つめ合う。
「恐らくですが、魔王様が聞きたがっている話と俺が話したい話は同じ内容です」
「うん、僕もそんな気がしてる」
2人はお互いの目を見る。
「闇の魔力玉についてでしょ?何か知ってるの?」
「......知らないと言えば嘘になりますね」
「前は知らないって言ってたじゃん!!」
「すいません」
「もう良いよ!!情報を教えて!必要なんだ!」
「......」
レイカが強く聞くのに対し、下を向き言い淀んでいるランド。
「ランド!お願い!!」
「正直な気持ちでは教えたくありません。あれは俺の恩人であるガイル様が大切にしていた玉です」
「僕が信用出来ないの!!」
レイカは叫んだ。
「確かにランドがお父様を尊敬してるのはわかる!それは僕も嬉しい、けど僕のことももっと信じてよ!これでも一生懸命魔王として頑張ってるんだよ!!」
「......」
「それともランドはやっぱり僕を魔王って認めてないの!?お兄様を魔王にしたいの!?」
「......誰が信用してないと言いました?」
ランドは自分の懐に手を入れる。
そして、懐から黒く透き通った玉を取り出した。
「それって......まさか!?」
「俺がガイル様から渡された闇の魔力玉、次魔王になった者に渡せと言われ渡されました」
片手で闇の魔力玉を持ち、浮かない表情をするランド。
「じゃあ僕に」
「これを魔王様に渡すかどうかは非常に悩み、未だに渡せずにいました。なぜだかわかりますか?」
「......だからランドは僕が魔王に相応しくないと思ってるんでしょ?お兄様に魔王になってほしいと思っていたから」
「違います」
ランドはレイカの目を見つめたまま言う。
「何でなの?」
「それは......」
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