第204話 最後の勝負
そして今に戻る。
「思い出した......何で私忘れてたんだろう......」
サファイアはカエデの顔を見る。
「カエちゃん......久しぶりね」
「サフィちゃん......貴女......」
カエデは少し目に涙を溜める。
「ねえサフィちゃん!私サフィちゃんと会いたかった!」
「私もよカエちゃん」
「あの後、どこかで魔王軍による事故があったって聞いたから私心配で……それにサフィちゃん達が巻き込まれたって」
「そうよ、私達はその事故で死んだの」
サファイアはまた冷たい目をした。
「え……」
「私の父ステード・ゲルガーは帝国に絶対的力をもたらす研究をしていた。それを知った魔王軍が私達は乗っていた飛行船を撃ち落としたの」
「魔王軍が......でもレイカは」
「っていう情報を帝国が流したのよ」
「え......」
「本当はただの飛行船の燃料に引火した事故だった。魔王軍は関係ないのに魔王軍のせいにしようとした情報戦術よ、良くある話じゃない」
「そ、そんな……」
「それで生き残った父さん、ステードは魔王軍を恨み世界を恨んだ。そして自分が完成させた兵器であるG3を使い世界に復讐しようとしてるの」
「……ならG3はやっぱり」
「そう、ゲルガー家の3兄弟、略してG3よ」
「でもサフィちゃん達は事故で……」
「G3は生物の遺伝子と、強力な魔力を組み込むことで完成するの、つまり父さんは事故で死んだ私達の細胞を取り、それを使った。つまり今の私はクローン、存在してはいけない存在なの。兄さんはこのことに気付いてたのかも知れない」
「クローン……サフィちゃんが……」
「G3は父の血と涙の結晶、元々濃度の高い魔王とジョーカーの魔力を何倍にも膨れ上がらせて、クローンである私達の身体に埋め込んである。普通だと身体が耐えられないけど、父の技術でそれを可能とした」
「技術?」
「ええ、詳しいことは私にも分からないわ......簡単に言うと普段は強大すぎる魔力をコアに閉じ込め、使用する時だけコアから取り出す技術みたい」
「だからG3はあんな膨大な魔力を持っているのね……ステードは今どこに?」
「ごめん、わからない......私はずっと魔力玉を奪取するように飛び回ってたから……」
サファイアは自分の掌を見た。
そして、目を逸らし、真っ直ぐカエデを見ると、ボロボロの身体を支え、辛うじて立ち上がった。
「......カエちゃん!私と最後の勝負をして!」
「え……」
「最後に私は貴女と決着をつけたい!ライバルとして親友として!!」
「嫌よ!!私はクローンだろうがサフィちゃんが生きていてくれて嬉しかった!!」
「ダメなの!死んだ人間は二度と蘇らない!それがルールなの!!」
「でも……」
「逃げるの?」
「……」
カエデは5年前の決闘を思い出した。
「カエちゃん、私辛い......あの世にも現世にも居場所がない。死んだ人間は死んだ人間としてあの世で居場所を作れる、けど私は無意味に現世に残ってしまった」
「……サフィちゃん」
「私に負けるのが怖いのね!!」
カエデは下を向き、目をつぶった。
そして震える手に力を入れ、刀を抜く。
「……私が貴女に負ける?寝言は寝て言いなさい!!」
「フフ、それでこそカエちゃんよ!ねえ!」
サファイアも剣を構える。
「カエちゃん、勝負よ!!」
サファイアはカエデに向かって走った。
「サフィちゃん!」
カエデもサファイアに向かって走る。
「はあっ!!」
サファイアは剣を振る。
しかし、カエデは横に避けた。
「ごめんねサフィちゃん!!」
ザシュッ!!
カエデはサファイアを刀で貫いた。
すると、サファイアの腹の辺りからは魔力が漏れ出してくる。
「フフ、やっぱり私はカエちゃんには敵わなかったわね……」
サファイアから光の粒が放たれ始めた。
それと同時にサファイアは俯せに倒れる。
「サフィちゃん!」
カエデはサファイアを抱き抱える。
「私、サフィちゃんがいなかったらここまで強くなれなかった!良い親友でいてくれて、良いライバルでいてくれてありがとう!!」
「お互い様よ、ねえ、カエちゃん」
2人の目からは涙が流れていた。
「カエちゃん、いろいろありがとう……またね」
そう言うと、サファイアはカエデに抱き抱えられながら光の粒となり、消えていく。
「サフィちゃん……」
「あっ!!そう言えば!!」
消えゆくサファイアは大きな声を上げる。
「どうしたの?」
「ロイくん!!カエちゃんはロイくんが好きなの?ねえ?」
「え?ええっ!?こんな最後の最後にそれ!?」
カエデは少し赤面する。
「いい男の子じゃん、好きなんでしょカエちゃん」
「もう......サフィちゃんはいつも無茶苦茶なんだから」
「恋も剣も、誰にも負けんじゃないわよカエちゃん、ねえ」
そう言うと、サファイアは完全に光の粒となり消えていった。
カエデは1人上を向きながらそれを見送るのだった。
「ハア......ハア......」
その頃、忍者部隊の幹部虚空は1人山を下りていた。
「クソ......何がG3だ、簡単にやられやがって......俺だけでも逃げ切るしかない」
ドッ!!
その瞬間、虚空は足を地面に取られ、転んだ。
「うわっ!!」
ズザザーッ!!
山を滑り落ちる虚空。
「クソ......忍者の俺が転ぶなんて......」
虚空が顔を上げると、そこには小さな祠があった。
「こ、これは......まさか」
その小さな祠の扉を開ける虚空。
その中には黄色みを帯びた玉が中央の台座に置かれている。
「これは......雷の魔力玉......」
それを手に取る虚空。
「クックック、俺にもツキが回ってきたようだな」
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