第203話 ライバルで親友
次の日。
私は学校に着いた。
学校ではなにやら朝からざわついていた。
『あっ!サファイア!』
『これなんの騒ぎ?ねえ?』
『成績発表だよ!すごいねサファイアは!』
そういえば今日は成績上位者発表の日だった。
そうだ、私には最大の不満があった。
『見てみなよサファイア!』
私は友達に押され、成績発表の貼紙を見た。
『すごいよね!学年2位だよ!』
そう……私は2位。
テストもスポーツも剣の大会も全部2位。
それはなぜか、学年に超人がいたからだ。
『またカエデさんが一位か!すごいね!』
『カエデさんすごいよね!!美人で賢くて強くて』
『なによ朝っぱらからこの騒ぎ?』
私が後ろを向くと、銀色の髪に制服を着た女が立っていた。
『あっ!カエデちゃん!今回も成績一位だよ!』
『そんな順位なんか興味ないわよ、ほら朝礼始まるわよ』
そう言うと、奴は教室に入っていく。
奴はカエデ・エーユエジル。
有名な剣技の家系に生まれ、その才能を遺憾無く発揮してる女。
私は奴を負かさないことには一番になれない。
私は負けず嫌いだから、誰にも負けたくなかった。
奴に勝てなくてずっと2位なのが不満で仕方なかった。
その夕方。
私は町の外の一本杉が立つ原っぱに立っていた。
私はここで待ち合わせをしていた。
ザッ!!
『用ってなに?』
そう、カエデ・エーユエジルと。
『遅かったわねエーユエジルさん』
『あなた確か三組のゲルガーさんね』
『覚えていてもらえて光栄ね、天才のエーユエジルさんに』
『それでなんの用よ』
『勝負しなさい』
サファイアは剣を抜いた。
『どういうつもり?』
『私だって剣技には自信があるの、剣技ならあなたにも負けない』
『いやよ、なんでそんなことしないといけないのかがわからない』
カエデは振り返り、町に向かって歩く。
『逃げるの?』
『……』
『私に負けるのが怖いのね』
『あーら、私があなたに負ける?寝言は寝ていいなさいよ』
エーユエジルさんも刀を抜く。
『フフ、やっとやる気になったわね』
『やるからには手加減しないから』
『当たり前じゃない』
『それじゃあ行くわよ!勝負!』
私は剣の腕には自信があった。
けどこの時のエーユエジルさんの実力は別格だった。
私はエーユエジルさんに完敗した。
『うぅ……私が負けた……』
『ふう、あなたなかなか強いわね、私をここまで追い詰めたのは』
『う、うう……うわーーーん!!』
私は悔しくてこどもみたいに泣いた。
『ゲ、ゲルガーさん?』
『うっ、ヒクッ、私……一番になりたくて……がんばって勉強や剣の稽古してるのに……うわーん!』
『……』
エーユエジルさんは私にハンカチを渡した。
『ありがとう……私みっともないね……』
『そんなことないよ、私あなたみたいに負けず嫌いで勝ち気な娘嫌いじゃないわよ?』
『私はあなたのこと嫌い……』
『ハ、ハハハ、とりあえずあの一本杉の下でお話でもしない?』
『うん……』
私達は一本杉の下に移動し、腰掛けた。
『でもゲルガーさんってなんだか私に似てるわね』
『そう?』
『私も負けん気だけは人一倍あるから』
『……私ってどこかでエーユエジルさんのこと尊敬してたのかもしれない』
『尊敬?』
『エーユエジルさんを越えたい、エーユエジルさんのようになりたいって思ってたから』
『私はゲルガーさんの方がうらやましいな、友達多いし、人気者だし、私はあんまりそういうのは得意じゃないから』
『エーユエジルさんは完璧だからみんな近寄りがたいだけよ』
『そんなことないわよ......』
しばらく私達は沈黙した。
『ねえゲルガーさん、私ってエーユエジルって苗字あんまり好きじゃないの、だから名前で呼んでくれない?』
『な、名前?なら私も名前で呼んでほしいかな……』
『うん!じゃあサファイアだから、サフィちゃんでいい?』
『サ、サフィちゃん?』
『可愛いでしょ?』
『なら私はカエちゃんって呼ぶね!ねえ!』
『カ、カエちゃん?』
『可愛いでしょ?』
私達は顔を見合わせる。
すると、自然と笑みがこぼれた。
『フフフッ!』
『フフッ、なにがおもしろいのよ』
『いや、カエちゃんって案外可愛い子だったんだなって』
『何よ、可愛くないと思ってたって訳?』
こうして私達は友達になった。
それからというもの、私達はいっしょに稽古したり、勉強したり、親友と呼べる関係になったかも知れない。
あの日までは……
私達はまた一本杉の場所に集まっていた。
『サフィちゃん、遅かったわね』
『う、うん……』
『ん?サフィちゃんどうかした?』
私が明らか元気がないことに気付くカエちゃん。
『実は……私遠くに引っ越すことになったの』
『え……』
『父さんの研究の成果が認められて、もっと大きな都会の研究所に行くことになったから、私達も引っ越さないといけないの』
父ステードの研究は最終段階に入っていた。
ここからの研究は田舎の町では難しく、皇都ニューペルシアルで続きをするという話だった。
『そっか……』
私達は下を向いた。
『……それは仕方ないね、じゃあいっしょに剣の稽古するのも今日が最後だね』
『カエちゃん……私……カエちゃんのこと忘れないから』
私の目からは涙が流れてきた。
『うん、私も忘れないわよ。ずっと友達でいようね』
カエちゃんも泣いていた。
あんなに憎たらしかった人をこんなに恋しくなるなんて思いもしなかった。
『カエちゃん、これ』
私はカエちゃんにカタスモンドのペンダントを渡した。
『これは?』
『私の宝物のペンダントよ、これカエちゃんにあげるわ』
『いいの?こんな高価そうな物……』
『いいの、私達が親友の証よ!それを私だと思って大切にしてね!ねえ!』
『うん、ありがとうサフィちゃん』
私達は手を繋いだ。
『次会った時は私が勝つからね!ねえ!』
『フフ、負けないんだから!』
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