第196話 鬼の修行
「待ってよお父さん、話ぐらい聞いてあげても」
「お前は黙っとれ!!」
アヤメが割って入るが、ヤナギは一蹴した。
「いいから帰るんだな、お前ではワシの修行には付いて来られないだろう」
「待っておじいちゃん!!」
カエデは大きな声でヤナギを制止する。
「私強くなりたいの!!それでみんなを助けたい!!そのためならどんな修行でも耐えて見せるわ!!だからお願いします!!」
カエデは大きく頭を下げて頼む。
それを聞き、立ち止まり、振り返るヤナギ。
「仕方ない、話ぐらいは聞いてやろう。修行を受けさせるかどうかは別の話だがな」
ヤナギはカエデを睨みながら言う。
「ありがとう!おじいちゃん!!」
「道場の奥へ来なさい。アヤメとモミジは少しそこで待っておれ」
そう言って道場の奥の廊下へと歩いていくヤナギ。
それを見て、カエデも付いて行く。
ギッ!ギッ!と木材で出来た廊下が音を鳴らす中、ヤナギに付いて行くカエデ。
そして、休憩室なのか机と座布団がある部屋に入るヤナギとカエデ。
「まあそこに座りなさい」
ヤナギは座布団を指差す。
「あ、ありがとうございます」
カエデは気を使いながらも座布団に正座した。
「熱いお茶と冷たいお茶どちらが良い?」
そう聞いてくるヤナギ。
「あ、え、えーっと......お気遣いしなくても大丈夫です」
「そう言わんで良い、どちらが良い?」
「じゃ、じゃあ......冷たいお茶で」
「うむ」
そう言うと、ヤナギはコップにお茶を入れ、カエデに差し出す。
「あ、ありがとうございますおじいちゃん」
「うむ、孫娘なんだ、敬語じゃなくて良いぞ」
そう言いながらカエデの向かいの座布団に座るヤナギ。
その表情は、先ほどの厳格な表情と打って変わり、緩んだ表情をしていた。
「よう来たのカエデ、随分大きくなったじゃないか」
「は、はい......」
「すまんな、久しぶりに孫に会えたから気が高ぶってしまってな」
そう言って手で後頭部を擦るヤナギ。
「お、おじいちゃんさっきまでと雰囲気が違うわよ」
「いやー、アヤメや弟子の手前厳格な態度を取らないといけなくてな。可愛い孫がせっかく来てくれたのに厳しく当たってすまなかったね」
カエデを見ながら緩んだ表情で言うヤナギ。
「おじいちゃん......」
本当は優しいおじいちゃんなんだと安心したカエデ。
「カエデ、今でいくつになる?」
「17歳だよ」
「そうか......カエデはツバキの若い頃に良く似ているな、だがシロガネの面影もある」
ニコニコしながらカエデを見るヤナギ。
「話を戻すが、鬼の力をコントロールしたいんだってな。鬼の力は危険な力だ、命がけの修行になる」
そうカエデに向かって言うヤナギ。
「命がけ?」
「ああ、ワシらキサラギ一族の血には少しだけだが鬼の血が流れておる。その血の中にある鬼の魔力を一時的に活性化させることでその間だけ鬼のごとく力を発揮することが出来る。だが、その調整を誤ると身体に負担をかけすぎてしまい寿命が縮まる、酷いとそのまま死んでしまうこともある」
ヤナギは真剣な顔でカエデに話す。
カエデも固唾を飲んでその話を聞く。
「それでもカエデはやるか?その覚悟はあるか?」
「......」
カエデはヤナギを鋭い眼差しで見る。
「やる!!この私でもみんなを守れる力を手に入れられるなら何だってする!!」
カエデはそう言い切った。
「......修行も過酷な物だ、修行で死んでしまうかも知れない、その覚悟もあるのだな」
「二言は無いわおじいちゃん」
それを聞いて、ヤナギは大きく頷いた。
「わかった!!覚悟があるなら良いだろう!!」
そう言ってヤナギは立ち上がる。
「ありがとうおじいちゃん!!」
カエデもそれを見て、立ち上がった。
「早速始めるか、付いて来なさい」
そう言って歩き出すヤナギに付いていくカエデ。
(みんな、待っててね!!私強くなるから!!)
「ここは......」
ヤナギに連れられてやって来た場所。
そこは大きな古い神社だった。
「さあ、そこに入りなさい」
ヤナギは神社の扉を開けて、カエデを誘導する。
「う、うん......」
カエデは神社の中に足を踏み入れた。
薄暗い中、古びた木の香りが漂い、静寂が広がっていた。
ヤナギは中に入らず、扉を閉め、神社の外からカエデに向き直った。
「ここで修行を始める。まずはそこにあるお面を付けなさい」
そう言って、ヤナギは神社の中に掛けられている古びた鬼のお面を指差した。
「これは?」
「そのお面は、身体の中に眠る鬼の魔力を活性化させる効果がある。だが、その代償として全身に激しい痛みと恐怖が襲いかかる。これに耐えられなければ、鬼の力はコントロール出来ない」
「痛みと恐怖......」
カエデは一瞬ためらったが、決意を新たにお面を手に取った。
「わかったわ、おじいちゃん」
「カエデ、死んでしまうかも知れないほどの痛みと恐怖だ、止めるなら今だぞ」
「いや、止めないわ!!絶対に耐えて、みんなの所に戻る!!」
「そうか......カエデ、死ぬなよ」
「うん、ありがとうおじいちゃん」
カエデはお面をじっと見て、意を決したように顔にお面を付けた。
「カハッ!!」
その瞬間、カエデの身体に電流が走るような痛みが広がった。
全身が焼けるような感覚に襲われ、息が詰まりそうになる。
恐怖と痛みが一気に押し寄せ、意識が遠のきそうになる。
「耐えるんだ、カエデ!!」
ヤナギの声が遠くから聞こえる。
カエデは膝を付く。
「ああああああああ!!痛い!!」
カエデは痛みで大きな声を上げる。
「カエデ......ワシのしてあげられることはこれだけだ、強い意志を持って押し切るんだ」
そう言ってヤナギは神社を後にした。
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