第192話 才能
バシャーン!!!
「ひいいいいい!!」
カエデとモミジはイカダに乗り、大海原で揺られていた。
海は大荒れで、今にもイカダは転覆しそうだ。
「後もう少しですよカエデ様」
「もう少しって!まだ何も見えないんだけどモミジ!!」
カエデはモミジと共にイカダで海を渡っていた。
なぜこうなったのか、こうなった理由は3日前に遡る......
3日前、カエデはモミジと共に自らの故郷であるオルトルバに戻っていた。
その目的は、父親であるシロガネに何か修行方法はないか聞きに来たのと、雷の魔力玉について聞くためである。
「ここが私の家よ」
カエデとモミジはオルトルバのカエデの実家前まで辿り着いた。
「私は外で待っていますので、カエデ様はお父様と話して来てください」
「え?一緒に入らないの?」
「はい、私は待ってます」
「そう......わかったわ」
頑なに入ろうとしないモミジを尻目に実家の中に入るカエデ。
そして、リビングまで歩く。
「お、お父さん!」
カエデは自宅のリビングに入るやいなや叫んだ。
リビングに座っていたシロガネは驚いてカエデの方を向く。
「なんだお前か」
「な、なんだとは何よ!!」
「ツバキかと思った」
「そういえばお母さんは?」
カエデはリビングを見渡すが母であるツバキの姿がない。
「ツバキは買い物に行ったぞ」
「そう......」
カエデはシロガネの方を向く。
「教えてほしいことがあるの!」
「まあ座りなさい」
そう言われると、カエデはシロガネの向かいの座布団に正座した。
「今世界で起こっていることは知ってるわよね?」
「ああ、サーカスやってたら噂は嫌でも入ってくるな」
「魔力玉、あれって一体どういう物なの?私達の先祖が絡んでいるって聞いたけど」
カエデがそう聞くと、シロガネは腰を上げて話し出した。
「そうだな、あれは俺の先祖、つまり初代勇者だな。初代勇者が始祖龍退治の副産物として生み出した魔力玉だ」
「副産物?」
「そうだ、始祖龍を倒して封印したときに始祖龍の魔力を賢者が8つの玉に封印した、それが魔力玉だ」
「つまりは始祖龍の魔力の結晶というわけね」
「そういう事だな、魔力玉を全て集めれば始祖龍は復活する」
カエデはモミジからG3や忍者部隊が魔力玉を集める理由は始祖龍の復活にあると話は聞いていた。
情報を集めてヴァルロに報告したのも自分だと主張していたモミジ。
「お父さん!!始祖龍の復活は絶対に食い止めないといけない!!私強くなりたいの」
「......」
「お願い!!強くなる方法を教えて!!」
「無理だな」
シロガネが冷たく言い放つ。
「な、なにが?」
「俺もお前も凡人だ、世の中には才能がある奴はいる。俺達は村の道場で一番に慣れても世界で一番にはなれない」
「そ、そんな!!」
「俺もお前もこの辺が限界だよ、魔王やジョーカーになるような連中に俺達凡人がいくら努力しようが敵わないよ」
シロガネはふう......と背もたれにもたれかかりながら言う。
「そ、そんなこと......私だって努力すれば」
「だがお前はもうすでに誰よりも努力しているはずだ、それでも敵わないってことはもう無理なんだよ」
それを聞いてカエデは握り拳を握る。
「じゃあどうしろって言うのよ!お父さんだって必死に努力して強くなったんじゃ......」
カエデは思い出す。
父シロガネは若い頃自分以上に努力していた。
だがやっぱり世界には通用しなく、それで兵士を引退した。
父は自分の失敗を娘にさせまいと止めてくれていると悟った。
「じゃあ......私はここが限界ってこと?勇者の血を引いているのに」
「ああ、逆に勇者の血だからこそここが限界だ。勇者は紛れもなくただの人間だ、古来から凡人達の気持ちがわかったからこそ正義として勇ましく生きられたんだ」
シロガネはカエデの方を向きながら言う。
それを聞いてカエデは涙ぐむ。
「薄々気がついてた......確かに自分は学校や稽古場ではトップだったけど旅を始めるとやっぱりついていけなくなって......物語の世界の勇者のように強くなれないって」
「ああ、俺も一緒だ。だからこそ凡人としてサーカス団を作り人々を幸せにしていく道を選んだのさ」
シロガネは立ち上がり、カエデの肩に両手を乗せた。
「お前は十分頑張ったよ、後は才能ある奴らに任せればいい」
「......」
カエデは涙を拭き、シロガネを見る。
「それは出来ない......みんなが戦うのに自分だけ逃げるなんて」
「だからな、お前がいてももう足手まといになるだけだぞ」
「そうはさせない!盾にでもなってみんなの役に立ちたい!ロイやレイカと同じ場所に立っていたいの!」
カエデはシロガネの手を振りほどいた。
「......そんなに仲間が大切か、もう足手まといになるし、死ぬかもしれないんだぞ」
シロガネは振りほどかれた手を見ながら言う。
「当たり前よ!!」
カエデはシロガネを睨み付ける。
その目を見て、シロガネは冷や汗をかき一歩下がる。
「わ、わかったわかった!今の目でお前に才能があるのはよくわかった」
シロガネはまたソファーに座る。
「へ?才能?それはさっき限界だって」
カエデはキョトンとしながら言う。
「違う違う、限界だって言ったのは俺の血、勇者の血の方でお前は俺と違ってツバキの血が入ってるんだからもっと才能があるかも知れないってことだ」
「え?お母さんの?どういうこと?」
カエデの頭の上にはハテナがいっぱい舞っていた。
「お前が今まで努力してきた勇者の力とツバキの鬼の力が合わさればもしかしたら最強になれるかも知れないってことだ」
シロガネは前屈みになりながら言う。
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