第189話 助っ人
「ハア......物事は上手くいかないものですね」
ため息を付く清浄。
それを鋭い目付きで睨みつけるカエデ。
「虚空さん、この娘は私がやりましょう。虚空さんはその間に中に入り魔力玉を奪取してください」
「承知致しました」
そう言うと、カエデの横を通り城内へ入ろうとする虚空。
「させないわよ!!」
「おっと、貴女の相手は私です」
それを止めようとするが、間に清浄が入ってきて止めることが出来ないカエデ。
その間に虚空は城内へ入っていった。
「くっ!!しまった......」
「虚空さんだけでは心配なので私も直ぐに向かいます。貴女では私の時間稼ぎも出来ませんよ」
「うるさい!!敵にそんなこと言われたくないのよ!!」
そう言って懐から鉄釘を取り出し、投げ付けるカエデ。
バシッ!!
しかし、清浄は鉄釘を片手で掴んだ。
「なるほど、これを貴女の雷魔法で自由自在に操り隙を作る戦法ですね」
「な......」
「甘いですね、投擲とはこうするものですよ」
清浄はその鉄釘をカエデに投げ返す。
カキンッ!!
カエデはそれを刀で防いだ。
「つっ!!」
しかし、カエデの脚に激痛が走った。
カエデの脚には切り傷が出来ている。
「な、何で......」
「鉄釘はそちらの気を反らすためのフェイクです。鉄釘と同時に貴女の脚に向けて見えないようにクナイを投げました。気付かなかったでしょう?」
カエデは背後を見ると、確かにクナイが落ちていた。
「い、いつの間に......」
「忍者部隊では同時に物を投げるなど容易いこと」
その瞬間、清浄はカエデの背後に立っていた。
「え......」
「常に勝つために次の行動を考える。それが忍者部隊の戦い方ですよ」
短刀を振り下ろす清浄。
しかし、カエデは間一髪転がって避けた。
「ほう、思ったよりは動けるようだ」
「う、うるさい!!あんまり余裕こいてると足元掬われるわよ!!」
「いやいや、足元を掬われるのは貴女です」
「え!?つっ!!」
カエデの足には激痛が走った。
下を見ると、カエデの足には何かが刺さっている。
「まきびしです。貴女がそちらに避けることは想定の範囲内でしたから」
「な、何でそんなところまで読めるの......」
「さて、これで貴女はもう左脚の踏ん張りが効かないでしょう」
先ほどのクナイでの切り傷、そしてまきびしを踏んづけた足裏へのダメージで上手く左脚に力が入らないカエデ。
「スピードが命の貴女に脚のダメージは致命傷だ、そうでしょう?」
「くっ......」
「やれやれ、この前のポニスさんというバニス一族はなかなか強かったですが、貴女は大したことありませんね」
清浄は短刀を構える。
「ま、まずい......」
「さあ、さっさと始末して差し上げましょう」
短刀を振り下ろす清浄。
ガキンッ!!
それを刀で防ぐカエデ。
しかし、その瞬間には正面にもう清浄の姿はなかった。
「え......」
そして、背後に現れる清浄。
「終わりです!!」
背後から短刀をカエデに向かって突き付ける清浄。
しかし、カエデは右脚だけで身体を反らし、何とか避けた。
ドサッ!!
カエデは地面に倒れ込む。
「ほう、今のを避けるなんてなかなか身体能力が高い」
「くっ......」
そして、何とか立ち上がり、清浄から距離を取る。
「ハア......ハア......まだまだ戦えるわよ」
「もう良いですよ、勝敗は見えています。諦めて死んでください」
(強い......実力差は圧倒的でケガも負ってしまった。もう私の勝ち目は0、それにもう一人がサンベルス城に侵入してしまった。今のサンベルス城では戦えるのは私だけ、私はコイツを倒してもう一人を追わないといけない。状況は絶望的......)
刀を強く握るカエデ。
(コイツまでサンベルス城への侵入を許すと魔力玉は簡単に奪われてしまうだろう......かと言ってもう私の力では足止めも出来ない......一体どうすれば......)
カエデは冷や汗を垂らす。
完全に万策尽きた状況であった。
「なかなかキツい状況ですねカエデ様」
「ええ......一体どうすれば......」
「助けを呼ぶとか、助っ人が来てくれるとか、そんな事があれば良いんですけどね」
「そんな都合良く誰かが助けに来てくれる訳......」
カエデは驚いて横を見る。
そこにはいつの間にか、見覚えのある仮面を付けた長身の女が立っていた。
「メ、メイドM!!?」
「お久しぶりですカエデ様、偉くキツそうですね」
「また貴女は突然現れて......」
アルガンド城での決戦同様、いきなり現れたメイドMに驚くカエデ。
「神出鬼没が本望なのです」
腕を組みながらうんうんと頷くメイドM。
「良くわからないけど、もしかしてまた手を貸してくれるの?」
「手でも足でもお尻でも何でも貸しましょう」
「ありがとう!!本当に助かるわ!!」
カエデはメイドMにお辞儀をする。
「けど貴女は何でそんなに私を助けてくれるの?」
「カエデ様は妹みたいなものですから」
キリっとした表情で言うメイドM。
「前もそんなこと言ってたわね、良くわからないけど......まあ何にせよ助けてくれるなら助かるわ!!」
そう言うカエデとメイドMは清浄を睨む。
清浄はメイドMをじっと見ていた。
「貴女......モミジさんではありませんか!?」
「モ、モミジ?」
「......」
「その長身に話し方、やはりモミジさんですね。まさかこんな所で再会するなんて」
清浄は少し微笑む。
「貴女、モミジって言うの?」
「......」
すると、メイドМは静かに仮面を外した。
そして、素顔で清浄を見る。
面白い!続きが気になる!今後に期待!
と思っていただけたら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちを残していただくと嬉しいです!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




