第171話 皇帝選挙 4
「リコ......」
「コアネール様、順番です」
コアネールの前の演説は終わっていて、次はコアネールの番だった。
「......」
コアネールは表に出た。
そこには大勢の人が見に来ている。
そして、その前に立ち、深呼吸をするコアネール。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。この度私は皇帝有力候補になることができました」
コアネールは下を向いた。
「しかし、これは私を生んでくれた両親、家を出て自分の夢を追いかけている弟のおかげ、それに何より私を支えてくれた友人達のおかげです」
コアネールは前を向いた。
「私は一時期旅に出ておりました。楽しいこと、苦しいこと、いろいろありました。その旅はたくさんの出会いがあり、特にその旅の原因となった少女、その娘からはたくさんのものを貰いました。親友の彼女、そして皆がいなかったら今の私はいない」
笑顔になるコアネール。
民衆はそれを聞き入っていた。
「親友のリコや他の皆は私にとって大好きな宝物!かけがえのない大好きな宝物!だから私は皇帝になって恩返ししたい!いいえ、皇帝になって世界を平和にして恩返ししたい!平和にするためには私だけの力じゃダメです!皆様の力が必要です!だから......皆様の力を私にお貸しください!!」
「コアネールさぁぁああああぁん!!」
ガバッ!!
リコは寝ているコアネールに抱き着いた。
「あれ?ここは?」
「病院です!!コアネールさん演説の後倒れて一日中寝ていたんですよ?もう、心配かけるコアネールさんなんだから」
「一日中!?選挙の結果は出てますの!?どうなったんですの!?」
「選挙は......」
リコは下を向いた。
「エンバンス様が新皇帝に決まりました」
「......」
部屋は一瞬静まり返る。
「......そうですか」
コアネールは大きいため息を吐いた。
「リコ、選挙に付き合ってくれてありがとうですの」
「そんな、私こそろくな応援出来なくてすいませんでした」
「いえ、力になりましたの」
「いえいえ、でもまさかコアネールさんが私のことそんなに好きなんて知りませんでしたよ、演説聞きながら照れちゃいました」
「あ、あれは!!演説のため少し盛って話しましたの!!」
「またまた、可愛いコアネールさんなんだから」
「う、うるさいですの!!」
ガチャッ!!
その瞬間、病室の扉が開く。
コアネールとリコは同時に扉の方を見ると、入ってきたのはエンバンスだった。
「エンバンスさん......」
「コアネール、気が付きましたか」
「何の用ですの?負けた相手を死体蹴りするような真似は止めてくださいね」
「い、いや見舞いにな」
エンバンスは恥ずかしそうに花を渡した。
「え、どういう風の吹き回しですか?」
「い、いえ、せっかく戦った相手だ。最後ぐらい称えてやろうと思ってな」
「あ、ありがとうですの」
「それとコアネール......昨日は酷いこと言ってすまなかったな」
エンバンスは恥ずかしげに頭を下げる。
「エンバンスさん......」
「それと私は皇帝になりましたが、まだまだ不出来なところがあります。コアネールの知識や意見が聞きたいこともあるだろう、サンベルスとも仲良くしていきたい。出来れば定期的にコアネールと意見交換する場が出来ればと思っている」
「ホントに言ってるですの!?」
「はい、本当です」
コアネールはリコを見た。
リコは笑った。
それを見たコアネールも笑う。
「はい、喜んで!!そう言って貰えて嬉しいですわ」
「ありがとう、これから協力して平和を目指しましょう」
「はい!!」
「それとあの......」
エンバンスはリコの方を見た。
「え?」
「私は知っての通り生まれも育ちも良く、今まで人に怒られたことも殴られたこともなく育ってきました。昨日貴女に初めてそれをされて悲しくなった、心が熱くなり、やがて自分が惨めに思えてきた。自分はなんて小さな人間なんだろう」
エンバンスは拳を握った。
「皇帝に選ばれた後思った、皇帝になったからには小さな人間のままではダメだ!!ってね」
「エンバンス様......」
「そして、私はそう気付かせてくれた人に感謝した」
エンバンスはリコを見つめる。
「え?」
そして、顔を赤くするエンバンス。
「え?え?え?」
「是非貴女も意見交換会の際にはご一緒していただければと」
エンバンスはリコの手を握る。
「え、ちょ、ちょっと」
「あ、す、すいません!つい......」
エンバンスは慌ててリコの手を離す。
「あ、あの......エンバンスさん、もしかしてリコに会いたいから意見交換会する訳ではないですわよね?」
コアネールはジトーっとエンバンスを睨む。
「え!?い、いえ!!そのようなことは......」
「そ、そうですよコアネールさん!エンバンス様みたいな偉い方が私みたいな庶民を」
「庶民ではない!!リコさんは素敵な方です!!」
エンバンスは大声を上げた。
「え、えー!!さっき私のこと下民って」
「と、とんでもないです!!訂正させて下さい!!リコさんは誰よりも輝いている完璧な方、私のバカバカバカ!!」
エンバンスは自分の頭を殴る。
「と、とにかく!!言いたいことはそれだけです!!またお会いしましょうリコさ......ではなくコアネール!!」
そう言い残し、エンバンスは部屋を後にした。
「え、えーっと......エンバンス様って意外と面白い方ですねー」
「ね?言ったでしょ?リコもモテると思うですのよって」
こうして無事?皇帝選挙は終了した。
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