第133話 仲直り
バサバサッ!!
ヴァルロはアルガンド城から少し離れた森の中に降り立った。
そして、両手に抱えていたレイカとリアを木の陰に寝かせた。
「......」
ヴァルロはレイカの顔をじーっと見る。
そして、しばらく見た後、後ろを向き立ち去ろうとする。
「う、うーん......」
しかし、レイカが目を覚まし声を上げると、動きを止めた。
「こ、ここは......僕は」
「レイ?気がついたの?」
「え、えーと......まだ身体が痛いけ.....ど?」
レイカはヴァルロと目が合った。
「お、お兄様!?」
「雪山ぶりだね、レイ」
「な、な、な、何でお兄様が」
「魔王城が帝国軍に襲われたという話を聞いた。だからレイも来るかと思った」
「そうか......僕は魔王城のみんなを助けに来て、ペッタンコに負けて帝国に捕まって......お兄様が助けてくれたの?」
「ああ、あのロイとかいうアホ面と一緒にね」
「そ、そうだ!ロイロイは無事なの!?カエデや他のみんなは!?」
「わからないが、あの男なら何とか生き延びるだろ。レイの友達のところへはランドとスカーレットが助けに行っているはずだ」
「そう......良かった......でもどうしてお兄様は僕達を助けてくれたの?」
レイカは眉を顰めながら聞いた。
そう聞かれたヴァルロは一瞬口をつぐむが、直ぐに口を開いた。
「妹を助けるのに理由がいるの?」
「......」
「レイ?」
「お兄様は勝手だよ、急に意地悪になったり優しくなったり」
レイカはプイッとそっぽを向きながら言った。
「すまない、だけど僕の目的のため」
「目的ってなんなのさ!」
「だから前も言ったけど、世界征服を」
「そんなの嘘って僕が気付かないとでも思ってるの?僕を子ども扱いしすぎなんだよお兄様は!!」
レイカは怒って大きな声を出す。
「......すまない」
「すまないじゃないよ!本当の理由教えてくれるまでお兄様のことなんか大嫌い!!」
「それは......困る......」
「じゃあ本当の理由教えてよ!どうして魔力玉を集めたり僕を仲間にしたりしようとするのさ!!」
「......」
ヴァルロはたじたじになりながら口を閉ざす。
「どうせ教えてくれないんでしょ!!お兄様のバカ!!もう嫌い!!」
「......すまないレイ」
「雪山では僕のこと川に突き落とすし!死ぬかと思ったじゃん!!」
「それもすまない......」
「僕に闇魔法ぶち込んだ!!後、僕のこと滑稽って言った!!」
「ごめん......」
「......」
腕を組んで横目でヴァルロを見るレイカ。
「もういいよ!!約束して、悪いことはしないこと!!その目的を達成出来たら、魔王城に帰ってきて僕に代わって魔王になること!!」
「そ、それは......」
「約束出来ないならもうお兄様のことなんか大嫌い!!口も聞かない!!」
「レ、レイ......」
ヴァルロは困り眉でレイカを見つめる。
「......ハハ、レイには勝てないね」
ヴァルロは少しため息を付いた後、少し微笑む。
「わかったよ、約束する」
「よしっ!!じゃあ、お兄様のこと嫌いにならないであげる!!」
そう言うと、レイカの歯を見せて笑った。
それを見て、ヴァルロもフッと笑顔を見せた。
「じゃあ僕はそろそろ行く、また何かあればスカーレットを遣わせるよ」
「もう行っちゃうの?」
「ああ、長居はしていられない」
そう言って翼を広げるヴァルロ。
「レイ、またね」
「うん、お兄様もお元気で」
そう言うと、ヴァルロは飛び去って行った。
「お兄様......フフフッ、お兄様大好き」
「......クスッ、イカちゃんもブラコンじゃない」
「はうっ!!」
レイカが横を見ると、レイカを見つめ笑っているリアの姿があった。
「ぺ、ペッタンコ!気が付いてるなら言ってよ!」
「リアね、小さい頃いじめられっ子だったの。それでいつもお兄ちゃんが助けてくれていた」
リアは下を向きながら話し始める。
「そんな弱い自分が嫌いで、いっぱい訓練して、身体が強くなれば心も強くなれるって、そう思ってたんだ」
「......ペッタンコ」
「でも違った、結局どっちつかずで弱いまま、カードの皆にも、皇帝様にも、そしてイカちゃん達にも迷惑かけた。ジョーカーなんて大層な称号を貰ってもリアは昔のいじめられっ子のリアのまま、何も変わってなかった」
「ぷにっ」
レイカはリアの頬っぺたをつついた。
「な、何するのイカちゃん!」
「ペッタンコはペッタンコのままでいいんだよ!無理に強くなる必要なんてないんだよ」
レイカがそう言うと、リアはハッとした表情を見せる。
そして、次第に涙を浮かべる。
「僕だって弱いところもあるよ、全てが強い人なんていないと思う。魔王だけどリーダーシップはないし、お兄様やランドみたいに冷静で賢くもない、誰にも言えなかったけど魔王を辞めたい、お兄様かランドに魔王を代わってほしいと思うことも何度もあった。そんな自分に悩むこともあるけど、それって悪いことじゃないって思うよ」
「......」
涙を流しながらレイカの話を聞くリア。
「きっとそれがペッタンコなんだよ。世の中賢い人、ブレない人、芯の強い人もいるけど、そんな人ばっかりじゃ世界は回らない。きっとペッタンコみたいな優しい人が世界には必要なんだよ」
「イカちゃん......」
「僕はありのままの弱いペッタンコが好きだよ」
「え......」
それを聞いたリアは顔を赤くする。
それを見たレイカも呼応するように顔を赤くした。
「い、いや、す、好きって当然友達としてだよ!!って言うか弱いって言ってもペッタンコはこの僕に勝ったんだからね!いつかリベンジするからね!」
「う、うん、いつでも受けて立つよ」
リアは少し微笑んだ。
「イカちゃん、ありがとう。イカちゃんのおかげで少しは自分のこと好きになれるかも知れない」
そう言うと、リアはレイカを見つめる。
レイカもリアを見つめた。
そして、しばらく2人は向かい合って笑い合った。
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